シリーズ前回に引き続きです。頭の体操をするために、地方議会実務講座の読み込みをしました。

 

 

 

 

 今回は次の件についてです。

 

 10 長期在職職員の長所を生かす

 議会は先例、慣例がものをいう世界である。職員が法令等をマスターしても、当該議会で生じた事例を知っていなければ説得力がない。職員よりも在職年数の長い議員が多数いると、過去の事例を持ち出すことがある。職員は知らなくても議員は経験からものを言うので、これほど確かなものはない。会議録等を調査すると、そのとおりの事例があることが分かる。

 

 著者の野村先生をはじめ、行政の実務をご存知の先生方は概ね、このようなことをおっしゃいます。

 

 以前にも書きましたが、財政、税務、法務、議会、選挙などの職種は、経験がある程度重要なファクターになってくるので、一人は長期の在職職員がいた方が良いということです。

 

 確かに仰せの通りと思います。

 

 しかし、実際に船橋市議会でみてみますと速記の専門で入庁は1名となってしまい、もはや、一般職任用の職員を育てるか、前回までにあったマニュアル等の整備で乗り切って行くかです。

 

 議会運営に誤りは許されないという。このため本会議、委員会運営担当の書記は前例を踏襲する。そして、あらゆる事態を想定した運営を考える。しかし、これだけでは十分でない。予期しない事態が起きた時への対応であるが、これは考えれば無限に近い。前例踏襲だけなら誰でもできるが、それ以降の対応は職員の知識、経験、勘(表現が適当でなければ総合的知識、経験に基づく直感)がものをいう。これには短期交流職員では十分でない。

 

 私は、まさにこの部分をどうすべきかが鍵だとは思っていますが、一朝一夕に解答はでてきません。

 

 前例踏襲と予期せぬ事案の対処法の組合せをどこまでできるかということになります。

 

 そこでポイントとなるのが、たぶん、最終的には「胆力」なんです。その「胆力」を発揮するための「実力」がなければなりませんが、それがまさに、「職員の知識、経験、勘(表現が適当でなければ総合的知識、経験に基づく直感)がものをいう。」となるのだと思います。

 

 それは、私が社会でかなり上の方で尊敬する「料理人」と同じような気がします。

 

 素材があって、その素材のその時のコンディションがあって、それを他の食材、素材と組み合わせて、幾多もある調味料を使って、熱の加え方やその時間など、無限に拡がる組合せを短時間で頭の中で整理して、一皿の料理に仕上げます。

 

 その無限の数ある順列組合せと、そこにお客の嗜好が解っていればそれを加味するという技術です。

 

 もちろん、様々な職種の様々な方々が順列組合せの中で、ご努力をなさって、お仕事の「結論」を出すと思うのですが、私は議会の職員による議会の運営サポートは、そのスピード感や同じ人間相手でもその相手次第、素材も同じ素材だって産地や生産者の思いによる生産方法などによって、微妙な味の違いがあるということなど、事業経営などとは一種違った「職人技」のような部分がありながらも、最後は「思いきる胆力」ではないかと思うのです。

 

 そしてそれに呼応できる議会側、特にこの場合は議長になりますが、議長の側との呼吸だと思います。

 

 もちろん、そこには議長として、その職に相応しい知識ならびに経験がなければなりません。

 

 それで初めて「形が整う」のではないかと思います。

 

 待ったなしの議事運営部門ではやはり長期在職職員が必要なのである。それでなければ上司(事務局長)は安心していられない。職員の短期交流の長所を認めるが、議事運営部門では短所の方が多い。それを無視して行うと、事務局に相談すべき経験者がいないので、担当職員の心労が大きくなる。また在職年数の長い議員の記憶の方が職員より正確であったという事態を招くことになる。

 

 今の船橋市議会みたいな無痛症の議会事務局長であれば、(笑)なんら問題はありませんが、そうでないと毎日胃の薬を飲み続けなければならないでしょう。(笑)。

 

 まさに、職員は疲弊し、「在職年数の長い議員の記憶の方が職員より正確」なケースが出てきますから、「ぽか~ん」状態に陥ったりするのです。

 

 そうなったら、もはや末期症状です。なので、少人数なのですから、議会事務局の人員配置というのはよほど計画的に、戦略的に考えなければならないのです。

 

 一方、執行機関から見たら、議会事務局が強いと、執行機関が困ると判断するおバカ市長や人事担当部長などがいたりします。いやいや、優秀な事務局が議会を取り回していたら、執行機関が一番楽なのにって思いますね。

 

 

 議会事務局には長期在職職員が最低一人は必要である。その職員の経験、知識等を整理しておく。それくらいのことなら先例集や内部記録を整備、充実しておけば代替えできると思われるが、いざとなるとスムースに引き出せない。大変なトレーニングが必要であるが、平穏な運営が続くと、急場や非常時に備えたトレーニングを怠りがちである。これは災害の訓練に似ている。更に軽視できないことは特異な事例等が生じた時の対応である。議会では原則として「侍った」や「取消し」が許されない。即断即決を求められる。「分からない」との回答は認められない。判断に迷う時は冷汗を通り越して胃が痛む思いがする。事務局は現場主義であるから抽象的な対応は役に立たない。このような時、経験年数の長い職員は、いとも簡単に解決策を示す。例えば①過去に類似の事例があったので会議録等を見る、②過去に同様の主張があったが、実施しなかったので内部記録を調査する、③A案、B案、C案を示し長所、短所を述べるーなどである。在職年数が短い職員が多いため五里霧中の場合、長期在職職員の経験と見解ほど貴重なものはない。経験しているからこそ即座に対策案が出たり、対応策のヒントが出るのである。

 

 事務局は組織として仕事をするのが原則であるが、それは沈思黙考や熟慮が許される分野のことである。議会の職員は「常に今」の活動をしているので、即応しなければ勉強不足の批判を受ける。パソコンやコンピューターに情報をいくら人力しても、それを活用するのは職員であるから、手探りの職員や判断力のない職員では使いこなせないし、いわんや急場では緊張感が先走って冷静な判断をすることが困難である。表現は適切でないが、議会の修羅場を通り抜けて来た経験、戦場で軽傷を負いながらも活躍して来た経験が、いざ鎌倉の時に役立つ。多くの場合、議会は根回し、説得等により平穏に運営される。多少のハプニングがあっても胃の痛む思いほどではない。だからこそ長期在職職員の長所が潜在化し分からないのであるが、一朝コトがあると、その必要性を感じるはずである。

 

 長期在職職員は、在職したがゆえに身についている議会運営のノウハウを、その背景とともに他の職員に伝える義務がある。平時から戦時に備えるためには、長期在職職員が経験した事実、解決方法等を後輩職員に伝達継承させることである。この意味で議会事務局には良い意味で職人的意気を持った職員が必要である。同時に長期在職職員として自戒しなければならないこともある。一般的に指摘されることは、①自己の知識、経験を他の職員に対し完全に公開しない(最後の部分まで教えない)、②先例を強調し改革に積極的でない等である。これらの中には誤解の要素もあるが、そのように思われては存在価値が低下するので留意する必要がある。

 

 この終わりの段落はかなり意味が深いと思います。

 

 船橋市議会においては、ある意味贅沢な悩みかもしれませんが、速記士の職員が専門的に職務を多人数で行っていた時代は、その専門家集団に委ねていれば良かったのですが、定期的な任用をやめた時点で、人材育成を中長期で考えなければなりません。更にいえば適不適もありますから、そいうことも踏まえて、かなり綿密に人材育成、配置計画を考えるべきです。

 

 更に、組織です。たぶん、船橋市議会でもそうですが、組織を全くいじっていません。組織のあり方も十分に、そして適宜適切に変化をさせていかなければ、効率的に、そして能率的な仕事はできません。

 

 小所帯だからこそ、組織、人事は執行機関など気にせず頻繁に行っていくべきでしょう。