さて、もう少し別の角度からこの問題を解説しましょう。

 

 国の第28次地方制度調査会の答申から、法改正が行われました。では、その地方制度調査会の答申を少し長くなりますが読んでみましょう。

 

 1 議会に対する期待と評価

  議会には、多様な民意の反映、さまざまな利害の調整、住民の意見の集約などの役割が求められており、議会の構成や運営において、議会の意思と住民の意思が乖離しないような努力が従前にも増して必要とされている。 

 

 また、議会は、団体意思の決定を行う議事機関としての機能と、執行機関の監視を行う監視機関としての機能を担っているが、地方分権時代において、これらの機能の充実・強化が求められている。

 

 地方公共団体の自己決定権の拡大に伴い、団体意思の決定を行う前提として、議事機関である議会の政策形成機能の充実が求められているほか、地方分権の推進に伴い、地方公共団体の役割が拡大し、また住民への説明責任を果たすことがますます重要となっていることから、執行機関に対する監視機能についても、その 一層の充実強化が必要と考えられる。

 

 他方、議会の現状については、民意の反映の側面からは、議員構成が多様な民意を反映するものとなっていない、住民参加の取組が遅れているといった指摘、また監視機能の側面からは、行政改革や公金支出への監視が十分でないなどの指摘のほか、議員定数が多すぎる、報酬が高すぎる、透明性が低いなどの指摘もある。

 

~後略~

 

 (1) 具体的方策の検討の観点 

 議会のあり方については、このような議会の現状についての住民等の声や、先進的な議会改革の取組事例を勘案しながら、先に述べた議会における利害調整機能、議事機関としての政策形成機能、監視機関としての機能の充実が図られるよう、その見直しを検討すべき時期に来ている。

 

 また、議会の自主性・自律性の拡大の観点から、議会の権限、長との関係など議会制度の基本的事項については法律で定めることとし、その組織及び運営についてはできるだけ議会の自主性・自律性にゆだねる方向で見直すことが必要であると考えられる。

 

 ~後略~

 

 (2) 具体的方策

 

 ~前略~

 

 ⑥長と議会の関係 

 

 ア 専決処分のあり方

 専決処分は議会の権限に属する事項を長がやむを得ない場合に代わって行う制度であることにかんがみ、その運用に当たって制度の趣旨を逸脱することがないような手当がなされるべきである。

 

 このため、「議会を招集する暇がないと認めるとき」の要件を見直し、制度本来の趣旨に即した要件の明確化を図るべきである。その際、必要に応じて委任専決についても検討すべきである。

 

 イ 議会の招集のあり方

 議会の招集のあり方については、議会側が必要と認めるときに臨時会が必ず開かれることを担保することが必要である。この場合において、長と議会の関係や、長が事実上議案の大半を提案しているという実態を踏まえれば、議長 に招集請求権を付与することとし、招集請求があるときには、長は一定期間内に招集しなければならないものとすべきである。

 

 また、議会審議に執行機関側が出席するのが通例となっているが、議員同士による議論をより積極的に推進すべきである。 

 

 ~後略~

 

 実はこの第28次地方制度調査会から議会がクローズアップされ、しっかりしなさいよ。という、ことが言われるようになりました。そこには、議会運営上あるいは議会がその機能を発揮するためにより良い活動環境を自ら作りやすいように様々な工夫がなされるようになりました。

 

 「1 議会に対する期待と評価」に私が下線を入れようとしましたら、ほとんど全部なってしまうので、やめましたが、地方分権がどんどん進むとその役割は、一層増して、責任が伴いますよ。ということでもあるのですよね。

 

 しっかり執行機関に対する監視機能を働かせてくださいね。と言う意味合いのこと繰り返し記述されています。ということは、逆を言うと、「地方公共団体の自己決定権の拡大」はさせるけど、同時に監視機能を持つ議会が、執行機関の暴走はさせちゃいけませんよ。という意味でもあります。

 

 そこには従来型の執行機関、議事機関共に馴れ合いの、なあなあな行政運営は認められないんですよ。ということでもあります。

 

 そして、専決処分の記述には具体的には書いていませんが、最も懸念されることの一つが、「専決処分制度の濫用」です。

 

 前回も書きましたが、船橋市役所は、定例会が条例で年4回と決まっているから、全てのスケジュールが3ヶ月ごと。大きな予算は年1回だけ。と言うような意識の中で業務が流れております。

 

 「議会に対する期待と評価」の冒頭に、「多様な民意の反映、さまざまな利害の調整、住民の意見の集約などの役割が求められており」とありますが、このことを全く意識していない船橋市役所の執行機関の面々は全てが昔からの時間の流れと、仕事の仕方で淡々と日々を過ごしています。

 

 仕事の仕方ですが、団体事務、機関委任事務という言い方で、上下主従の関係であった国と地方の関係が、地方分権の流れの中で、自治事務と法定受託事務という言い方に変わり、国と地方は対等の関係となっているのですが、船橋市は相変わらず、上下主従関係があるかのごとくの振る舞いをします。

 

 参考資料を添付しておきますが、国の資料です。

 

 資料中にもありますが、地方公共団体は「地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」ことになっているのです。

 

 それらを総合的に鑑みれば自ずと結論は出るのですが、議会が執行機関との関係がどうあるべきかをしっかりと意識し、議論し、節度をもった対応を考えなければなりません。

 

 それなのに議会本来の職務を放棄し、執行機関に寄り添い、自己の求める利益誘導(これは旧態依然とした金銭的とか言うものではなく、特定地域、特定団体など)のために、監視機能をおろそかにすることがないようにしなければならないのです。