3月のNHKのニュースで地方議会についての特集がありました。

「いわゆるサラリーマンの地方政治への参加」でした。

NHKってやっぱり最近ダメだなと感じた特集の論調でした。


 今ある地方議会が、なぜこのような設置、開会の状況なのかの検証結果を言わずに、単純に開会の現状から、いわゆるサラリーマン(企業などに雇われている社員)が、地方政治に関わることができていないという構成です。


 しかも、海外の地方議会との比較までも行っております。これは学者先生様たちも同じ論調でやる場合があります。とんでもない比較論です。まずはここから説明しておきましょう。


 地方行政のあり方の違いを論じないまま、地方議会だけをピックアップして比較する。極めてアンフェアな話です。


 海外との比較をするにあたっては、そもそもの社会構造が違うことから、政治に成り立ちの違いがあります。さらには、地方行政のあり方も違います。

 

 一方で、現在の地方政治にサラリーマンの方々が参加できていないというのは事実だと思います。これは議会側の広報のの問題です。知らせる努力(番組中では報告・連絡・相談)の一つとして言っておりました。を怠っています。船橋市議会ではこの4年間で見ていただく、知っていただく努力をしてきましたが、まだまだ足りません。議会の生・録画中継、委員会の生・録画中継、WebSite、SNSの積極活用等、いわゆるサラリーマン世代の方々のアクセス可能な環境を増やしてまいりました。選挙権をお持ちの方々の地方政治への参加の手段は増えてきていると思います。


 ところが、NHKの論調の中で、会社を休んで会社員が、被選挙権を持つ議員がいわゆる「二足のわらじ」を履いて活動をすることが難しいというものでした。


 統一地方選挙を直前に控え、有権者をミスリードする番組作りを意図的ではないかと思うくらいのものでした。


 国会、都道府県議会、市区町村議会を上下関係で見ているようで不愉快でした。国会が、そういう環境にあるのでしょうか?都道府県議会がそういう環境にあるのでしょうか?


 なぜ、市区町村議会だけが二足のわらじが可能で、議員として積極参加するべきだという論調になるのでしょうか?


 NHK記者の薄っぺらさに驚愕しました。


 順を追って説明をしたいと思います。


 まず、土日夜間の議会開催の話です。傍聴者をはじめ、議会を「見る・聞く」側の理屈から申しますと、中継と録画をご利用いただければと思います。現場で臨場感あふれるなかでという場合は、会社などをお休みいただいて傍聴をお願いしたいと思います。


 「公務員」は、労働法制の基準みたいなもので、各種労働関連法令を始め、地方だと地方公務員法、国ですと国家公務員法などの法律で厳格にその「勤務」に決まりごとがたくさんあります。


 その中でも、土日夜間は「働かない」基本があります。従いまして、そこで「働く」ことになる土日夜間議会を行うことになると、その議会を取り回すだけで、かなりの職員が時間外勤務や休日勤務を行います。税金で食っているんだから、それくらい当然だろうという声が聞こえてきそうです。また、各種法令や制度を変えればいいだろうという声も聞こえてきそうです。


 地方自治体で申しますと(国の厳密な内容を知りませんので)、条例で職員の定数を定めています。これは、勤務に関するルールの中で仕事をする最低限の人員の算出です。


 これは逆を言うと、勤務時間内(簡単に言うと9時から5時の間)で、議会の準備も管理職と一般の吏員とで打ち合わせをしたりの準備を行います。若干の残業は仕方ありません。


 それが、土日夜間になったらどうでしょう?大変なことになります。議会に関わる末端の職員まで含めると、船橋市では職員の何パーセントが関わるか知りませんが多くの職員が土日夜間に出勤となります。これは、そういうことを想定していない法令や条例等の枠組みがかなり以前からあるためです。


 しかも歴史的背景もあるわけです。


 日本の社会の発展の過程で、納税者の多くがいわゆるサラリーマンであることを想定していないものだからです。


 考えてもみてください、地方自治の制度、地方政治の制度が確立され始めた頃は、第一次産業中心の社会でした。

 

 従って、船橋市での過去を考えますと、一番は農家の方々中心の議会でした。そこに漁業従事者の方々、商業を営む方々という構成でした。


 そこから少しずつの変化をしながらの現在です。


 では、会社員の方が二足のわらじで活動が可能かというと、会社の理解次第だと思います。昔の第一次産業従事者の方がでも、「大きな農家、地主」であったり、漁業従事者では船を何艘ももっている網元みたいな漁師だったり、商店主でも番頭さんがいたり、従業員に切り盛りを任せられる経営者でした。

 議員職を優先できる方々だったのです。当時は地方と国の関係も現在とは違い大きく上下関係がありましたので、その議員もまさに国会議員の流れをくむ地方議員が一体になって選挙も含め活動をしていました。


 では、現在の地方行政の役割はどうでしょう?

 国や県との上下関係は薄れ、特に船橋市くらいの都市になると独自の行政運営が行われますので、国や県の議員との関係がむしろ希薄になっています。


 では被選挙権者(選挙に立候補する側)としての状況はどうでしょうか?立候補は自由にできますから問題ありません。しかし、その仕事量ってどうでしょう?


 社会がものすごく多様化し、構造変化もあり、有権者の考え方なも多様化した中で、行政需要も多種多様化しています。

 

 何を言いたいか?


 船橋市規模では、二足のわらじの議員は成り立ちません。

 それは、日本共産党や公明党の議員さんを見ていれば明白です。二足のわらじを認めていないようです(正確に聞いたことはありませんが)。

 

 議員の一番の仕事である、「行政事務事業の監視」ですが、半端な量ではありません。我々のカウンターパートである「市長」の補助職員は、臨時、非常勤の皆さんも含めて8,000人近くいます。

 その人数で担っている事務事業をたった20名ちょっとの補助職員で50名の議員ですから、議員一人当たり職員0.5人です。となると、議員は市役所が開庁している日には毎日足を運んで、様々な調査をしても間に合わないのが現状です。

 ですから、都道府県、政令指定都市の議員の専業化が進んでいます。私も含め船橋市議会でも専業議員の数は増えてきていると思われます。


 それをあたかもNHKは兼業で務まるような論調で特集番組を組んでおりました。極めて不適切な報道姿勢だと感じました。


 またそういう誤った認識を植え付けられて当選してきた議員の質の低下がこれまた著しいのが深刻な問題であります。

 むしろそういう部分にスポットを当てて番組制作をしていただきたいものです。


 そういう色眼鏡で見られるような番組放映によって、我々の仕事内容が歪められることに激しい憤りを覚えています。


 が、しかし、一方ではまだまだ前時代的というか時代錯誤的というかそういう議会があることも否定できません。そこは我々も真摯に反省しなければなりません。


 ただ、公務というものは必ずしも民間企業の経営マインドで行って良いものではありません。

 そこを十分に理解した上で、サラリーマン的視点で議論に参加していくことは大いに歓迎されるべきであると考えます。


 しかしながら公務の継続性の重要性から、一朝一夕にドラスティックに物事を変化させることはエネルギーのいることで、どこで折り合いをつけるべきかをしっかりと考えるのが政治の役割でもあると考えます。

 

 いずれにいたしましても、一方的な、近視眼的な論調で地方議会を斜に構えて語られることは甚だ迷惑であると感じました。