地方自治体のリスクの見える化・可視化

  ~内部統制と官民連携のリスク~

 と言う勉強をしてきました。

 

 北海道大学大学院法学研究科・公共政策大学院の宮脇淳先生の講義でした。

 

 

 

 

 前回に引き続き、書かせていただきましょう。

 

内部統制とPDCAサイクル

 ◎内部統制では、PDCAサイクルに基いた推進が不可欠。PDCAサイクルは、マネジメントサイクルの形態。

 

 ①PLAN(計画)実績や将来予測を基に業務計画を作成。

 

 ②DO(実行)計画に沿って業務を実施。

 

 ③CHECK(評価)実施が計画に沿っているか確認。

 

 ④ACTION(改善)計画に沿っていない部分の処置。

 

 以上のサイクルで内部統制の導入を計画(PLAN)し、整備・運用(DO)し、内部統制の有効性を評価(CHECK)することで、重大な欠陥や問題点がある場合は、早期に是正(ACTI0N)する。

 

 内部統制の限界

 ①内部統制は、判断の誤り、不注意、複数の担当者の共謀等で有効に機能しなくなる。

 

 ②内部統制は、当初想定外の環境変化や非定型的事例の発生等に必ずしも対応しない場合がある。

 

 ③内部統制の整備及び運用は、費用対便益の比較衡量が不可欠。

 

 ④不当な目的の為に内部統制を無視・無効とする場合がある。

 

 以上が宮脇論の内部統制がらみの話です。

 

 で、私が師事し、毎週教えをいただいている先生の方はこんな感じです。

 

 

 

 

地域経営にはPDDDCAサイクル

 行政はPDCAサイクルを回している。これは非常に重要な視点であり実践である。ただし、住民自治を進める上で、また地域経営を行う上で、議会からの政策サイクルという視点からその活用の範囲を確定しない安易な活用は、中央集権時代の行政主導に引きずられる。結論を先取りすれば、PDCAサイクルは重要だとしても、地域経営全体にこのPDCAサイクルを位置づけ実践すると、議会が排除・軽視される可能性がある。PDCAサイクルには、地域経営にとって重要な「討議」と「議決」が含まれていないからである。

 議会は、首長等と政策競争する。その意味では、議会側からの政策サイクルを回すこと、その際PDCAサイクルを活用することは重要である。PDCAサイクルは、当然狭義の議会改革にとっても重要である。たとえば、議会基本条例の条文を素材として目標を設定し、その実践をPDCAサイクルで行う。さらに進めて議会で設定した政策目標-会津若松市議会の政策形成サイクルの目標-の実現にあたっても活用する必要はある。また、議会事務局の実践と評価にも活用できる。

 それにもかかわらず、議会・議員が地域経営にとってこのPDCAサイクルを回すことだけに熱心になることには問題がある。

 本来地域経営は、PDDDCAサイクルを創り出さなければならない。PDDDCAサイクルのPは計画案・提言(proposition , proposal , planning)、              Dの最初は討議(deliberation , debate , discussion)、次のDは決定(decision)、三番目のDが実行(do)、そしてCは監視・評価(check)、Aは改善(action)というものである。

 従来のPDCAサイクルのPの中に決定も討議も挿入されている議論は確かに成り立つが、「公開で討議」する議会の役割がそこでは見えていない。議会が重要な役割というより、議会の真骨頂である討議や決定が従来軽視されていたからPDCAサイクルが用いられてきた。すでに紹介したとおり、三重県議会

が議会改革を進める起点となったのは、地域経営におけるPDCAサイクルでは、議会は登場できなかったからである。そこで、議会から政策サイクルを回す「新しい政策サイクル」を創り出した。理論的にいえば、議会がPを創り出し、それを執行させることを強調する。議会からだけではないが、地域経営における討議と決定の意義は強調されるべきである。

 もちろん、従来議論されてきたPDCAサイクルは、人間行動でも組織行動でも当然意識されるべき手法である。行政改革と同様に、議会改革でも活用されるべきものである。議会基本条例の条文を基準に毎年その改革を評価しようという発想は、その一つである。議会という機関としてだけではなく、機関内、たとえば委員会、議会事務局等々での評価も行われることになる。つまり、PDCAサイクルはさまざまな実践において活用されるべき手法であることには間違いない。

 とはいえ、行政改革や議会改革においてPDCAサイクルの発想は重要であるとしても、地域経営において、PDCAサイクルで軽視されていたD(討議)とD(決定)を組み込むことが必要である。それを踏まえないPDCAサイクルの活用は、知らず知らずのうちに行政的発想へと移動せざるを得ない。このことは、しっかりと留意していただきたい。

 議会改革の最先端を行っている議会は、地域経営におけるPDDDCAサイクルを行っている。理論化されていなかっただけである。そろそろ、従来のPDCAサイクルの発想と手法を超えたPDDDCAサイクルという新たな発想と手法の開発が必要になっている。

 なお、別のいい方をすれば、PDDPDCAともいえる。最初のPは計画案・提言(proposition , proposal , planning)、Dの最初は討議(deliberation , debate , discussion)、次のDは決定(decision)、Pは決定された計画(plan)。その後は従来議論されていたPDCAサイクル、つまりD:実行(do)、C:監視・評価(check)、A:改善(action)、に連なるものである。より詳細にいえば、Cに議会は決算等でしっかりかかわることになる。本著では、便宜上PDDDCAサイクルを用いるが、従来のPDCAサイクルの発想を超える意味ではどちらでも可能である。ぜひ今後議論を巻き起こしていただきたい論点である。