さて、ここ数回何度か書かせていただいた他市議会の方と懇親会を行いました。

 

 また、新たな課題が出てきました。当初予算や決算は特別委員会を設置して審査を行っていますが、補正予算に関しては議案の分割付託をしているらしいのです。

 

 なので、分割付託と言う言葉がありながらなぜそれができないかなどを前回おさらいしました。

 

 その解説の中で「議案不可分の原則」又は「議案一体の原則」という原則が書かれています。これについての解説も見ておきましょう。少々長いので二つに分けさせていただきます。

 

 

 前回も書きましたが、Amazonは中古しかなく、本来の価格より高いですね。

 

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 地方議会実務講座 ぎょうせい 第3巻 P79~

 

 14  議案不可分の原則

 

 (一)意義

 

 1 議案不可分の原則とは議案は一体であって分けることができないことをいう。議案一体の原則ともいう。一体であるから委員会に付託する時は一つの委員会に付託するとともに、採決では修正する場合を除き一部を可決、一部を否決とすることができない。

 

 まさにこの通りで、議案を議会側の都合で分けてしまったら、収拾がつかなくなってしまいますね。ここの部分は賛成だけど、ここの部分は受け入れられないな。などと言っているうちは審査を続ける必要がありますね。質疑を繰り返し、「受け入れられない部分」を修正して修正案を出すのか、妥協して受け入れるのか、受け入れるのも条件付きなのかなどです。受け入れの条件付きというのは「付帯の決議」などをするのですが、これは法的拘束力はまったくありませんから、所詮は議会側の自己満足になってしまうでしょうね。あとで市川市の正副市長公用車の件がワイドショーなど絵話題になっていますから、あとで書かせていただこうとは思っておりますが、あれも二の矢、三の矢を射り続けられるかどうかがポイントでしょうね(笑)。

 

 2 議案の種類には、①当該団体の意思を決定するもの(団体意思決定議案)、②長の執行の前提としての意思を決定する議案(執行の前提議案)、③議会の意思を決定する議案(機関意思決定議案)がある。また発案権が①長に専属するもの(予算等)、②議員に専属するもの(意見書案等)、③長と議員の両者にあるもの(条例等)に分かれる。このような性質の違いがあるにしても、議会に提出されたならば議案としての取扱いは同じである。

 

 (二)委員会付託

 一つの議案が複数の常任委員会の所管に関係する時は、①主たる委員会に付託し関係委員会と連合審査会を開く、②特別委員会を設置して付託するーのいずれかである。どの方法によるかは、議案の付託権を持つ議長が原則として決定するが、実際には議長が議運に諮問して決定する。議案不可分の原則は条例その他の事件では当然のこととされているが、地方議会では予算について分割して付託しているところが多い。

 

 通常議案はこの①連合審査会で乗り越えるべきでしょうね。ただし、2より多い委員会にまたがるようだと、②の特別委員会設置の方が効率的な審査になるかもしれませんが、ケースバイケースでしょうね~。

 

 (三)予算案の委員会審査

 

 1 分割付託の長所、短所

 

 (1) 当初予算は1年間の施策の集約であり最も重視すべき議案である。議員全員が予算に対し関心を特っている。予算は特定の常任委員会に付託して審査するのが原則であるが、これでは議員全員が予算の審査に当たることができないので、各常任委員会に分割付託して審査しているところが多い。総務省は議案不可分の原則から分割付託することはでぎないとの見解である(行実昭和29年9月3日、決算については昭和28年12月17日)が、多くの議会は①審査に参加したい議員の希望を満たすため分割付託はやむを得ない、②分割付託は議案不可分の原則に反するが、議会の最終的な意思決定は本会議であり、本会議で予算全体を採決するので議決は有効であることを理由に総務省見解と異なる運営をしている。

 

 ということで、実際に昨晩の話はこれに近いものでした。

 

 (2) 分割付託の長所は、①議員全員が予算の審査に参加できる、②金額、内容で膨大な予算を短期間で詳細に審査できることであり、短所は、①議案不可分の原則に反する、②委員会での修正ができないことである。

 

 2 分割付託と修正

 予算を分割付託された委員会で委員が修正の動議を提出しても意味はない。総務委員会に歳入が付託されているので他の委員会は歳入についての修正ができない。このため修正の意見を持つ委員は本会議で修正の動議(自治法115の3)を提出することを述べて、付託された予算(部分)に賛成するほかない。分割付託が議案不可分の原則に反しているので、便法としてこのような手段をとるほかない(同趣旨は松本英昭「新版逐条地方自治法」)。

 

 3 各委員会の報告内容

 予算の分割付託で審査の結果、各委員会の結論は、①全て可決、②全て否決、③可決と否決バラバラ、④修正、⑤修正と可決(又は否決)、⑥継続審査になることが考えられる。このうち④修正は本会議で修正の動議を提出する旨を留保して可決で対応すればよい。⑥の継続審査は委員会の審査結果でないので報告ではないが、この解釈を分割付託でとると本会議で予算を議題にすることができなくなるので、継続審査も一つの報告とみなさざるを得ない。したがって委員会でどのような結論が出ても、それらを委員会審査結果とみなし本会議では予算全体を議題とし各委員長の報告を求め、質疑、討論ののち採決する必要がある。

 

 継続審査を結論とした委員会がある場合、①議長が委員会の意思を尊重し議長発議で予算を継続審査とするかどうかを先決する、②継続審査とした委員会の議員が本会議で継続審査の動議を提出し、議長がこの動議を先決する。のいずれかが考えられる。

 

 委員会に予算を分割付託したことを理由に、予算を付託委員会毎に採決することは議案不可分の原則から認められない。委員会は議会の下審査機関であるから、便宜上分割付託の方法をとっても、議会の最終意思決定では議案不可分の原則を厳守する必要があり、それであるから予算に対する議決の違法性を生じないのである。

 

 ここがわかりにくいかもしれませんが、あくまでも審査をして、その先は進まないで、本会議に戻して議決という体裁を整えるということですね。