届きました。


はしがきを読んだだけでワクワクしてくる内容です。

その後ちょっとだけ読み進みましたが、地方公務員だったからこそ、常に問題意識を持っていたからこそ、こういう内容で書けたんだと思います。

まだ、手付かずですが、読み進めたいと思います。これってたぶん職員諸氏には耳の痛い話もありそうで、むしろ真面目に取り組んでいる地方議員にオススメのような気がします。


僕がぶち当たった壁のことがいきなり書いてありましたもの。

真面目に仕事をしている議員さんだとぶちあたる大きな壁。「赤信号みんなで渡れば怖くない」という体質について触れています。まさにうちだけのことだろうと思っていたのですが、よそでもあるのね。と。


なので、とりあえず、はしがきだけ引用させていただきます。

あとはみなさん、ご購入くださいませ。


自治体法務の多元的統制―ガバナンスの構造転換を目指して

第一法規株式会社

定価5,400円 (本体:5,000円)


自治体法務の多元的統制 [ 田中孝男 ]
¥5,400
楽天

はしがき

 本書は、日本における自治体法務の諸活動を、地域住民の福祉と権利利益の維持向上という観点から、より良く統制するための構想をまとめたものである。研究の意義などは序章で述べることにし、ここでは、本書の問題提起に至る背景を簡単にまとめる。

 1982年、筆者は、北海道大学・文III系(当時)に進学した。低所得層の、かつ、肉体労働者階級出身の父は、筆者が大学一年のときに急病死した。以後、反知性主義的家風の中、常に大学中退の危機と向き合いながら、授業料の免除及び奨学金とアルバイトによって、形式的には、学業を続けた。父の死去時、父が退職金を前借りして筆者の大学入学金・授業料を工面したことを知った。こうした経済的事情・家族状況の現実、役所依存と官尊民卑意識の著しい北海道の土地柄、親の意向と扶養等の必要性から、筆者は、在学中の早い段階で、転勤のない地方公務員を志望せざるを得なかった。

 大学では法学部に進み、3年生のとき、筆者は、進路等を考えて、行政法の木佐茂男先生のゼミに所属した(もう一つの行政法ゼミだった遠藤博也ゼミは、アメリカの行政法教科書(英語)の講読だったと記憶している)。1984年秋、ゼミの共通検討テーマであった情報公開制度に関して、兼子仁先生が北海道恵庭市のまちづくり研究会で講演をすることを木佐先生から教えていただき、恵庭市まで兼子先生の講演を聞きに行った。講演後の、同研究会による兼子先生との懇親会に参加し、同研究会の活動に触れたことが、札幌市就職後も自主的

に自身で学ぼうとする生活スタイルのきっかけとなった。

 前職就職後、冬に、北海道滝川市で開催された『柳川堀割物語』の上映会に行き、主催者が招聘した広松伝氏を囲んでの懇親会に参加した。遠くから広松氏の様々な言葉を聞きながら、札幌行きの最終特急列車に飛び乗った思い出がある。この映画は、DVDで何度も視聴しており、私の地方自治(法)論の立ち位置となっている。だから、福岡に来てからは、数度、柳川の掘割に赴いたりしている。

 札幌市役所では、最初、区役所において滞納市税の徴収事務(滞納者と納税折衝等をする現場の事務)に三年間従事した後、1989年に法制事務担当部門に異勤した。そして、1992年秋、職員向けの短期海外派遣研修の機会を得た。語学力が不十分だったので、当時、木佐先生の調査に同行する形で、英・独・韓の三か国の自治体等を調査した。その際、一週間ほど単独で行動し、ドイツ・ミュンヘン市法務部を調査した。ミュンヘンでの調査には、様々な衝撃があった。当時から、筆者は政策法務論に関心を持っていたが、この海外研修を機に、改めて自治体法務のあり方について、より深く考えるようになった。

 地方分権が進み、自治体が内政における政策立案と執行に関して権限と責任を増している中、国の行政機関による後見的指導・監督の役割は、理念的には、相対的に低下している。だが、自治体行政当局を信頼することができないのは、住民参加の充実に関する制度改革にことごとく反対する自治体当局(議会及び執行機関)の諸行動を見れば、一見明白である。裁判所による自治体の司法統制も重要であるが、それだけで、地域にとって最適最良の解決が得られる保証は、どこにもない。そこで、自治体の法的活動(自治体法務)を、国の行政機関はもとより、当該自治体の機関自身、住民そして司法などがそれぞれの統制手段を多元的に展開することで、自治体法務を統制(コントロール)するのが重要というのが筆者の考え方の肝(キモ)にある。

 前職時代から合わせて約三〇年、自治体法務を研究主題にしていたことになる。なんと遅々とした研究であろうか。また、研究内容も陳腐で至らないように思え、悩むこともある。だが、加齢に伴う種々の成人病や、心身を鍛えるために46歳から始めた剣道での怪我に襲われ、さらに家族の問題などが次から次へと身にふりかかる。そこで、自分の研究について、中途半端なのかもしれないが、一つのまとめを行うこととした。

 本書は、九州大学法学研究院国際学術交流振興基金の助成を得て、出版することができた。助成を認めてくださった、本研究院の皆様に、まず、深くお礼を申し上げる。

 また、本書は、いくつかの既出論文等をベースとしている。時間の経過や筆者の問題意識の変化などから、これらを完璧に一つの筋立てで構成し得たとは言い難いことをおわびする。

 既出論文や、その基となったシンポジウムやフォーラムにおける発表の機会を与えてくださった国内外の方々に、心から感謝したい。これまでの研究は、科学研究費補助金などによって、初めてなし得たものである。研究及び海外調査にあっては、関係各機関の方はもとより、国内外における各先生にも大変お世話になった。本来であれば一人ひとり名前を挙げてお礼を申し上げるべきである。ただ、それをすると長大なものとなる。ここでは、水佐茂男先生(九州大学教授・北海道大学名誉教授)のお名前のみを挙げさせてほしい。今日の筆者があるのは、先の海外研修を含め、前職時代から木佐先生が公私にわたり、様々な助言、援助、指導などをしてくださったことにある。このことは、明記して、感謝しなければならない。また、木佐先生のご期待・ご指導になかなか応えられず、まだまだ不満であろう水準の研究をまとめるのにさえ、こうして長時間を費やしてしまった。心底申し訳なく、おわびを申し上げる。

 次に、九州大学の行政法・行政学の諸先生(村上裕章先生、深澤龍一郎先生、嶋田暁文先生)をはじめ、学内外の多数の先生から、日々いろいろなことを学ばせてもらい、たくさんの激励を頂戴し、諸々とお世話になっている。深くお礼を申し上げる。

 語学の不十分な部分については、関係各国の諸先生や私が指導する留学生の支援をいただいており、その中でも、本書に関連しては、林素鳳・(台湾)中央警察大学教授と、崔祐溶・(韓国)東亜大学教授に、数度にわたる現地調査にあってのお力添え、指導・助言を頂戴している。深謝申し上げる。もちろん、本書の内容面の誤りは、筆者に責任がある。

 さらに、全国の自治体・関係研究会の皆様との情報交換、共同研究などがなければ、本書やその基になった論文はまとまらなかった。各地の皆様に、心からお礼を申し上げたい。

 出版に際しては、第一法規株式会社出版編集局編集第二部の梅牧文彦氏に、大変お世話になった。梅牧さんとは相当に長い付き合いとなった。彼のご尽力がなければ、本書の出版は到底覚束なかった。出版事情が厳しい中、行政法・地方自治法分野で高名な成田頼明先生の著作集を出す出版社から本書を刊行できたことには、大変光栄に思っている。同社の皆様にも、お礼を申し上げたい。

 扶養義務を十分に果たせないことを甘受してもらっている母、私の代わりに母を支える妹、私の転職を認め応援してくださっている義父母・義弟とご家族、そして、知人・親戚の全くいない九州・福岡の地まで筆者とともにやって来てくれた妻と二人の子供のために、本書をのこしたい。


2015年春


※本書は、JSPS科研賢1503112の研究成果の一部でもある。


田 中  孝 男