今回も議会の権限について考えてみましょう。

権限の中には「自律権」があります。
議会が、議会の内部的事項について「自律的に決定し、処理する」権限のことを言います。
いつものようにまずは関係法令から見てみましょう。

まずは地方自治法です。

第百十八条  法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体の議会において行う選挙については、公職選挙法第四十六条第一項及び第四項、第四十七条、第四十八条、第六十八条第一項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第九十五条の規定を準用する。その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。 -以下略-

第百二十七条  普通地方公共団体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるとき又は第九十二条の二の規定に該当するときは、その職を失う。その被選挙権の有無又は同条の規定に該当するかどうかは、議員が公職選挙法第十一条、第十一条の二若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第二十八条の規定に該当するため被選挙権を有しない場合を除くほか、議会がこれを決定する。この場合においては、出席議員の三分の二以上の多数によりこれを決定しなければならない。  -以下略-


これらは自律権の中において「決定権」ということで言えるでしょう。
議会が行った選挙の投票の効力に関する異議に対する「決定権」と、議員の資格の「決定権」です。これらの決定に対して不服がある場合は、訴訟に訴える途が開かれています。それぞれの条文のあとに定めがあります。

第百十八条
○5  第一項の規定による決定に不服がある者は、決定があつた日から二十一日以内に、都道府県にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事に審査を申し立て、その裁決に不服がある者は、裁決のあつた日から二十一日以内に裁判所に出訴することができる。
第百二十七条
○4  第百十八条第五項及び第六項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。


次に狭義の自律権になると思われますが、3つの種類の自律権を考えてみましょう。

第百三条  普通地方公共団体の議会は、議員の中から議長及び副議長一人を選挙しなければならない。
○2  議長及び副議長の任期は、議員の任期による。
第百九条  普通地方公共団体の議会は、条例で常任委員会を置くことができる。  -以下略-


これらは議会の内部組織について、その設置や構成員の選任等を行う議会の権限です。

第百二十条  普通地方公共団体の議会は、会議規則を設けなければならない。

これは議事手続き等の議会の運営に関する内部規則を定める議会の権限です。

第百三十四条  普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。
○2  懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない。


これは議会において適正に議事が進行され、その意思決定が行われるよう、その運営や秩序について遵守されるべき規律を保持するための議会の権限です。

さて9月7日に議員の発議による条例案の提案があり、その提案説明と質疑が行われました。このことについて「提案の権利」に基づき条例案提案をしているという発言がありました。一方で、この提案は、現在特別委員会を設置して協議中の案件であり、この段階で条例案として提案することはいかがなものかという発言もありました。

その前の段階の議会運営員会で、議会運営委員長として私の方から「いかがなものであるか」という「異例の発言」をさせていただきましたが、翻意はいただけませんでした。

一部の議員からは「懲罰事案である」との発言も出てきました。
さて、懲罰の制度はどうしてあるのか考えてみましょう。(自治日報社「議会運営の実際」より引用)

議員はそのすべてが住民から選挙された良識ある人とされていますが、議会での議論が活発になり、特に会派間、議員間で対立しますと、不用意な発言だけでなく相手を誹謗中傷する発言、名誉を傷つける発言、更には行動をすることがあります。このような言動は本意でなくても議会の秩序を乱すものですから、議会の品位と規律を保つため一定の制裁を科す必要があります。これが議会の自律権に基づく懲罰です。
議員は制度上は良識ある人と擬制されていますが、実際の議会運営面では理性を越えた感情が表面化しかねませんので、懲罰を制度化することにより、これを抑制するものです。この意味で懲罰は秩序違反に対する制裁というべきものです。


船橋市議会は議会設置以降、議会運営のルール化や、議会運営の「理屈」とでもいうのでしょうか、延べ人数にしたら多くの議員が議論を重ねてきました。議会は、憲法第93条に定められた機関でありますから、その慣例、慣習、慣行も含めての運用解釈、運営解釈もあるものです。それらを、無視して「私たちにはその権利があるのです」と言われてしまうと、「秩序違反」であると言われても仕方がないことかもしれません。これらは「私たちは知らなかった」で済む話ではありませんし。どうしたものでしょう。