相談を受けました件です。せっかくですから、皆さんにも知っていただこうかと。

 

船橋市議会会議規則

第55条 発言は、すべて簡明にするものとし、議題外にわたり又はその範囲を超えてはならない。

2 議長は、発言が前項の規定に反すると認めるときは、注意し、なお従わない場合は発言を禁止することができる。

3 議員は、質疑に当たっては、自己の意見を述べることができない。

 

 の「3 議員は、質疑に当たっては、自己の意見を述べることができない。」の理由は?と。

 

 お問い合わせの件、回答いたします。下記の通りです。

 

 なお、かなり古い書物からの引用ですので、趣旨は今でも変わりませんが、一部は、時代にそぐわないものがあると思いますので、考慮を願います。

 

 しかし、本来の趣旨がこういうものであったから、こうなっているのだと言う理解は必要かと思います。

 

 全体像が読み取れないと理解しにくいので全文を引用します。

 

 会議規則逐条解説 中島正郎著 昭和44年です。ちなみに議会事務局か図書室にもあると思います。

 

 発言内容の制限

 

説明

 1 議員の本会議における発言は、自由といわれるが、絶対的無制限ではない。すべて発言は議長の許可の下に、その許された発言の目的に添って発言すべきであるので、発言は、簡単明瞭にその意を尽くすべきである。したがって、冗長にわたらず、又参考文書等の朗読は許されない。

 

 2 もし発言が冗長にわたるとき、あるいは議題外に逸脱したり、あるいは発言の範囲(説明、質疑、質問、討論、一身上弁明、議事進行等)を越えたと認めるときは、議長は注意をし、応じないときには制止あるいは発言を禁止し、又は議場外に退去を命じることができる。

 

 3 発言にあたっては、議題外にわたることは本来の発言ではないので許されるべきではない。ただ、どこまでが議長の宣告した議題の範囲内か否かの判定はむずかしいが、要は発言の趣旨が目的外であると認められるときは必要な注意を行なうべきである。

 

 4 発言するにあたり、いかに言論の自由、発言の自由といっても、無制限のものではないので、自ら秩序を保ち、慎重であるべきで、いたずらに他人を誹膀したり、無礼な言辞や他人の私生活に及ぶ言論をしてはならないのは当然である。

 

 5 会議原則に発言自由の原則がある。国会議員は議院で行なった演説、討論又は表決について院外で責任を問われないという憲法第51条の特権があるが、地方議会では、院外無答責の特権はない。この院外における法律上すなわち民事上、刑事上の責任は問われないということであって、政治的、道義的責任までの意ではない。

 

 運用例

 1 発言において、議長の許可を得て発言する限りその発言の保障がなされるべきであるので、発言中に他の議員から発言を求められても議長は許可してはならないのは当然である。

 

 2 したがって、質疑が許され発言している限りは時間的制限がないまま数時間でも継続することが又保障されるべきであって、長い時間だからといって質疑打切りの動議は出せないし、議長発議によって禁止することも許されない。

 

 3 結局議長は、議題に入るとか、あるいは簡明にしてもらいたいとかの注意を促して協力を求めるか、それとも発言議員と話し合うか、又は強行手段として時間制限を議決するより方法がない。次の発言時間の制限においてもふれるが、時間制限の議決は、少し行き過ぎる嫌いはあるが、議長がいくら注意してもいっこうに協力しないときに、議員の動議によって議決があればこれを打ち切ることができるほか、議長自身で禁止の措置を講ずることもやむを得ないと言える。しかし、乱用すれば後の議事運営にシコリを残すこととなってはまずいから、議会運営委員会のないところは、全員協議会又は委員長会議で議員の発言時間について何分間のごとく申し合わせるのがよい。

 

 要領としては、(1)最初の発言は30分以内、2問目は10分以内、3問目は5分以内、(2)質疑、質問のいっさいの持ち時間は30分以内、(3)基本的には発言権を尊重し、その人の良識に訴えて無制限とする、等いろいろあろう。

 

 4 議員の発言ばかりでなく、理事者側の説明、答弁時間も冗長でないよう協力すべきである。説明員に対しても制限することは議長の議事整理権として認められよう。

 

 5 質的制限として考えられることは、地方自治法第132条に、本会議又は委員会において議員は無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をすることを禁止しているが、どこまで無礼であるかの認定は、その人の受ける主観的な問題であるだけにむずかしい。無礼にも客観性が必要であろう。

 

 6 不規則発言(ヤジ)は、議長の許可のない発言であって、公の記録事項ではない。ヤジには、上品なヤジと下品なヤジがあり、上品な、中間報告を「昼間報告」といってみたり、参事を「三時」というような駄洒落ならさしつかえないが、下品な「パンスケダマレ」というのは、不穏当な発言で懲罰に触れよう。

 

 発言をするについては、次の注意が必要である。

 (1)議長の開議の宣告をしてからで、休憩、延会、散会の宣告前であること

 (2)発言は議長の許可によること

 (3)発言の趣旨をこえないこと

 (4)無礼な発言と他人の私生活にわたらないこと

 (5)質疑は同一議題について二回をこえないように努力すること(総括質問ならその再質問まで)

 

 質疑については、都道府県及び市のうちでは数項目を纏めた総括質問制をとるが、一部の市及び町村の多くは一問一答制をとっていて、実情に合った方法でよい。

 

 なお、発言時間は議長権限で制限することができるが、その実情に照らしてすべきで、申し合わせを若干時間延ばされても容易に禁止する扱いは望ましくない。

 

 7 発言上議長は、(1)注意する、なお又注意を重ねる。これでだいたい守られるのが通例。(2)なお、どうしても守られないときは制止(注意、中止の双方を含むが、制止は、発言挙動について秩序を乱す言動の継続をやめさせること)し、これでも止まないときは、(3)発言禁止という順で行ない、初めから、制止や発言禁止は議長の識権乱用のそしりを免れない。

 

 8 一番注意することは、与党だからとか、多数会派であるからということで、特定の議員だけを大目に見逃し、少数会派とか、常連発言者だからということで、初めからマークして時間制限することは不公平である。時には少々延引することも内容上やむを得ない場合はあろう。ただこの場合、己れ一人の議場でないことを自覚し、短い会期で全体が述べられるように協力するのがエチケットである。

 

 9 質疑については、議題に供されている事項への疑義をただすことであり、その範囲は、議題となっている事件に止まるべきである。一般質問のように、自己の抱懐する質問に対し所信の披歴を求めるものとは違うので、自己の意見を述べるべきではない。質疑に対する意見は、賛否の討論にもなりかねないので禁止しているが、しかし、どうしても、事件の疑義だけに限られるものではない場合もある。そんなとき、自己の意見を述べて発案者の所見をたださなければ質疑の意味をなさない場合は認められよう。しかし、これにも程度がある。この辺は議長の考え方と、質疑者の良識によろう。

 

 10 会議での発言において、答弁を求めない前提で、いわゆる要望若しくは、ただ単なる意見の開陳と言ったことで、発言の許可を求め又許している例はあるが、このような便乗的な発言又は答弁を求めない発言は許可しないのがよいと思う。

 

 行政実例

  1 会議規則中に冗長の発言を制止する旨の規定を設けてもさしつかえない。又議長の制止に従わないときは、議長は当該議員の発言を禁止し、議場外に退去させることができる。

 

  2 地方議会の議員が、議場で行なった演説、討論又は表決について、憲法第51条のごとき保障の規定はないが、これは保障しない法意である。(昭和23・6・16鹿児島県総務部長あて自治課長)

 

 国会先例.

 

  1 自己の意見書又は理由書を朗読することができないが、演説の引証又はある事項を報告するため簡単な文言を朗読することは妨げない。(衆院)

 

  2 議長は、議員の発言が議題外、範囲外にわたり、又は議事妨害と認めるときは、これを制止する。(衆院)

 

  3 議長は質疑、討論その他の発言につき必要があるときは、あらかじめ議院の議決があった場合を除き、時間を制限することができる。(参院)

 

  4 発言時間は議院の議決により制限することができる。(参院)

 

  5 制限時間又は協定時間を超えて発言したときは、議長は、発言の禁止を命じ又は降段を命ずる。(参院)

 

  6 議長は、議員の発言が議題の外にわたり又はその節囲を超えると認めるときは、これを制止する。(参院)

 

 と言うことで解説は次回。