さて前回に引き続き地方公務員法から考えます。

 

 30条に「服務の根本基準」が書かれています。

下記のように「全体の奉仕者」として「公共」の「利益」のために働きなさい。ってことです。

 

 再び、すべて学陽書房の逐条 地方公務員法から引用をさせていただきます。詳しくお知りになりたい方は購入して熟読ください。

 

 

 

 

 (服務の根本基準)

 第30条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

 

 〔解 釈〕

一 全体の奉仕者

 職員が全体の奉仕者であることは憲法に規定されているものであり、その意義については〔趣旨〕で述べたとおりであるが、この全体の奉仕者としての性格を有することから、さまざまな特殊性が導き出される。職員が地方公務員法その他の法令において民間企業の労働者と異なる取扱いを受けることを基礎づける基本原理は、それが全体の奉仕者たることにあるといわなければならない。

 

 職員に対する特別な取扱いの一は、職員の身分保障(法27)である。職員が法律上強い身分保障を受け、民間の労働者のように法律上任意に解雇される(民法626~628、労働契約法16)ことがないのは、全体の奉仕者である職員の地位を安定したものとすることにより、国民、住民に対するサービスを安定的、恒常的なものとする必要があるからである。その二は、職務専念義務(本条、法35)である。全体の奉仕者であることにより、労働者一般を通じる契約的な義務としてだけでなく、倫理的、自律的な要請として職務に精励しなければならないことは〔趣旨〕で述べたとおりである。その三は、政治的行為の制限(法36)である。職員が一党一派に偏することなく、政治的に中立であることを求められるのは、全体の奉仕者である性格を全うするための措置である。その四は、争議行為等の禁止(法37)である。職員が争議行為等を行うことは、終局的な使用者である住民に対するサービスを低下させることにほかならず、全体の奉仕者である立場に反するとされるのである。そのほか、信用失墜行為の禁止(法33)も全体の奉仕者としての地位、体面を傷つけてはならないという趣旨が含まれており、勤務条件の保障(法24)や保障請求権(法46~51の2)には全体の奉仕者たる職員の経済条件や地位を保全する意味がこめられている。さらに、共済制度(法43地共済法)および公務災害補償制度(法45、地公災法)は、全体の奉仕者としての職員に後顧の憂いをなからしめる配慮の一環である。要するに、地方公務員制度のきわめて多くの部面にわたり、全体の奉仕者たる性格が基調となって制度が組み立てられているのであり、それがそれぞれの特殊性を形成する要件となっているものである。

 

二 公共の利益

 〔趣旨〕で述べたように、公共の利益は社会的概念である。公共の利益は憲法がいう公共の福祉(憲法12、13、22–1、29–2)と同義であると解されるが、その具体的な定義はなく、何が公共の福祉、公共の利益であるかということは、社会の実態に即し、総合的に、かつ、多くの場合は相対的に判断されなければならない。

 

 「何が公共の福祉、公共の利益であるかということは、社会の実態に即し、総合的に、かつ、多くの場合は相対的に判断されなければならない。」とありますが、今回の件でも、他の事業等でも船橋市というのは多分にこの判断がない場合が見受けられます。

 

 よろしくない判断だと思います。

 

 国、地方公共団体と民間の企業などは、いずれも事務、業務の遂行組織であり、それぞれ目的を持つ集団である点では同じであるが、両者の基本的な違いは、後者が利益その他の特定の目的を追求する組織であるのに対し、前者は公共の利益という総合的、複合的目的を追求する組織であるという点にある。後者の事務、事業の効率および成果は、たとえば、営利会社の場合には、利益の多寡という単一の尺度で量られ、その判断は比較的容易であるが、前者の事務、事業において公共の福祉、公共の利益が増進されたかどうかは、単一の尺度がない場合が多く、多元的な観点から総合的に判断しなければならない(名古屋地裁平16・1・29判決(判例タイムズ1246号150頁)参照)。行政効果の測定が困難なゆえんである。たとえば、道路を整備することと集会施設を建設することのいずれを選択することがより住民の福祉を増進するのか、あるいはその両方を部分的に時間をかけて実施すべきであるのか、判断されるべき要素はきわめて多く、判断の基準は多岐にわたる。これを政策として判断する責任を負うのは地方公共団体の議会であり、長その他の執行機関である。そしてその政策の遂行に当たる職員もいかにすれば、より能率的で的確な政策を企画立案し、および遂行しうるかを判断し実行する責任を負うものである。職員は、この困難な判断に常に直面していることを自覚していなければならない。

 

 「前者は公共の利益という総合的、複合的目的を追求する組織であるという点にある。」にも関わらず、船橋市は単一的に追求し、あたかも総合的、複合的に追求したかのように偽装することが多々あると感じています。

 

 「前者の事務、事業において公共の福祉、公共の利益が増進されたかどうかは、単一の尺度がない場合が多く、多元的な観点から総合的に判断しなければならない。」「行政効果の測定が困難なゆえんである。」ということを逆手にとって、前述したように、最初から単一的に「答えありき」で物事に取り組み、結論に導き、あたかも多元的、総合的判断が困難だったという結論を作り出すという非常に汚いやり方で行政運営を行なっていると言えなくもありません。

 

 ここであえて言えなくもありませんとぼかして書くのは、しっかりとこの全体の奉仕者としての意識の上に立ち、「公共の福祉、公共の利益が増進されるか」を多元的、総合的に困難であっても、スピーディに片付ける職員が数多く存在するからです。

 

 私は、時間の概念をきちんともって、職務に専念している職員を数多く見ているからこそ、逆に、「行政効果の測定が困難」ということを拠り所に、たった10分で終わる事務さえも2ヶ月かかるなどと言ってのける職員が存在していることもこれまた許しがたく思っています。

 

三 職務専念義務

 職員の職務専念義務の具体的な内容は、第35条で述べるが、本条で服務の根本基準として職務専念義務を掲げているのは、これが他の服務規定の基本原理となっているからである。たとえば、法令および上司の職務上の命令に従う義務(法32)は、職務専念義務の内容を定めるものであり、営利企業等に従事することの制限(法38は、職務専念義務に悪影響を及ぼさないよう配慮する趣旨を含むものである。そのほか、研修(法39)は専念すべき職務の内容を一層充実させようとするものであるし、身分保障や勤務条件の保障、さらには福利厚生制度なども、間接的に職務専念義務を支える制度であるということができよう。

 

 なお、本条は、職務の根本基準として、地方公務員制度の基幹をなす規定であるが、この規定自体は精神的ないし倫理的規定であり、この規定違反による懲戒処分ということはないと解されている。この規定の精神に反する行為は、法令および上司の職務上の命令に従う義務(法32)、信用失墜行為の禁止(法33)、職務専念義務(法35)などの個別の服務規定違反として措置されることになる。