さて前回は議会の権限のうち「議決権」について書かせていただきました。
今回は「選挙権」についてです。

議会の権限における選挙権とは、議員の集合的な意思によって特定の地位に就くべき者を選び決定する権利をいいます。

まずは地方自治法からです。
まず、議会の内部組織に関するものとして、正副議長の選挙と仮議長の選挙があります。それが下記の条文に定められています。

第百三条  普通地方公共団体の議会は、議員の中から議長及び副議長一人を選挙しなければならない。
-以下略-
第百六条  普通地方公共団体の議会の議長に事故があるとき、又は議長が欠けたときは、副議長が議長の職務を行う。
○2  議長及び副議長にともに事故があるときは、仮議長を選挙し、議長の職務を行わせる。
-以下略-


次に、執行機関の構成員に関するものとして選挙管理委員及びその補充員の選挙と選挙管理委員の臨時補充員の補欠選挙などがあります。

第百八十二条  選挙管理委員は、選挙権を有する者で、人格が高潔で、政治及び選挙に関し公正な識見を有するもののうちから、普通地方公共団体の議会においてこれを選挙する。
○2  議会は、前項の規定による選挙を行う場合においては、同時に、同項に規定する者のうちから委員と同数の補充員を選挙しなければならない。補充員がすべてなくなったときも、また、同様とする。
○3  委員中に欠員があるときは、選挙管理委員会の委員長は、補充員の中からこれを補欠する。その順序は、選挙の時が異なるときは選挙の前後により、選挙の時が同時であるときは得票数により、得票数が同じであるときはくじにより、これを定める。
-以下略-


また、地方自治法施行令で、

第百三十五条  地方自治法第百八十二条第三項 の規定により当該補充員で選挙管理委員の補欠を行えば同一の政党その他の政治団体に属する委員の数が二人以上となるときは、その者は、その場合における同項の規定の適用については、これを補充員でないものとみなす。
○2  補充員がすべて前項の規定に該当するときは、普通地方公共団体の議会は、地方自治法第百八十二条第二項の規定にかかわらず、臨時に補充員の補欠選挙を行わなければならない。


第百三十六条  地方自治法第百八十九条第三項の規定により当該補充員を臨時に選挙管理委員に充てれば同一の政党その他の政治団体に属する委員の数が二人以上となるときは、その者は、その場合における同項 の規定の適用については、これを補充員でない者とみなす。
○2  前条第二項の規定は、補充員がすべて前項の規定に該当する場合にこれを準用する。


等々となっています。
そして大切なことは、これらの議会が行う「選挙」は、公職選挙法の準用をすべき部分が多くあります。

第百十八条  法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体の議会において行う選挙については、公職選挙法第四十六条第一項 及び第四項 、第四十七条、第四十八条、第六十八条第一項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第九十五条の規定を準用する。その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。
○2  議会は、議員中に異議がないときは、前項の選挙につき指名推選の方法を用いることができる。
○3  指名推選の方法を用いる場合においては、被指名人を以て当選人と定めるべきかどうかを会議に諮り、議員の全員の同意があつた者を以て当選人とする。
○4  一の選挙を以て二人以上を選挙する場合においては、被指名人を区分して前項の規定を適用してはならない。
○5  第一項の規定による決定に不服がある者は、決定があつた日から二十一日以内に、都道府県にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事に審査を申し立て、その裁決に不服がある者は、裁決のあつた日から二十一日以内に裁判所に出訴することができる。
○6  第一項の規定による決定は、文書を以てし、その理由を附けてこれを本人に交付しなければならない。


さて準用するところですが、公職選挙法です。

(投票の記載事項及び投函)
第四十六条  衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙の投票については、選挙人は、投票所において、投票用紙に当該選挙の公職の候補者一人の氏名を自書して、これを投票箱に入れなければならない。
-以下中略-
4  投票用紙には、選挙人の氏名を記載してはならない。


単記無記名投票をするということです。

第四十七条  投票に関する記載については、政令で定める点字は文字とみなす。

点字投票を可とすることです。

第四十八条  身体の故障又は文盲により、自ら当該選挙の公職の候補者の氏名(衆議院比例代表選出議員の選挙の投票にあっては衆議院名簿届出政党等の名称及び略称、参議院比例代表選出議員の選挙の投票にあっては公職の候補者たる参議院名簿登載者の氏名又は参議院名簿届出政党等の名称及び略称)を記載することができない選挙人は、第四十六条第一項から第三項まで、第五十条第四項及び第五項並びに第六十八条の規定にかかわらず、投票管理者に申請し、代理投票をさせることができる。
2  前項の規定による申請があつた場合においては、投票管理者は、投票立会人の意見を聴いて、当該選挙人の投票を補助すべき者二人をその承諾を得て定め、その一人に投票の記載をする場所において投票用紙に当該選挙人が指示する公職の候補者(公職の候補者たる参議院名簿登載者を含む。)一人の氏名、一の衆議院名簿届出政党等の名称若しくは略称又は一の参議院名簿届出政党等の名称若しくは略称を記載させ、他の一人をこれに立ち会わせなければならない。
3  前二項の場合において必要な事項は、政令で定める。


代理投票を可とすることです。

第六十八条  衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
一  所定の用紙を用いないもの
二  公職の候補者でない者又は第八十六条の八第一項、第八十七条第一項若しくは第二項、第八十七条の二、第八十八条、第二百五十一条の二若しくは第二百五十一条の三の規定により公職の候補者となることができない者の氏名を記載したもの
三  第八十六条第一項若しくは第八項の規定による届出をした政党その他の政治団体で同条第一項各号のいずれにも該当していなかつたものの当該届出に係る候補者、同条第九項後段の規定による届出に係る候補者又は第八十七条第三項の規定に違反してされた届出に係る候補者の氏名を記載したもの
四  一投票中に二人以上の公職の候補者の氏名を記載したもの
五  被選挙権のない公職の候補者の氏名を記載したもの
六  公職の候補者の氏名のほか、他事を記載したもの。ただし、職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。
七  公職の候補者の氏名を自書しないもの
八  公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの


無効投票の考え方です。

第九十五条  衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、有効投票の最多数を得た者をもつて当選人とする。ただし、次の各号の区分による得票がなければならない。
-以下中略-
三  地方公共団体の議会の議員の選挙
当該選挙区内の議員の定数(選挙区がないときは、議員の定数)をもつて有効投票の総数を除して得た数の四分の一以上の得票
-以下略-


有効投票の考え方です。

そして、この地方自治法118条をじっくりお読み下さい。
議会が行う選挙の方法は、「公職選挙法第四十六条第一項及び第四項、第四十七条、第四十八条、第六十八条第一項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第九十五条の規定を準用する。」と、この方法以外は行ってはならないと解されます。

何を言いたいか?
よく、議長選挙を立候補制で行いましょうという提案があったり、あるいは、実際に行っている議会もあるようです。それって法令違反じゃない?ってことです。

ここには引用しませんが、公職選挙法86条の4に「衆議院議員又は参議院比例代表選出議員の選挙以外の選挙における候補者の立候補の届出等」についての条文があります。この部分からも議長選挙の立候補制とは実施することに疑義があります。