シリーズ前回に引き続きです。頭の体操をするために、地方議会実務講座の読み込みをしました。

 

 

 

 

 今回は次の件についてです。

 

 (7) 議会図書室

 議会は議員の調査研究に資するため図書室を設置し、政府刊行物、官報、公報、その他の刊行物を整備することになっている(自治法100)。

 

 議員は図書室にストックされている情報を質問、質疑、議案の提案のために活用することが期待されているが、現状は残念ながらこの期待とかけ離れている。役割、現状、問題点を要約すると次のとおりである。

 

 1 情報のストック量が十分でないため議員の要請に十分応えることができないこと

 

 図書室に来れば、ある程度の情報が得られるならば活用されるが、そうでないと図書室は忘れられた存在になってしまう。当該団体の特性、これに対応する行政についての情報を集める等、議会の図書室らしい情報がなければならない。利用度の低い図書室は書庫にすぎない。

 

 2 最近の情報が少ないこと

 議員に必要な情報は、①基礎的なもの、②現在の状況をまとめたものの二つに分けられる。①は制度のしくみ、考え方、法的根拠等であり、これに関する情報は他の図書館にもあるが、問題は②である。現在どうなっているか、どこに問題があるか、住民のニーズはどうか、将来どうあるべきか等の情報、つまり最新の情報や将来展望についての情報が議会図書室に少ない。質問や質疑を行う際に必要な情報は②の情報である。議会図書室の特長は、今動いている生きた情報を特っていることであり、これが少なくては他の図書館と同じになってしまう。これらの情報は主として行政を担当している執行機関にある。各種の統計調査資料を持っているが、その多くは「内部資料」と称して外部に出したがらない。特に議会図書室に対しては、その資料を参考にして質問、質疑をされては十分な答弁をすることができなくなることも想定されるので出さない。現在、多くの議会図書室は執行機関の各部課でどのような資料が定期的に、非定期的にまとめられているかを把握していない。いわゆる「内部資料」は議会図書室のタッチできない分野となっている。執行機関が作成している各種の調査統計は公のものであるから、執行機関が独占するのでなく、議会図書室へも提供する責務がある。執行機関と議決機関はともに住民のために何が必要か、施策の順位はどうあるべきかを考えるのであるから執行機関が情報を独占しているような状態は健全な姿ではない。議会図書室にある各種の情報をどう活用するかは議員の能力であるが、そもそも図書室になければ活用のしようがない。

 

 議会図書室が現在最も力を入れなければならない一つは、執行機関にどのような情報があり発行されているかのリストを作り、それを限りなく集め議員の利用に供することである。これ一つだけ実施しても図書室への信頼と利用は増加するだろう。

 

 さて、いよいよ私の本題というか本論というかに入ってきた感じです。

 

 まず地方自治法の第100条を見てみましょう。

 

 前略、後略になります。

 

 ○17 政府は、都道府県の議会に官報及び政府の刊行物を、市町村の議会に官報及び市町村に特に関係があると認める政府の刊行物を送付しなければならない。

 ○18 都道府県は、当該都道府県の区域内の市町村の議会及び他の都道府県の議会に、公報及び適当と認める刊行物を送付しなければならない。

 ○19 議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない。

 ○20 前項の図書室は、一般にこれを利用させることができる。

 

 ということで、地方自治法の定めで図書室が必置となっています。だとしたら、きちんと整備しまさに、書かれているように議員に利用価値が高いと思われる内容にしなければなりません。

 

 それは一にも二にも、蔵書内容の適切さとその情報の豊富さだと思います。

 

 予てからの持論は、執行機関の行政資料すべてを議会図書室に配架するべきだ。と。

 

 さらに今、考えているのが公文書をすべてストックするということです。

 

 何を言うとるんや!となる話です。が、手前から順に行きましょう。

 

 まず、「○17 政府は、都道府県の議会に官報及び政府の刊行物を、市町村の議会に官報及び市町村に特に関係があると認める政府の刊行物を送付しなければならない。」とありまして、「市町村に特に関係があると認める政府の刊行物」認めなきゃ来ないんですよね。

 

 こちらが欲しいと思うもの、必要と思うものでも、政府が「認める」ということがない限り、自動的にはきません。

 

 しかし、政府もこちらから要求して、余裕があれば、送付してくれるでしょう。ということは、どう言う刊行物があるかどうかを知らなければ、要求のしようがありません。ということは、都道府県には自動的に送付されるわけですから、県の議会事務局に常に情報をもらえるようにしておく必要があります。

 

 さて、では、都道府県にも届かない政府刊行物ってあるのでしょうか?刊行物の定義がわかりませんから、どのレベルまで都道府県に送付されているかわかりません。しかし、いまどきは、インターネットが普及しており、国の省庁など各機関は、WebSiteを持っていますので、そこのチェックを怠らないことです。

 

 毎日のルーティンワークにしても良いくらいだと思います。ほとんどの資料がPDFファイルで見られるようになっています。

 

 とすると、それをプリントアウトして、冊子に仕上げるのも一つの手ですし、電子ファイルとして保存しておくことでも良いでしょう。

 

 私は一度は紙にしておくべきだと思いますが、それも時代とともに変化して行くかもしれませんね。

 

 気になるのが、国の関係機関からの「通知」などの手紙文です。船橋市のような一般市は、都道府県経由で来るケースがありますが、これをストックしているケースが無いようです。

 

 表現がおかしいのですが、その議会ごとに保存年限が決められているはずですので、その保存年限内はストックされているでしょうが、それを超えると当然ですが廃棄です。

 

 しかし、私の経験からすると、何か調査事項があって、遡り調査をする場合、資料が保存年限を超え廃棄され、資料の調査ができないケースが多々あります。

 

 政府発出の文書に、ポイントになる部分があったりします。しかし、保存年限が過ぎているから現物はありません。それは法律や政省令に反映されているから関係ないでしょという人がいますが、いえいえ、地方公共団体の職員は、未だに、国の通知文などを重視し、それに従うことが地方のあるべき姿だと思っている職員が数多くいます。しかし、地方分権改革の前後で、法律と条例の関係の考え方が大きく転換しつつあります。

 

 従って、国との関係や国の法令が定まってきた場合のその取り扱いは、柔軟かつ慎重でなければなりません。

 

 地方の実情を加味した条例も可能な部分とそうでない部分があったり、様々な考え方があるようです。

 

 1)国の法律が明示的又は黙示的に先占している事項については、法律の委任がないかぎり条例を制定できない。

 

 2)法律の先占領域を限定し、法律で明らかに制限している場合に限って条例制定が認められない。

 

 3)法律の対象だけでなく、その趣旨・目的等によって実質的に法律に抵触するか否かを判断しようとする。

 

 4)法律と条例の関係について、憲法上の地方自治の本旨や人権保障の趣旨を考慮して、憲法的な価値に即して判断すべきとする。

 

 5)条例制定に地域の実情に基づく必要性や合理性が認められる場合には、法律との関係においても条例を適法とする。

 

 6)条例制定の可否については、法律の趣旨だけでなく、当該行政分野の性格、規制の必要性・合理性、関係する人権の内容等を総合的に検討すべきとする。

 

 このくらいの学説が分権前にはありました。

 

 一方分権後は、

 1)分権改革の趣旨を踏まえて、自治体の事務に関する法律は特別な事情がないかぎり全国最低限の規制を定めるものであり、上乗せ条例・横出し条例ともに原則として適法と解すべきだとする。

 

 2)自治事務に関する法律の規定を標準的な規定と解し、条例でこれと異なる規定を定めた場合は条例の規定が優先する。

 

 3)法律の対象、趣旨、内容等にかかわらず、条例自体に立法事実に基づいて合理性が認められれば、法律に優先して適用されるとする。

 

 と言う風にだいぶ考え方に変化が出て来ました。

 

 多くの識者は、基本的には、自治体の事務(特に自治事務)に関する法律は原則として上乗せ・横出し条例を許容するものと解するとともに、部分的に、法令の中には過度に規律密度の高い規定など標準規定と解すべきものがあり、これについては引下げ条例も適法と解すべきであると考えているようです。

 

 ことほど左様に、法律と条例との関係についての考え方にも大きく変化が出て来ており、分権改革と政策法務の進展によって、条例が国法の壁を乗りこえる時代が見えてきているのだと思います。

 

 そう考えると、議会図書室のあるべき姿というのは、かなり高度なというか専門的というか、ある部分に特化したものでなければならないのではないかと思うのです。