私が、何度もここで書かせていただいている中国での仕事があります。当時、は、1985年からですが、中国に駐在して、総務系の業務が担当でした。

 

 さて、なにもない、本当になにもない更地のホテル用地だけがあるところに、駐在を始めて、現場事務所を設置するところから仕事が始まりました。

 

 以前書いたように、電ちゃんとともに電話を引いたり、物資を購入して事務所の体裁を整えるところは初歩的な話ですが、事務所の机を買うこと一つとっても大変でした。

 

 当時でも、私たち日本側がイメージするのはスチールデスク。中国側は見たこともないので机といえば「木製」。家具屋街へ行って、「どうする長谷川」みたいに言われても目に入るのは「木製机」だけ。「鉄製」のものはないの?と聞くと、「日本には負けねえ~」「日本人とは対等である意識を持て」の延長線上で、「あるよ。」とは答えるものの「見つからないな~」って言われながら、何度か家具屋街から帰った記憶があります。見つかるわけがないんですよ。当時は多分存在しなかったんですから。

 

 で、数回の市場調査ののち、木製の机を購入しました。

 

 事務所を設置するだけで、日本標準が通用しないことがわかってからは、中国製品で揃えるものと、日本から持ち込むものとの区別をして、順次導入をしましたが、事務所設置くらいは大したものを入れるわけではありませんから、事務に支障はありませんでしたが、ホテル開業に備えて、中国から商品、製品購入の問い合わせをしても、100%回答をいただけるものではありませんでした。

 

 さらには、対中国に日本から輸出するものに関しては、腰が引けたり、エンドユーザーをしつこく聞かれたりと大変でした。で、すぐにわかったのが、ココムの存在でした。

 

 第二次世界大戦後、対共産圏輸出統制委員会(ココム)と対中国輸出統制委員会(チンコム)が設立され、冷戦構造の下で、西側諸国による東側諸国への厳しい輸出管理体制が敷かれていたのです。

 

 それからは、ココムを意識した業務の計画を考えなければなりません。当時、大手商社の中国業務専門部署から移籍した大先輩にあたる社員の方がいましたからいろいろ教わりましたが、それはそれは「貿易」っていうものは、何もかもが自由ではなく、むしろ厳格な秩序が保たれていて、きちんと国の安全保障、国益に直結することを教えられました。

 

 日本国政府の輸出許可の話と逆に中華人民共和国政府の輸入許可の話とで色々と大変でした。

 

 そもそも、我々日本人スタッフが中心に使う車の輸入さえも簡単ではありませんでした。日本で日本の会社がトヨタで中国向け仕様の車を購入するのも大変でした。

 

 さらには、建築に必要な日本製の鉄筋ですとか、竣工間近では電子電話交換機などは大変だった記憶があります。

 

 しかし調べてみますと冷戦体制が崩壊し、1993年にはココムも解散されたようですね。

 

 

 その後、ネット上の情報では、次のような記述がありますね。

 

 その後の国際社会の関心は、地域の不安定化を引き起こす要因となる兵器の過剰蓄積や、テロリストへの兵器および関連技術の流出に向けられるようになりました。そして、それらの防止を目的に、1996年、ココムに代わってワッセナー・アレンジメントが設立されたのです。

 

 通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント

 (上記をクリックしてください)

 

 冷戦期のココムがその対象を共産圏としていたのに対し、ワッセナー・アレンジメントではすべての国家主体、非国家主体が対象になっているのが特徴です。

 

 ワッセナー・アレンジメントは、通常兵器関連の協定ですが、大量破壊兵器関連のものとしては、「核拡散防止条約」、「生物兵器禁止条約」、「化学兵器禁止条約」が締結されているほか、安全保障貿易管理に関する供給国同士の紳士協定として、「原子力供給国グループ」、生物・化学兵器関連技術の「オーストラリア・グループ」、ミサイル関連技術の「MTCR」などの国際レジームが存在します。 

 

 オーストラリア・グループ(AG:Australia Group)の概要

 (上記をクリックしてください。)

 

 これらの国際レジームでは武器以外に、軍事用にも民生用にも使われる汎用品をその規制対象品目としています。こうした民生品を作る企業にとっては、想像しづらいケースも多いと思いますが、自社の製品が意外なところで大量破壊兵器等の開発に転用される可能性があります。多くの企業が輸出管理への真剣な取り組みを求められるのは、まさにそのためなのです。

 

 例えば、工作機械は核兵器のウラン濃縮に必要な遠心分離機の成形加工に使われる可能性があります。化粧品や自動車の不凍液、シャンプーのトリエタノールアミンは、化学兵器であるマスタードガス等の原材料となりますし、インスタントコーヒーを作る凍結乾燥機は、そのまま生物兵器の製造装置となります。微粉末を作るジェットミルの高性能品は、ミサイルの固形燃料の製造に使われる可能性があり、さらにテニスラケットや釣竿、ゴルフシャフト等に使われる炭素繊維は、ミサイルの構造部材に転用可能なのです。 

 

 このように、私たちの身の回りにある多くの民生品は、実は軍事転用可能な製品・技術で溢れているのです。そこでそれぞれの国際レジームでは毎年、新たな軍事転用可能な製品を追加したり、削除したりといったことが行われ、機微製品・技術のリストに漏れのないよう細かな調整がなされています。 

 

 国際レジームで合意された結果は、日本において、外為法の政省令(輸出貿易管理令など)に反映され、規制対象貨物等が規定されていきます。それらの対象貨物が規制される理由は、テロリストらを利する等の事情から公開されていないため、産業界にとっては輸出管理に取り組む上でやりにくい面があると思われますが、それでも、法令遵守に向けた最大限の努力が求められます。