さて前回に引き続き地方公務員法から考えます。

 

 地公法第32条に「法令等及び上司の職務上の命令に従う義務」が書かれています。

 

 前回は下記のように、30条に規定されていた「全体の奉仕者」として「職務」を「遂行する」とき「法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従いなさい。」ってことでしたが、今回は、その後ろの記述「且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」について考えてみましょう。

 

 再び、すべて学陽書房の逐条 地方公務員法から引用をさせていただきます。詳しくお知りになりたい方は購入して熟読ください。

 

 

 

 (法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)

第32条 職員は、その職務を遂行するに当って、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

 

二 職務命令に従う義務

 (一) 職務命令を発する上司

  本条は「職員は、……上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」と定めるが、ここでいう「職務上の命令」は、その性質に従って「職務上の命令」と「身分上の命令」に分けて説明されるのが通常である。しかし、このようにするときは、「職務上の命令」という用語がいずれの「職務上の命令」を意味するのか不明となる。そこで、「職務命令」を上位概念とし、それを性質に従って分類した下位概念として「職務上の命令」と「身分上の命令」が考えられている。本書においてもこの用法に従うが、上位概念としての職務命令を考えるに当たって最初に問題になるのが、上司とは誰かということである。

 

 私は今回の違法事件では、「組織ぐるみ」の場合の「上司」の存在はどんなもんなのかという部分に興味を持っています。

 

 この地方公務員法第32条では、まずは「法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い」なさい。そして「且つ」「上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」です。

 

 きつい言葉ですね。厳しい言葉ですね。「忠実」に「従わなければならない。」絶対的ですね~。だからああいう傲慢なトップになっちゃうんですかね?

 

 その命令が法律違反だったら?

 

 その命令が条例違反だったら?

 

 が私が地方公務員法を考えようと思ったきっかけです。

 

 まず、「上司」とは、その職員との関係において、これを指揮監督する権限を有する者をいう。上司とは、指揮監督の系列において上位の職にある者といってもよいであろう。しかし、任用上の地位が上位にある者が、必ず上司となるわけではない。たとえば、農林部の職員に対し、農林部長は上司であるが、通常の場合、民生部長は上司ではない。要するに身分的な上下の関係ではなく、職務に関する職と職との上下の関係であるということである。

 次に、上司は、職務上の上司と身分上の上司に分けることができる。職務上の上司とは、職務の遂行について職員を指揮監督する者であり、身分上の上司とは職員の任用、分限、懲戒などの身分取扱いについて権限を有する者である。通常は、身分上の上司は職務上の上司でもあるが、時には両者が明白に分離する場合がある。たとえば、知事または市町村長に属する職員が他の執行機関の事務に従事することを命じられた場合は(自治法180の3)、知事または市町村長は身分上の上司であり、当該執行機関が職務上の上司である。また、休職中の職員または在籍専従職員に対しては、任命権者は身分上の上司であって、一般的には職務上の上司ではない。また、異なる任命権者に属する職を兼職したとき、あるいは派遣職員(自治法252の17)のように、複数の身分上の上司および職務上の上司が存在することもある。

 

 以下は、本件と関わりがありませんが、一つだけ興味深い部分があります。

 

 なお、県費負担教職員については、本条の特例がある。すなわち、県費負担教職員の勤務条件は都道府県の条例で定められ(地教行法42)、その任命権は都道府県教育委員会に属するのが原則であるが(同法37–1、58–1)、その服務は県費負担教職員の身分が属することとされている市町村の教育委員会が監督するものである(同法43–1)。そして、県費負担教職員は、その職務を遂行するに当たって、法令、当該市町村の条例および規則ならびに当該市町村教育委員会が定める教育委員会規則および規程ならびに都道府県が定める勤務条件に関する条例および任命、分限、懲戒に関する条例に従い、かつ、市町村教育委員会その他職務上の上司の職務命令に忠実に従わなければならないとされている(同法43–2)。

 

 いわゆる義務教育学校の教職員ですが、本人も含め「県職員」だと思い込んでいる職員が大多数ですが、違っているということです。

 

 「その服務は県費負担教職員の身分が属することとされている市町村の教育委員会が監督するものである。」

 

 ということで、「法令、当該市町村の条例および規則ならびに当該市町村教育委員会が定める教育委員会規則および規程ならびに都道府県が定める勤務条件に関する条例および任命、分限、懲戒に関する条例に従い、かつ、市町村教育委員会その他職務上の上司の職務命令に忠実に従わなければならないとされている。」のです。

 

 それなのに船橋市教育委員会は野放し状態という由々しき状況です。

 

 

 

 (二) 職務命令の種類

 職務命令は、「職務上の命令」と「身分上の命令」に区別することができることは前述した。前者は職務の執行に直接関係する命令、たとえば、公文書を起案する命令、出張の命令などがこれに当たる。後者は職務の執行とは直接の関係を有しない命令、たとえば病気療養の命令(職務専念義務を免除することが必要となる。)、受診命令、名札着用の命令などである。職務上の命令は、職務上の上司のみが発しうるが、身分上の命令は職務上の上司および身分上の上司のいずれもが発することができるものの、身分上の命令といえども職務と無関係に発することはできない。ここでいう職務上の命令というのは、対象となる職員が担当する具体的な職務に関するものであり、身分上の命令というのは職員としての地位一般に関するものであるということはできるが、その区別は相対的なものである。