過去2回にわたって、このタイトルでブログを書いてきました。

 

 どういうことかを少し別の視点で書かせていただきました。

 

 この陳情を取り扱った委員会の委員長にこういう議論がなかったのか否かを聞きました。その原稿です。

 

 日程第26継続審査事件となっていた陳情第17号並びに陳情第20号の市民環境経済委員会における審査についてお伺いいたします。委員会の中で、我が会派のような考え方に基づく、討論があったかどうかを確認させていただきたいと思います。

 

 まず、我が船橋市の助役をお務めになった砂子田隆氏は、著書「地方公共団体の議会運営」の中で次のように記述をしております。

 

 請願とは公の機関に対し、その職務に関する事項につき、希望を述べることをいう。

 

 この制度は、政治上の言論の自由が確立されなかった専制政治の時代には、民意を政治の担当者に知らせるための重要な手段としての役割を演じ、各国の人権宣言にも規定されている。その後、近代的議会制度の発達によって国民参政の途が広く開かれ、政治上の言論の自由が確立されるとともに、しだいにその重要性を失ってきたといわれるが、地方政治の場においては、その活用のいかんによっては、かくれた民意の発掘となるとともに、政治の行き過ぎのブレーキともなる役割が期待されている。

 

 請願は、すでに明治憲法において保障されているが、現行憲法では、何人も、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたために、いかなる差別待遇も、受けない旨を規定している。憲法の趣旨に従い、地方議会に対する請願は、法で定められ、国会各議院に対する請願は国会法・衆議院規則・参議院規則で、そのほかの機関に対する請願は請願法で定められている。

 

 請願は、法律的にいえば、単に希望を述べるだけの行為であって、その相手方は、これを受理し、その職務を執行するうえにそれを参考にしなければならないが、それ以上に拘束されるものではない。しかし、請願はできるだけ尊重するのが請願の趣旨に合するから、地方議会では、これを審査したうえ、採択したものは関係機関に送付するとともに、その処理の経過及び結果の報告を関係機関から請求することができることとしている。

 

 普通地方公共団体の議会に請願しうる者は、日本国民のみならず外国人でもよく、また当該普通地方公共団体の住民たると否とを問わない。

 

 請願の対象となる事項は、憲法第16条に、「損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項」と規定しているが、原則としてこれらの事項は単なる例示にすぎなく、いっさいの国務又は公務に関する事項に及ぶ。

 

 したがって、地方議会に対する請願は、地方公共団体が処理する権限を有する事項のすべてに及ぶものと解される。また、請願者の権利又は利益に直接に関係する事項や、その侵害に対する救済に限られず、直接請願者の利益に関係しない一般公共的事項をも請願の対象となる。ただ、裁判の判決の変更を求めたり、係属中の裁判事件に干渉する請願は、司法権の独立を侵害するものであるから許されないと考えられる。

 

 なお、地方公共団体で処理する権限のない事項についての請願は、これを受理せず請願者に対して正当な官公署を指示して却下し又は正当な官公署に送付するものとすべきであるとする説もあるが、形式・手続が整っているかぎり受理しなければならない。

 

 請願は、議会開会中であると閉会中であるとを問わず、所定の様式が整っているものが議長に提出された場合、議長がこれを受理することとなる。

 また議会に付託するまでの間は、請願提出者は議長の同意を得て、これを取り下げることもできるものと解され、その場合の手続は会議規則に規定すべきである。

 

 なお、請願は、当該地方公共団体の権限に属する事項でないと認められる場合においても、さきに述べたように、形式、手続が具備しているかぎり受理しなければならない。

 

 請願は、本会議で審査せず、所管の常任委員会に付託をするのが一般的な扱いで、特別委員会に付託するときは議会の議決が必要である。

 

 請願の委員会付託は、請願文書表の配布によって行われる。請願文書表は、請願の要旨を収め、審議の参考に供するために作成されるものである。したがって、付託の内容はあくまで「請願書そのもの」である。

 

 議会が受理した請願を審査するにあたり、それを採択するかどうかは、全く議会の判断にまかせられる。

 

 請願に対する議会の意思決定は採択、不採択の2種しかなく、原則として修正して議決することはない。しかし、請願は請願人の希望に対し、議会が願意に賛意あるいは反対の意を表して採択か不採択かを決するのであるから、便宜的に「趣旨採択」、「一部採択」という方法もとりうる。

 

 採択、不採択の基準としては、まず第1に考慮すべきことは、当該地方公共団体の権限に関する事項であるかどうかである。当該地方公共団体の権限に属しない国際的な問題、国政事務、他の地方公共団体に関する内容のものについては、不採択とするほかはない。

 

 第2に、希望の表明が妥当であって、かつ、実現の可能性があるか、少なくとも研究に値するものでなければならない。

 

 このような基準に基づいて、個々具体的に、採択、不採択を決めるべきものと考える。

 同―趣旨の請願がだされている場合は、その一を採択または不採択の議決をしたときでも、他の請願を審議してもさしつかえないが、一括することが適当である。

 

 委員会は、付託された請願について、審査の結果を「採択すべきもの」と「不採択とすべきもの」に区分し、意見をつけて、議長に報告する。この場合において、採択すべきものと決定した請願で、長その他の関係執行機関に送付することを適当と認めるものならびにその処理の経過及び結果の報告を請求することを適当と認めるものについてはその旨を付託する。

 

 議会は、その採択した請願で長その他の関係執行機関において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、かつ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる。

 

 関係のある執行機関が、議会の採択した請願の送付を受けた場合には、誠意をもってその処理にあたることは当然であるが、必ずそのとおりの措置をとらなければならない義務はなく、請願の趣旨にそいがたいものについては、理由を付して議会に報告することになる。

 

 陳情とは、公の機関に対し、特定のことがらについて適当に措置をとってもらうために、その実情を訴える事実上の行為である。

 

 陳情は、請願が憲法に規定された国民の基本的人権の1つとして保証しているのと異なり、特に法律の保護を受けてそのような権利を行使するものではない。陳情を受けた当局側としても、その結果、当然に別段の処理を要求されるものでもない。その手続や形式が別に定められているものでもないが、実態においては、請願とほぼ同様な役割をもっているので、その内容が請願に適合するものについては、請願書の例により処理すべきである。

 

 このような趣旨に基づいて、法第115条の2及び第109 条第2項及び第5項には常任委員会の権限として、「議案、陳情等を審査」し、「予算その他重要な議案、陳情等について公聴会を開く。」旨を規定している。

 

 私は、船橋市議会の議会運営は、この砂子田助役の助言等に基づき、当時の議会と一体となって、その基礎が築かれ、伝統的に請願・陳情の扱いは、これらの考え方に基づき取り扱ってきたものと理解しております。

 

 そこで我が会派の考え方ですが、

 

 砂子田助役が述べているように「趣旨採択」の考え方と、そのような結果の出し方があるのであれば、百歩譲って「趣旨採択、送付せず」という結論に導いてもよかった陳情と考えます。

 

 しかし、船橋市議会の現行制度上は、採択送付または不採択のどちらかであり、同時に、継続審査という取り扱いもあります。

 

 我が会派では、農業委員会の総会における農地転用の申請手続きが控えていることをはじめとして、この陳情は様々な事案を総合的に勘案したら、今議会においては、継続審査がもっとも相応しい取り扱いだったと考えます。

 

 継続審査の申し出があったにも関わらず、継続に賛成少数で、採決に至り、採択送付となったということです。

 

 砂子田助役の述べている、その「採択、不採択の基準としては、まず第1に考慮すべきことは、当該地方公共団体の権限に関する事項であるかどうかである。」ということであります。

 

 本件は、墓地、埋葬等に関する法律などに基づく行政処分の問題であります。従いまして、議会において厳正にその採択、不採択を決するべきものであります。それは議会としての団体意思を決することになります。

 

 「第2に、希望の表明が妥当であって、かつ、実現の可能性があるか、少なくとも研究に値するものでなければならない。」とのことです。

 

 希望の表明は明らかに妥当であります。このことについて我が会派は、趣旨採択の態度表明ができれば、趣旨採択であると考えるものです。

 

 次に実現性の問題です。本陳情のもっとも主とするその趣旨は、「墓地建設の一連の行政処分の差し止め」であります。このことについては過去に数多くありました、マンション建設反対運動に類似するものであります。

 マンション建設に当てはめますと、議場の皆さんにもわかりやすいと思いますが、都市計画法や建築基準法など関連法規に適合している行政処分は議会の立ち入る余地は全くなく、その行政処分に不当に立ち入ったり、執行機関が不当にその処分を遅らせたりした場合には、訴訟に発展しかねない事件でもあります。

 

 本陳情も、種々調査をした結果、墓地、埋葬等に関する法律等関連法規に適合が明確である場合には粛々と行政処分がなされるべきものであり、それに議会が関与するべきものではありません。だからこそ、前述申し上げたように「継続審査」がもっとも現段階に相応しい結論であると考えるのです。がしかし、そうならなかった以上は、その実現の可能性に戻りますが、「法適合している以上は、行政処分においてその可能性は無い」と判断します。

 

 さらに詳細に申し述べますと、陳情第17号は「公園霊園」の建設反対を言い、陳情第20号は、議会として墓地建設中止を指導されたいということです。

 

 私たち議会には議決機関としての責務はあったとしても、墓地建設の中止の指導などという執行権限がないことは議員のイロハでもあります。

 

 これをもっても、陳情者の意図である「議会が」というものが、執行の主体になりえないものでもあります。

 

 従って、その部分を取っても、結論は明白であります。

 

 さらに「少なくとも研究に値するものでなければならない。」という記述に基づいたら、「研究する余地も無い」というのが私どもの会派の考え方です。

 

 さらに申し上げれば、本陳情の採決結果をもとに、「議会が採択した」という主語で、無用な反対運動への拍車がかかった場合の責任はどうなるのでしょうか?結論を出した後の責任も生じるものだと思います。

 

 法治国家である我が国において、適法に経済活動をしようという事業者に圧力ととられても仕方のない結論に導くことはあってはならないことであると考えます。

 

 従って、政治家としてその矜持を持って結論を出すとしたら、本件は、不採択であります。

 

 私は、冒頭の記述にある「政治の行き過ぎのブレーキともなる役割」どころか、本陳情が採択されるということは、むしろ政治の行き過ぎのアクセルを踏む事態であると苦慮いたします。

 

 改めて、委員長にお伺いいたします。ただいま述べましたような私ども会派の考え方の討論はなかったのでしょうか?ご答弁をお願いします。