次に参考書とでもいうんでしょうかね。前回に引き続きです。

 

 

 からです。

 

 二 議員に対する紀律

 円滑な議会運営を確保するため議員が遵守しなければならない事項として、地方自治法に規定しているものは第132条の品位の保持、第133条の侮辱に対する処置であり、その他の紀律については会議規則に定めがある。

 

 (一) 品位の保持

 会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない(自治法132)。

 議会は住民に選挙された議員が当該団体の公の問題について議論する場であるから、冷静な言論戦が期待される。したがって、議員の発言に使用する言葉も品位を欠くものであってはならないし、議題と関係のない事項に言及し、もって議場の混乱を招くことがあってはならないのである。

 

 無礼の言葉について法令は何も定義していないが、議員が会議に付された事項について、自己の意見や批判の発表に必要な限度を超えて議員その他の関係者の正常な感情を反撥し(札幌高裁判決昭和25年12月15日)、いたずらに論議を感情的なものにさせる言辞(青森地裁判決昭和54年3月30日)をいうものであり、それが特定個人の人格、行動を非難する言辞に限らず、一般的に通常人の感情を逆なでし、又は穏当を欠く発言も無礼の言葉に属すると解される。

 

 何が無礼の言葉に該当するかは、個々具体の例に従って、言葉自体が持つ意味及び発言全体の文脈から判断するほかない。

 

 判決にみる無礼の言葉に該当する例及び該当しないとされた例をあげると次のようなものがある。

 

 ― 該当するとされた例

  (1) 「議会の無能を暴露するものであります」(札幌地裁判決昭和25年9月5日)

  (2) 「私は諸君のように利権がほしくて県会議員になっておるのではない。土建業者でもなければ馬喰でもない」(青森地裁判決昭和28年1月7日)

  (3) 市長を名指して、「○○一派」「女の腐ったみたいで、水の上に浮かぶ浮き草のように云々」「ペテンにかけて」「ばれるまで知らん顔で詐欺、横領である」等(青森地裁判決昭和54年3月30日)

 

 2 該当しないとされた例

  ○ 退場に際し「かかる議場では審議の必要を認めぬ」と放言(岡山地裁判決昭和24年11月7日)

 他人の私生活にわたる言論とは、議題の論議に直接関係のない個人の問題を取り上げたり、また、議題と関係があってもその問題を論議するのに必要な限度を超えて他人の私的な生活に関し言及することである。前段の場合はその判定が容易であるが、後段の場合は難しい場合が多いが、個々具体の例に従って言及の必要性の有無により判断するほかない。客観的にみて、必要な言論であれば許されるものもあり、専ら他人の私生活を非難することを中心とした言論は本条に該当し詐されないものである。

 

 (二) 会議規則に定める紀律

 標準会議規則は一章を設け議場において議員等が遵守しなければならない事項を次のとおり列挙している。

 

 1 議員は議会の品位を重んじなければならない(県会規108、市会規151、町村会規102)。

 

 議会の品位とは住民代表の選良たる議員によって構成され、公の問題を論議する場である議会の品格、権威のようなものを意味するが、具体的に何であるかを述べることは難しい。要するに議会の機能や権威を認識し、議員の社会的地位にふさわしい良識ある言動をとらなければならないということである。

 

 そういう意味では本条は、地方自治法第132条に規定する事項を含むものであるし、また、本条以下に規定する具体的規律をも含む総括的規定であり、言動から服装に至るまで紀律の本質はこの一条でつきるともいえる。

 

 なお、この規定は、いうまでもなく議会の紀律について規定するものであり、議員が議員の身分に基づき議会内で行動する時の紀律であって、議会外における言動に及ぶものではない。

 

 2 議場に入る者は、帽子、外とう、えり巻、つえ、かさの類を着用し、又は携帯してはならない。ただし、病気その他の理由により議長の許可を得たときは、この限りではない(県会規109、市会規152、町村会規103)。

 

 本条は、議員に限らず議場に入る関係者全てに対する紀律を定めたもので、通常室内で用いるべきものでないものの着用を禁止したもので当然のことである。また、つえ、かさの類の携帯禁止は、一つには会議への参加に不必要な物品であること、また一つには議事が混乱した時などに、一つの凶器と化すおそれがあることから規定されたものである。類とあることから、これらと同趣旨の不必要かつ凶器化の可能性のある物品もそれぞれの議長の判断で携帯を禁止し得るものと解される(町村の標準は、写真機、録音機も明文化している。)。

 

 3 何人も、会議中は、みだりに発言し、騒ぎ、その他議事の妨害となる言動をしてはならない(県会規110、市会規153、町村会規104)。

 

 4 議員は、会議中みだりに議席を離れてはならない(県会規111、市会規154、町村会規105)。

 

 5 何人も、議場において喫煙してはならない(県会規112、市会規155、町村会規106)。

 

 6 何人も、会議中は、参考のためにするもののほか、新聞紙又は書籍の類を閲読してはならない(県会規113、市会規156、町村会規107)。

 

 7 何人も、議長の許可がなければ演壇に登ってはならない(県会規114、市会規158、町村会規108)。