前回の続きですが、一事不再議の原則についてです。

 

 (八) 一事不再議の例外

 法令等で一事不再議の原則の適用を排除している時は、たとえ原則であっても適用されない。次のような場合である。

 1 再  議

 再議は地方自治法第176条、第177条に規定されており、その種類は①条例の制定、改廃、予算の議決を含め広く議会の議決について長が異議ある時(自治法176I)、②違法な議決又は選挙に対する再議、再選挙(自治法176Ⅳ)、③義務費を削除、減額した場合の再議(自治法177I①)、④非常災害経費等を削除、減額した場合の再議(自治法177I②)の四つがある。長が再議に付した時、前の議決の効果は停止され議決がなかった状態になるので、議会は当該案件を再び審議する義務を負う。したがって一事不再議の原則は適用されない。

 平成24年の地方自治法改正で、①これまで再議の対象となっていた予算の収入、支出の執行が不可能な場合の再議が削除され、②一般再議では条例の制定、改廃、予算の議決だけが再議の対象であったが、これを議会の議決に拡大し、条例、予算の再議決要件は出席議員の3分の2以上の者の同意、他の議決事件の再議決は過半数とされた。

 2 直接請求の条例案

 選挙権を有する者が地方自治法第74条に基づき長に対し条例の制定、改廃の直接請求を行った時、長は20日以内に議会を招集し意見をつけて付議する義務がある。仮に議会が当該会期で同じ内容の別個の条例案を議決しても、議会は直接請求による条例案について可否を決する義務があるので、一時不再議の原則は適用されない。

 3 請  願

 特定の請願が議決されていても、同趣の請願には一事不再議の原則は適用されないので、議会は同じ内容の請願を審議できる。請願は国民の基本的人権に基づく権利であり、議会は同一内容のものであっても意思決定する責務がある。議事手続上の会議原則により請願の審議を左右してはならないとされる。このため議会は同趣旨の請願であっても審議し採決する必要があるが、一件ずつ審議することは非能率であるので、同趣旨のものは一括議題として審議することが適当である(行実昭和28年4月6日)。また意見書を議決したあと同趣旨の意見書を議決されたい、との請願が提出された場合でも、議会は請願を審議できる(行実昭和28年4月6日)。この場合は既に目的を達成した請願であるから、議会は議長宣告又は議決により、みなし採択(不採択)とすることもできる。

 4 事情変更

 例えば特定の案件を否決したあと、当該団体をとりまく社会経済等の情勢が大きく変動した時は、同一会期であっても同一内容の案件を提出することができる。一事不再議の原則は同一環境、条件において成り立つものであり、その環境、条件が異なる時は適用されない。事情変更は客観的な変更であることを要する。明快な基準はない。長と議会の良識ある判断に任せるほかない。事情変更の乱用は議会意思の不安定をもたらすので慎重を要する。

 (九) 一事不再議の原則に反する議事

 一般に一事不再議の原則に反する議事はあり得ないが、仮にこの原則に反した議事が行われた場合どうなるか。

 1 同一内容の案件を同一会期中に議決した場合、後で議決した案件は一事不再議により無効で効力を生じない。

 2 内容が矛盾する案件が可決された場合、後の案件は事情変更がない限り一事不再議の原則に反するので無効と解される(これについては後の意思決定(案件)に矛盾する前の意思決定(案件)は、その効力を失うのではないかとの見解がある。「自治実務セミナー」昭和52年7月号)。仮に議長が両方の案件を長に送付した時、長は会議規則違反を理由として地方自治法第176条第4項に基づいて再議に付すことができる。

 3 瑕疵ある議決、例えば定足数を欠いた議決は無効であるから、同一会期中に定足数を満たして同一案件を採決することができる。定足数の有無は議長が認定する。散会後に定足数の有無を争っても投票表決等を行った場合など明白な証明がない限り、議長の認定が優先する。

 4 議会が誤って案件を可決することがある。議会は誤りであることを理由に議決を取り消すことができない。行政実例は「県会はその既に為したる選挙又は議決を自ら取消すことを得ず」(昭和8年2月7日)、「議決事件及びその内容によるが、一般的には越権違法等の法律上の瑕疵がない限り一事不再議の原則の支配を受けるものと解する」(昭和25年6月8日)と述べている。ゴルフ場開発促進を求める意見書案を誤って可決したのち閉会した場合、これを取り消すことができないので、正しい内容のゴルフ場開発についての意見書案を付議事件として速やかに臨時会を招集請求し可決する必要がある。その間、議長は前に議決した意見書を保管しておけばよい。

 (十) 委員会と一事不再議の原則

 委員会の審査でも一事不再議の原則は適用される。議会における一事不再議の考え方については、(一)意義のところで述べたとおりである。委員会は議会の下審査機関であり最終意思決定機関でないので、本会議ほど厳格に適用されない。適用の基準、限界は法令上明記されていないので、委員長は本会議と同様の慎重さで運用する必要がある。

 委員会における一事不再議の原則の例外としては次のようなものがある。

 1 再付託

 委員会は付託案件の審査を終了したあと審査報告書を議長に提出する。本会議で委員長報告、質疑を行った結果、議会が更に詳細に審査する必要があると認める時、議決により同一又は他の委員会に再付託することができる(県会規四七、市会規四六、町村会規四八)。同一委員会に再付託された時、委員会では一事不再議の原則が適用されないので、既に議決した案件を再び審査する義務がある。

 2 再審査

 委員会は付託案件を議決したあとで、審査不足や誤りを発見した時、また事情変更があり、前の審査や議決が委員会の意思を正確に反映していないと分かる時がある。委員会が積極的に再び審査したい時は、委員会で再審査の議決をすれば可能であり、一事不再議の原則に抵触しないものとされている。標準会議規則は本会議での再付託を規定しているが、委員会自らによる再審査を規定していない。再審査は、委員会が内部、下審査機関であることから自らの議決でできるものとされている。再審査の取扱いは次のとおりである。

  (1) 委員会で事前に協議し再審査することの合意を得る。

  (2) 委員会では委員長発議又は動議で再審査を議決する。

  (3) 委員長は、前の議決の審査結果報告書を議長に提出していない時は直ちに再審査を行う。議長に提出している時は、委員長が再審査の議決を行った旨を議長に通知したのち再審査に入る。

  (4) 再審査では前の審査の内容、議決結果に拘束されず審査できる。再審査は案件に対する質疑から始めてもよいし、討論から始めてもよいし、採決だけをやり直すこともある。どこから再審査するかは委員会の自由である。

 再審査の結果、委員会の議決結果が変わる場合(例えば否決から可決へ、可決から否決へ)、委員会として節操がないと批判されることがあるが、前の議決が委員会の真の意思を表していない時は、委員会自らによる再審査の方法を活用することが望ましい。もちろん再審査の活用は、前の議決を失効させるものであるから、慎重に行うことはいうまでもないが、事情変更や誤りがあっても、前の議決を押し通すことは本会議運営の混乱を招きかねないので好ましくない。一般に議員は一度議決したものを変更することは面子、体裁等から認め難いものであるが、何が住民の利益になるかの原点から考えるならば再審査の方法を拒否すべきではない。

 3 本会議と委員会の関係

 本会議と委員会の関係で一事不再議の原則の適用を考えると、委員会は本会議の下審査機関であるから本会議が議決した案件と同一内容の案件を審査することは、この原則により認められない。この場合、委員会は同一内容の案件を議決不要とすればよい。

 4 委員会相互間と一事不再議の原則

 委員会相互間では一事不再議の原則を適用する余地がない。委員会には所管があり、同一案件が複数の委員会に付託されることはない。このため委員会が特定の案件を議決した場合、他の委員会に同一内容の案件が付託されていないので、一事不再議の原則を適用する余地はない。

 5 複数の修正動議

 委員会で複数の修正動議が提出され、共通部分がある時は本会議におけると同様、一事不再議の問題を生ずるので留意する必要がある。

 

 いかがだったでしょうか?議員経験の浅い諸氏には今一度、一事不再議の本来的な考え方を十分に考えていただきたいと思います。

 

 市民の方には議会の原則なんて関係ないと言われるかもしれません。

 

 しかし、ここ数回にわたってその原則を書かせていただきましたが、「事情変更」があったときには、同じ会期中に同じ内容のことを審議決定して良いということです。

 

 私は、この東京都中央卸売市場築地市場移転問題というのは、会期ではありませんが、「協議の変遷」があって、多くの、本当に多くの関係者が協議に協議を重ねたという「事実」があって、その期間がここでいう「会期」のようなものだと思うのです。

 

 執行機関側いわば東京都知事側の職員、市場関係者が何度も何度も話し合って、時にはやり直して、時には止めてということの繰り返しでした。

 

 そしてその時々には議会関係者との協議、あるいは議題としての審査等もあったでしょう。

 

 それをわけもわからない特別秘書などとの謀議によってちゃぶ台返しをやって混乱させて、1日でどれだけの損害をもたらしているかを考えるべきであって、もう絶対にありえないことが日々続いているとしか言えません。

 

 そして、都議会公明党が豊洲移転容認発言ってなワイドショーまで。(笑)。

 

 結局、それかい!!(笑)。