首長とはこういう見識が欲しいと思いますね。若干筋は違いますが、根幹は私が十数年来追いかけている案件でもあります。

鳥取県知事定例記者会見(2014年5月13日)

http://www.pref.tottori.lg.jp/236311.htm#1

学校給食用牛乳供給事業への対応 

●知事
 はい。皆さん、おはようございます。この度、いろいろと世上、議論になっておりますことにつきまして、先回の記者会見でもご質問がございましたけれども、県内の給食の牛乳をめぐる議論がございます。これにつきまして、先般でのいろんなやり取りもございましたが、その後、庁内の方で私もよく事情を聞かせていただき、調査をさせていただきました。この問題の発端というのは、県の西部におきまして大山乳業〔農業協同組合〕、白バラ牛乳で大変おいしい地元の牛乳があるわけでありますが、残念ながらこれが入札に漏れてしまいまして、県外の大手企業が落札をし、それに基づいて現在、県西部におきましては牛乳の供給が県外からなされているということであります。それは入札という1つの公正なルールであるので、いたしかたない面は、確かにはあるんですけれども、私も地産地消という観点で腑に落ちないところでございました。よくその事情を調査をしたわけでありますが、結論から言えば、農林水産省の制度で、これを唯々諾々とやっていたという実態が分かりました。
 私は、鳥取県、全国で鳥取県だけかもしれませんが、この農〔林〕水〔産〕省の枠組みによる、この落札によって給食の牛乳を決めるという制度からボイコットしたいというふうに思います。これは、今の世上の状況を見てみますと、EPA〔経済連携協定〕で日豪の合意がなされたところであります。さらにTPP〔環太平洋経済連携協定〕で今度はアメリカの大統領お越しになりまして、オバマさんと安倍〔晋三総理大臣〕さんとの間の話合いがどうもまとまったんではないかという憶測もありますが、今、主席交渉官ベースでの交渉も佳境に入っているという状況があります。また、ヨーロッパとのEPAということもあります。これがもし実行されるということになりますと、乳製品が大量に日本に入ってくる可能性がある。それに基づいて生乳の需給バランスが崩れることが予想されます。そうすると今のように落札制度を続けるということになってしまいますと、これは県内の酪農家にとりましては死活問題になり得るわけです。あろうことか、そうしたTPP問題等に対して酪農事業者を初め、畜産に最大限の配慮を払うべき農林水産省そのものが、この制度によりまして落札によって競争をさせて、それで牛乳を決めろということを制度として持っていることは大いに疑問であります。
 従いまして、今の枠組みを続けるというのであれば鳥取県はボイコットせざるを得ないというふうに考えております。もう少しちょっと分かりにくいと思いますので、若干敷衍〔詳しく説明する〕をさせていただきますと、昭和29年に古い法律でありますが、酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律という法律が通っています。昭和29年です。戦争直後、日本の実際の食糧事情、これを目の当たりにして牛乳給食を含めた栄養をしっかりと子どもたちに摂ってもらうべきだということが議論をされた時期であります。そのときにその牛乳を確保して全ての子どもたちに牛乳を配る。そのためにはそのルートを確立をするし、行政も関与をすると、こういう枠組みが昭和29年に出来上がったわけであります。考えてみますと、それぞれの市町村の行う給食用の牛乳でありますから、自治体の地方自治の原則に則りまして決めていけばいい話であります。しかし、牛乳の総量は確保できるかどうかということが当時あったんだと思います。それで、牛乳の必要量というものを調査をして、国が計画を作り、牛乳を斡旋をするということでございまして、その中に県の役割というのが位置付けられたわけであります。昭和39年に給食用牛乳供給対策要綱という、そういう要綱が作られました。これがそのまま平成15年に局長の通知が出されたりしているわけでありますが、これによって、実はその牛乳の供給の仕方が国の制度で雁字搦めに決まっているんですね。それで、実は鳥取県は他とは違った状況が生まれています。それは、大山乳業〔農業協同組合〕さんの方に県内の牛乳生産が一元化をされたわけです。合併によりまして鳥取県内では牛乳の生産が組合として一本化された。従いまして、それまでであれば全国各地、実はそうです。島根県もそうなんですが、県内にいくつかの牛乳生産業者がいる場合は入札という仕組みも頷けないわけではないんでありましょうが、鳥取県の方はどちらかと言うと、それこそ国の指導や方針を忖度して農業者が大刀団結をして県内一乳業メーカーという体制を作ったわけであります。
 これ古い話になりますが、そのときに農林水産省といろいろやり取りをしているわけですね。当然ながら1社になってしまったので、その大山乳業〔農業協同組合〕に随意契約として市町村とやってもらうように、これは運用させてもらいたいということを当時やったそうなんですが、農林水産省がそれを認めなかった。それで近隣県を含めて入札をしなさいと、それは国の制度がそうだからと、こういうことだったようであります。今まで現実には入札に参加してくる他県のメーカーがなかったわけでありまして、問題が顕在化しなかったわけでありますが、今回、こういうTPPやEPAということもあるのかもしれません。少し流動化している状況がございまして、県境を越えてやってくるということになったようでございます。これを我々としては、おかしいので変えてくれと今、このタイミングでも言ってきているんですが、農林水産省側は頑としてそこを認めようと今、していません。そうであれば、我々はボイコットをするという以外に選択肢はないんではないかなというふうに考えております。
 この辺は、緊急に政府側にも申し入れをする必要もあろうかと思いますし、我々としても今後の対応策について引き続き市町村の当局等と話を進めてまいりたいと思います。非常に状況、ナンセンスだということがよく分かってきました。計算をしっかり置いてみますと、子どもたちの牛乳それぞれについて、これ、実は補助金があるということだったんですね。その補助金があるので市町村はそれをやってくれという圧力があったわけでありますが、弾いてみますと、1人当たりたった9銭であります。消費税8%にするということで大騒ぎしている時代にたった9銭の補助金が1本当たり出るということで市町村教〔育〕委〔員会〕は保護者の顔を気にしてこの制度を使ってくれというような向きもあるんです。ただ、私はナンセンスだと思うんですね。たった9銭のことで国の制度に縛られて入札を強制されるというのは、決して地産地消という観点では合理的ではない。特に解せないのは、今、TPPやEPAといった動きが出てきていまして、そういう生乳の生産現場がどういうふうに守られるかというときに、子どもたちの栄養や郷土への愛着、そういうことを考えて地産地消で牛乳を使うということを農林水産省がだめだと言っていることは理解に苦しみます。
 従いまして、ボイコットをせざるを得ないのかなというふうに思います。国の方で枠組みを見直していただくということになれば再検討の余地はあろうかと思いますが、そうでなければ、鳥取県はこの点について独自の歩みをせざるを得ないのかなと思います。県職員の方も一生懸命こう、農林省の方を向くんですけども、そういう場合ではないだろうと思います。ここは心を鬼にして我々としては郷土のために仕事をすべきだというふうに考えます。

学校給食用牛乳供給事業への今後の対応
○朝日新聞 吉田海将 記者
 すみません。牛乳の入札のボイコットの話なんですけども、詳細はちょっとこちらまだ把握していないんですが、確か一部の自治体で入札で他の牛乳を今年度から採用しているということでしたよね。県としてどのような手続きということで、そういう自治体と連携してボイコットというか、そこら辺もうちょっと具体的に。

●知事
 凄く不思議な制度ですから、

○朝日新聞 吉田海将 記者
 はい。

●知事
 多分聞いて多分疑問に思われるんじゃないかと思うんですが、先程申しましたように戦争直後に牛乳で滋養をつけてもらおうと。そういうことで子どもたちの健康、未来のために給食制度というのは始まって、その中に欧米流だと思いますが、牛乳というものが中心に位置付けられたんですね。ただその牛乳生産が当時戦争直後のことでありますから、安定して得られているわけではありませんので、それを国として総量を確保するわけです。だから、今聞くとナンセンスに聞こえると思うんですが、何を今じゃ、未だにやっているかと言いますと、秋頃だと思いますが、翌年のその子どもたちの数に基づいて各市町村の教育委員会からどれだけ牛乳の量が必要になるかということを提出をさせるんですね。これはもう一度申しますが、先程の昭和29年の〔酪農及び肉用牛生産の振興に関する〕法律に基づく農水省の通達によりまして、そういう義務付けを我々に与えているんです。
 その通達が果たしてそんな義務に我々従う必要があるかどうかという疑問を持っているんですけども、現実にはそういう通達がありまして、唯々諾々と県も市町村も従っていたということなんですが、市町村はその牛乳の数量を県教〔育〕委〔員会〕に提出をするんです。それで、県教委がその本数をまとめまして、それで実際に契約するのは当然ながら市町村であり、給食センターがその業者と発注をして契約を結ぶんですけども、ただそのプロセスの中に、なぜかこう県だとか国が入るわけです。それで、国もそういう牛乳の供給計画だとかを作るとかですね、今考えるとナンセンスなんですけど、ただ、例えばその大〔山〕乳〔業〕さんで言えば生乳向けが3万tとか、そんな中の2,000tぐらいしかないわけですよね、学校給食向けだとか。ですから、当然供給できる量はあるんですけども、ただ未だにそういうことを国として把握をして、総量を担保すると。それで、その過程で、その県の教育委員会がまとめたものを、それを県全体で確保しなさいという枠組みなんですね。ナンセンスですよ。それもう頼めば買えるんですから、今。それでその確保しなさいという枠組みにして、それについてなぜか県が登場するわけです、その通達の中で。それで、うちで言ったら東部、中部、西部みたいにある程度広域的に、市町村をまとめた地域割をしなさいと。その地域割をしたうえで、それぞれについて牛乳の業者を入札で決めなさいと、こういうふうに書いてあるわけです。
 だから、我々の担当者もしょうがない、これ農林省の制度でありますから、大山乳業が合併して県内で1つになったときも、これはもうやっぱり1つなんで随意契約させてくださいというふうに掛け合ったんですけども、農林省の方は、いや、それは入札だと、そういうふうに通達があるんでそれに従ってもらわないと困ると。それで、しょうがないから近隣県まで呼びかけの範囲を作らざるを得なかったと。入札なんで出てこなければ1社で終わりなんですけども、現実に今回出てきちゃったわけですよね。それで問題が顕在化したというのが真相でございました。ですから、これは正直そういう意味で、時代錯誤であると思います。それで、その農林省はただ未だに法律もあり、それで要綱に基づく通達もあるので、その通達を盾に取って従えと未だにおっしゃるんです。それで、もうそんな時代でないだろうと。ですから我々はボイコットせざるを得ないと。

○朝日新聞 吉田海将 記者
 そうすると、具体的には来年度から入札をボイコットして大山乳業と随意契約を結ぶという。

●知事
 それはもう市町村ベースでやればいいわけですよね。

○朝日新聞 吉田海将 記者
 そういうかたちで。

●知事
 そう、そう、そう。そうだと思います。普通に考えていただければ給食の食材皆そうでありますけども、例えばニンジンにしろ、お米にしろ、パンにしろ、給食会というまとまったところがあれば、あるいは給食センターという市町村の組織があったり、そういうところで買い付けをしてそれで賄っているんですけども、牛乳もそうやっているんです。ただその過程で、広域的にその牛乳の業者を落札で決めなさいと強制をしているんです。そこにまたご丁寧に農林省の通達の中では、一定の競争の中で牛乳は決めるべきなので通達によるべしとこうなっているわけです。

○朝日新聞 吉田海将 記者
 そうすると知事としては自治体にボイコットしたらどうでしょうかというふうに呼び掛けるというような立場という感じでしょうか。はい。

●知事
 そうですね。というかこれまだ先程申しましたように、我々として市町村とも、今後もまだ話合いもしながら今後の方針を確定していきたいと思うんですけども、ただ、今のままの制度が続くんであれば、これは地産地消に真っ向反しますし、特に私が懸念をするのは、今、TPP〔環太平洋経済連携協定〕の騒ぎがあり、それからEPA〔経済連携協定〕の話がありですね、乳価の安い事業者のこれからバトルに入る可能性がある。そうなったときに県内の大山乳業が地元で一生懸命酪農家が育ててお乳をとっているわけであります。その先に子どもたちの喜ぶ顔があるからやっているんですけども、言わばその地域のささやかな連鎖、これを断ち切ることの合理性を感じないんですね。それで、TPPだとかEPAがあって、むしろ国を挙げて、こういう零細な酪農家たちをどういうふうに守っていくのか、農林省こそそれを考えなければなりません。
 ところが当の農林省が、牛乳を決めるのは入札でなければいけないと通達に書き、鳥取県のように1個しか牛乳生産メーカーがないところ、これ別になんかカルテルを結んで一緒になったわけではなくて、肩を寄せ合って、強いそして良い牛乳を作ろうということで歴史的団結を遂げられたところでありまして、そうした経緯も全部捨象をして、とにかく通達を守らんがために入札をせえというのはやっぱり納得ができないですね。従いまして今のままの制度が続くんであれば、私はボイコットをせざるを得ないんではないかというふうに、今、主張をしております。県庁職員はこういうふうに私が言うもんで、戸惑っているんですけども、でもやはり地域の目線に最後は立つべきではないかと思います。

○山陰中央新報 桝井映志 記者
 今年も既に、一部の6つぐらいの町村が独自に大山乳業と随意契約というかたちをしておりまして、ですので、なんか今年から新しい制度ができたので、そういうことができるようになったらしいということでしたんで、もともと私もなんか取材してみて思ったんですけど、補助制度、なんかあんまり補助の金額もの凄く小さいですし、意味がないと思いましたので、もういっそ市町村それぞれ判断してくださいということに返すのが一番良いのかなと思っておりますけど。

●知事
 私もそういうふうに理念としては考えています。昔、確かに昭和29年の段階であれば戦争の混乱の中で牛乳を確保するために県全体でしっかりと後見役になって牛乳をまとめ上げてくれというのは理解できたんだと思うんですね、ただ現状はむしろ牛乳離れが進む、牛乳余りということが心配をされる、それだけ生産量が増えてきています。それで、他の食材と同じように市町村が契約をして決めればいいわけです。それを法律違反だ、通達違反だというふうに言うのはいかがかなと、これが中央集権の権化ではないかなというふうに思えてならないんですね。そういう意味で今おっしゃったのはパスチャライズ〔低温殺菌〕牛乳だというお話だと思います。低温殺菌牛乳というものについては、これは我々も大分掛け合っているわけですね。それで、担当者レベルで。だから、そういうことになれば随〔意〕契〔約〕してもいいよと、ここは農林省が認めたんだそうです。それで、そこはやっているという世界なんですけども、本来、ナンセンスなんですよね、それに限らず、パスチャライズ牛乳に限らず、たった9銭の補助金があるからお前ら従えというのは、ややちょっと合理性を欠くんではないかなと私は思います。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 よろしいですか。その9銭の補助金の問題ですね、もしボイコットするとなると、補助金出なくなるわけですよね、微々たるもんであっても、その分の肩代わりみたいなことというのは県は考えるわけですか。それともう1つ。

●知事
 それはこれから市町村とまた相談をさせていただきますが、9銭ですので、太田〔満明記者〕さんも計算をしていただければと思いますが、80万〔円〕そこそこです、全県で。それで農林省が鳥取県はそういうことでやるだかと言って、そうであれば、そのぐらい我々だって魂はある、80万〔円〕ぐらいなんとかしますよというスタンスですね。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 負担するということですよね。

●知事
 ただ、そもそもこれは地方自治の理念として、もうこんなことは現場に任せるべきだと思いますね、それで、それぞれの市町村の教育委員会が保護者と話をして、どういう牛乳を地元で飲ませたいか、やっぱり地元の牛乳を飲ませたいという、そういう声は強いと思います。それをやっぱり認めるのが地方自治分権の考え方ではないかなと思います。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 あともう1点ですですけれども、大山乳業しかないということなんですけれども、それで、この大山乳業っていうのは、これまでいろんなちっちゃい会社があって歴史的団結をして1社になりましたよという話なんですけれども、1社しかないっていうことになると、独占的企業って言って、言い過ぎになるかもしれませんけれども、値段が上がっていくっていうことが心配されるんじゃないかと思うんですが、そのあたりの歯止めっていうのは何かございますか。

●知事
 そこに、だから、入札という制度を持ち込むそういう議論もあるんだというふうには思いますけども、ただ何を大切にするかだと思うんですよ。今私たちは、考えなきゃならないのは、やっぱりEPAとかTPPなどがやってきて、特に畜産〔業〕が私はこう狙われている感じがするんですね、今の交渉の経過を見ていますと。それで、そういう中で頑張って、踏ん張って牛乳の生乳の生産を、地域のため、子どもたちのためにやろうとしている。そういう生産者が暴利をむさぼるなら別ですよ、それ相当の対価を得て販売をすることの何が悪いのかなという感じがいたします。ただ、それがどうしても嫌で地方自治の原則で私の町では、私の市ではやっぱりそうはいっても入札をして、少し安いのを買おうというところがあれば、それは地方自治なのかもしれません。ただ、今の制度は全然関係ない県が登場させられて、県内を広域に跨いで拘束力を持たせて代理入札をさせているっていう制度でありまして、すごくこう地方自治の原則からして解せないかなというふうに思います。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 酪農業者の方の理屈で言うと分かるんですけれどもね、ただお金を払う給食者の、給食を食べる方ですね、家庭の方の事情から言いますと、いろんな事情があると思うんですよ。この中で、1社しかやっていないがために、値段が上がっていくっていうことになるんだと、負担が上がっていくわけじゃないですか。そこの歯止めは何かありますかとお聞きしたんですけど。

●知事
 それも、だから例えば予定価格を設けるとか、あるいは客観的な公正な価格の値決めの仕方、それを考えていけばいいわけで、そんなのいくらもあります。例えば不動産を買います。不動産を買うときに、不動産を買う相手っていうのは、売り主、買い主の関係で言えば1対1ですよね。釣りあげられたら切りがないがないわけです。だから例えば、近隣の価格を調査をして、その価格でないと我々は契約をしませんというような仕組みを随契の中で持ち込むわけですね。そんなことはいくらも工夫はできようかというふうに思います。もちろん随〔意〕契〔約〕を強制、じゃ、今度は随契を県が強制するかと言えば、これは市町村がそれぞれ給食を作る話でありますので、市町村の分権に任すのが時流ではないかなと。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 そこなんです。

○山陰中央新報 桝井映志 記者
 もう1つすいません。今回の件で反省点というんですか、1つ気になりましたのが、1つ大山乳業以外の県外の業者が来ることはないであろうという楽観が県にも、市町村にもあったのではないのかなと取材して感じておりまして、入札という方法をとっておる以上、今回のことは可能性として、起きる可能性があるということは予想できたわけですけども、本当にそれが起きた場合に、じゃ、どうするのかとか、それでいいのかっていうところの備えができてなかったのかなということも感じたんですけども。

●知事
 これは、先程申しました不思議な構図になっていまして、国が牛乳の供給計画をまとめる。それで、その積み上げとして47都道府県が計画を作る。それを市町村の牛乳、本当にナンセンスだと思いますけども、牛乳の本数をまとめあげて、そういう報告を毎年、これやっているわけです。それで、その仕組みの中で、責任感が分散をされて正直もたれ合いなんだと思うんですね。そういう中で、毎年これで上手くいっていたんだからまあまあいいかというような意識はあったかもしれません。ただ、今回顕在化したんで、この機会に、やはり見直すべきことは見直す必要があるんではないかなと思います

○NHK 植田治男 記者
 すみません。そういう意味で言うと、その結局このボイコットの着地点というか、知事が目指されるところというのは、やはり県内のそういう随意契約を実現するというところにあるのか、国の制度というか、だから、農水省が決めたその通達自体をひっくり返すというか、そういったところまで目指されているのか、そのあたりは。

●知事
 2つ着地点はあるかと思います。1つは農林水産省の方で考えを改めてくれるんだったらば我々も、おかしな制度だと思いますけども、農林水産省の体面としてこの通達をどうしても強制したいということであれば、通達の中身を変えるんであれば従ったかたちにするというような落ちも1つはあるかもしれません。ただ、本来は、ほんとの落ちとしては、やはりそういう市町村が自分のところの子どもの教育ために給食を調達するわけでありまして、それは普通のルールで、地方自治法に基づいた普通のルールでやればそれで終わりではないかなというふうに思います。非常に調達しにくい時代だったら別かもしれませんけども、現状に置いては合理性が乏しい制度になっているんじゃないかなと、そこはそういうふうに思います。

○NHK 植田治男 記者
 ちょっとこれ教えていただきたいんですけども、通達に従わなかった場合の法的な部分の問題というのは、それはどういうふうに考えられるんでしょう。

●知事
 厳密には、酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律という昭和29年の法律があります。これに書いてあることはプログラム規定〔法的拘束力を持たない努力目標〕だと思います。従いまして、これはちょっと農林水産省は絶対そんなこと言わないと思いますが、ただ、法律に、じゃあ我々が仮に随〔意〕契〔約〕でやったという市町村が出てきた、相次いだとしても牛乳の総量が確保されておれば、おそらく法律違反とまで言い切れないんじゃないかなと私は思います。ただ、通達には文言上抵触すると思います。農林省は通達があるんで、これが法律の解釈だとおっしゃっておられるんですが、そこの細かいところまで、例えば競争で入札しなければならないというところまで法律に書いてあるとはちょっと読めません。これは我々の主張であります。だから、ここは見解の相違があるんですが、だから私どもとしては、いざ、もう最後はボイコットをしてしまっても法律違反という責めは受けないんではないかなというふうな思いです。これはちょっとよく、ちょっと議論しなきゃいけない。

○日本経済新聞 舩越純一 記者
 ボイコットについて、じゃあそれは法的な根拠があるというものではないということなんですか。

●知事
 法律は確かにある。だから、昭和29年に作られた古い法律があります。それは国としてその給食の牛乳生産を担保しようと、

○日本経済新聞 舩越純一 記者
 いや、それは今のお話でだいたい理解しているつもりですけども、そのボイコットを呼びかけるというところでEPAですとか、TPPというお話を出されましたので、それは日本国内の生乳業者は等しく受ける打撃という論理構成になると思うんですね。そうなったときに、その地域の生乳業者を守りたいというところを言える法的な根拠というものがないと行政マンは動きにくいのかなと思った次第です。

●知事
 実はこの事態が表面化していろんな議論が起きています。もちろん最後は子どもたちの幸せのためというところでは県民皆一致するんだと思いますけども、ただ、地域の牛乳、結構おいしい牛乳なんですね、この白バラ牛乳。ですから、ブランド牛乳として全国でも名が通っているんですが、ブランド牛乳であるがゆえに若干こうプレミアム〔付加価値〕が乗るんですね、東京でも大阪でも。それが県内でも当然ながら、生産コストもえらいかかっていますので乗るということであります。それを地元で飲もうということになりますと、入札の仕組みでうまくいくかどうかというのは、これはやってみなければ分からない。随〔意〕契〔約〕であれば必ず乗ることになります。ここは地方自治法の原則に忠実に従えば、単にその調達をすればいいわけですよね。それで、その調達をするときに適正な手続きを踏んでいけば、随意契約も例外的やり方として認められている分もありますし、特に問題が生じるものでもないだろうと思います。もちろん、そのロット〔商品単位〕がえらい巨額になって、GATT〔関税及び貿易に関する一般協定〕の関係が出てきて、競争入札にしなければ国際的なルール違反だというような場合は別ですけども、たかだか牛乳を買うだけでありますから、その辺は地元の農家から人参を買うのと同じように買えない話ではないと思います。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 すみません。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 ちょっと教えていただけますか。昭和29年のその法律というのは、牛乳の総量確保を求めているものですよね。子どもたちに配る、配るというか飲ませるための総量確保。それで、鳥取県には県の産業振興条例というのがあって、例えば今回の牛乳でもそうなんですけれども、県産品を優先して使いなさいってものがあるじゃないですか。それは対抗的措置、措置という言い方をしたらおかしいのかな、対抗的に使うというわけにはいかないものなんですか。

●知事
 いえ、私どもの主張の根拠にはなると思います。だから、鳥取県としてこういう条例もあるんだから、我々にはその義務が、厳密な法的義務ではないかもしれませんが、できるだけ地産地消でやるということが議会から義務づけられていますので、我々としてはそのルールを優先したと。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 総量確保が法律であるとすれば、違反するわけではないですよね。

●知事
 と私は思います。先程申しましたように、我々はそういう主張をしているんですが、ただあちらは、解釈としてその通達が全てだと。

○山陰中央新報 太田満明 記者
 ですよね。通達ってものは100%従わなければならないものではないというふうに理解しておるんですが、それもそう言っちゃいけないのかもしれませんけど、なんかそんなに、こういうことと言う程でもなくって、産業振興条例に従いますよという話なのかなという。

●知事
 ただ、農林省からすれば、47都道府県全部それでやっているんですよ。それで、鳥取県だけそれをやらないというのは、たぶんちょっとね、許し難いという反応もあるかもしれません。ただ、我々の方の事情も分かってもらいたい。そういう意味で、あえて、もしこのまま制度が続くのであればボイコットせざるを得ない状況も念頭に置きたいということです。

○山陰中央新報 桝井映之 記者
 すみません。知事のそういう思いというのは、今後また何らかのかたちで農水省に伝えるということになりますか。

●知事
 農林水産省に申し入れをすべく、今、大山乳業さんとも協調をしながら、今話をしております。

○読売新聞 加藤あかね 記者
 牛乳のことにちょっと関連して、地元の生乳業者を守るという点では非常に賛成なんですけれども、その上でなんですが、農水省にその例外規定を、例えば北海道とかであれば、大手業者とかも地元になったりするわけですよね。その全国的なことを考えたときに、農水省に1県1業者しかないようなところの例外規定を求めるのか、それともそもそもの入札規定というもの自体を変えてほしいということをおっしゃりたいのか、県として地元のTPPも視野に入れた中で、業者を守るという視点に立ったところで、何を変えてほしいということを国に求めたいんでしょうか。

●知事
 いろんな手法はあると思うんですね、先程申しましたように、例えば、向こうの通達行政おかしいとは思いますけども、これが変わって我々が容認するならば、向こうの面子もあるでしょうから、それに従った顔をしてやっていくという手もあるかもしれませんけども、本音で言えば、要は好きにやらせてくれと、これは地方自治の問題だと思いますので、牛乳を、どういう牛乳を地元の子どもたちが学校で飲むか、これは好きに決めさせてくれと。それさえ担保できれば、どんな法形式でも最後は従っていく用意があります。

○読売新聞 加藤あかね 記者
 それは、例えば競争の原理というところでもいくと、今回牛乳だけのことを言われているのか、例えば、魚にしても、肉にしても、地元の生鮮食料品を守ってほしいという一次産業の農家っていうのはいらっしゃると思いますし、給食でもっと使ってほしいという声もあるとは思うんですけれども、あくまで知事が、今、地元の生産農家を守りたいと言っている話というのは、牛乳に限った話で随契であったり、要は他県の業者を排除するという言い方は厳しいのかもしれないんですけれども、どういう考え方なのか、まずその点はどうでしょうか。

●知事
 だから、この牛乳だけがそういう法律があって、それで、それに私から言うと過剰なまでの規制が通達にのかっているんです。つまり法律には随契だとか何もないんですよ。想像していただければいいと思うんですが、昭和29年ごろですね、どうやって牛乳調達しようかとして奮闘しているときに、法律の中で競争入札によらなければならないと書いてですね、自ら調達の方途を狭めるわけがないわけでありまして、書いてあるのは、牛乳を頑張ってまとめ上げて、子どもたちの給食に供しましょうと、それしか書いてないんですよ。だから、そう意味では、その範囲内であればいいんですけども、ただ、そこから通達が出てきて、その通達の中で農林水産省が独自にルールを作っているわけですね。それで、それが競争入札というルールになっているわけです。こういう分野は牛乳以外にはありません。従いまして、すごく不思議なんです。だから別に他の魚やにんじんやご飯やパンやそういうものと同じように、自由に市町村が自分のところの学校の給食の素材を選んで使えるようにしてあげたら、それだけの話だと思うんですね。だからそういう意味で、他のところについて口出しをする必要全然ないんです。牛乳だけがどうもこういう縛りがあって、そこに全く当事者性のない県が入札をする役割だけを与えられて、通達の中で登場させられているというような状況になっていまして、これは、やれと言われて今まで職員がやってきたんですが、現場感覚としては、そもそも関係ないじゃないかなと、県が入札する必要もないし、市町村があるいは給食センターがやればいいことだと思います。

○日本海新聞 井上昌之 記者
 よろしいですか。県の方で農林水産部さんの方のお仕事というのは、酪農家向けに牧草の確保ですとか、いろいろ施策もしておられますが、これは突き詰めていけばもう1社しかないわけで、大山乳業さんの所属の酪農家さんのための仕事を県庁でしておられると、公金を使ってということなんですけども、それと今回矛盾する結果になったんですね、結局。それで、入札は昨年か今年の初めにあったと思うんですけれども、なぜその知事のところにご報告が遅れたというか、これだけ問題が大きくなる前に改善した方がいいんじゃないかという声が上がらなかったかということについてはどのようにお考えでしょうか。

●知事
 そこは、だからさっきも話が出ましたが、これ責任がなんか妙に分散しているんですね、決定的な責任主体は市町村教〔育〕委〔員会〕です。それで、市町村教委が給食を司るわけでありまして、それでそこが自分で食材を選んでやればいいんですけども、法律と通達があって、市町村教委がまとめ上げたその本数を都道府県教委は足し算をするっていう役割が与えられ、それでその足し算をしたものを分割をして、その業者を決めるという役割がこれ通達の上で県に与えられてやってきたと。ですからその市町村としては県が決めたと言って隠れ蓑になったのかもしれませんが、県からすれば、これ通達で国もやれやれ言っとるし、やっとるわいということで、何かこう責任意識だとか、問題の所在についての何て言いますか、意識の希薄化が、このもたれ合いの構図が通達行政の中で作られたことで生じてしまったのかなあと思います。これは、ただ私どもの職員の名誉のために申し上げれば、最初に大山乳業が1社になるときですね、こうやって1つにまとめ上げられるときにその問題の深刻さは認識していたわけで、農林水産省とも当時から掛けあっているわけでありますし、さっきお話があったパスチャライズ牛乳については隋契でいいというところを引き出したりしてきているのも事実なんですけども、そういうことで一生懸命やっているんですが、とにかく大元は決まっていて、そこから一歩も動くなということにされてしまっていて、それが今の自分がやるべき仕事なのかなというふうに思い込まざるを得ない状況もあったんではないかなと思います。要は責任の所在が、こういう一連の通達行政の中で分散化されてしまって、十分こう意思疎通であるとか、それから問題認識、問題の解決に向かおうという姿勢について、我々行政全体として反省すべき点もあるのかなと思っております。