私のもとでインターン生として研修をした学生さんが、授業のレポートを出すためにと、先日議会の傍聴に来ました。その後、少しお話をした後、メールをくださいましたので、そのやりとりをご覧ください。

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長谷川 : こんばんは。

学生くん : 本日はお忙しい中お時間を取って質問に答えてくださり、ありがとうございました。

長谷川 : こちらこそ、元気に頑張っている姿を拝見し、うれしく思いました。

学生くん : 『地方自治法 要説』は第6次改訂版(2009年5月出版)ですが、大学の図書館に蔵書があり、『日経グローカル』は大学図書館、地元の図書館、どちらにも蔵書がありませんでした。とりあえず『地方自治法 要説』を借りてみようと思います。

長谷川 : 日本経済新聞出版社 刊 
地方議会改革の実像―あなたのまちをランキング  日経グローカル編も参考図書としてお勧めします。ただし、薄っぺらい、上っ面の事象を見て改革度が高いとか言っている不思議な本です。

変革期の地方自治法 (岩波新書)/岩波書店   兼子 仁 著
地方議会の底力/ぎょうせい   野村 稔 著
地方議会への26の処方箋 ― 分権改革のフロントランナーとなるために/ぎょうせい   野村 稔 著

もおもしろいかもしれません。

野村先生は議会の側の理屈のわかる先生で、言ってみれば議会改革否定派に近い従来議会保守派だと思います。兼子先生はむしろ逆で議会改革派で、旧態の議会否定派ではないかと思います。

学生くん : 学校の課題に関連しまして、一部お聞きするのを忘れていたのですが、①本会議において一部対面式で行われたのは何故か(議会の内容に影響しないのであまり重要ではないかもしれませんが)。

長谷川 : 三定例会くらい前から行っています。これもいわゆるパフォーマンスの世界で、これが議会の運営上何かのメリットがあるかと言うとまったくありません。ほんの少し言えることは、答弁者の移動時間が短縮されたことかもしれません。待機席を設けたことによるものです。

本来の対面式の導入の際の論点は、「質問は誰に対して行うか?」によります。
従来型(国会と同形式)では、自分たちの仲間(議員)に向かって質問するわけでもないのに、向きは議員を向いているわけです。国会でも党首討論をはじめとする各種委員会は対面になっていますね。そういう流行もあり、船橋市議会においては「試行」をしているところです。

これらにより問題点の抽出をし、最終的にどうなるかは不明ですが、結論に導く議会運営委員会の議論が予定されています。その場合は、議場内のハード面での改修なども本格的に行う予定です。

先般、千代田区議会を視察しました。千代田区議会は議席、理事者席、議長席などすべてが可動式でした。概ね5年前の庁舎建設によるものです。

学生くん : ②二元代表制において、執行機関に対して議会(議員)が取るべき関係性、接し方は一元代表性におけるそれと異なるのか。

長谷川二元代表制である地方議会はそもそも本来の意味からも、その理想型(本来型)で発展(進展)してきたのであれば、こういう質問はあり得ないですよね(笑)。
俗説的言い方で地方議会は「大統領制」と言われることがありますが、そのことが表すように、そもそも地方議会の議会側が、その権能を充分に発揮していなかったことにまずは問題があると思います。

それは、国会や都道府県議会などよりも市区町村議会のほうが「住民」に直結していることにより、議会側が非常に弱い立場にあることだと思います。それにより、独裁大統領制みたいな状況でもあったのです。

例で示しますが、議員が地元の道路補修を住民から要望された。単年度予算主義ではありますが、予備費や予算の余剰分で、現年度(要望後速やかに)に補修をしてもらうためには、執行機関との関係が良くなければ、そんな依頼ごとは受けてもらえません。これは人と人の関係で物事が決まってはいけないのですが、その程度の話でもあるということになります。

大きな制度をいじるような議員は少なく、多くの議員が身の回りの生活の中での要望ごとの取扱いばかりです。議会質問も同様ですね。かなりレベルの低い質問が多い感じです。なぜなら、イコール票への直結ですからね。ですから、ある意味機能不全に陥っていると言っても過言ではありません。

ということはどういうことか?
票へつながる市民要望である些末な事案をスムースにやり遂げるために、執行機関に対しては厳しいチェックができなくなり、「なあなあの関係」ができてしまい、チェックをしたとしても「手打ち」「落としどころ」の模索があるものとなってしまいます。

そのような状況では二元代表制が機能するわけもなく、「看板倒れ」というか、選挙に行っていただいている有権者には申し訳ない状況だと思います。答えになっているかどうかわかりませんが、まあ、そういうことです。

学生くん③政策立案能力が必ずしも高くないパフォーマンス型の党(会派)の体質を変えさせることはできないのか(選挙との関係も含めて)疑問に思いました。恐縮ですが、再度質問させていただきます。

長谷川これは、「ポリティカルリテラシー」とでもいうのでしょうか、政治に対する意識、政治に対する知識の深さなど有権者側の問題でもあると思います。パフォーマンスにすぎないか? 本物か? を見極める力が有権者側にあるかどうかでもあると思います。

中村実議員をご存知ですよね。彼は、初当選前数ヶ月前から現在まで早朝からの駅頭活動(演説)を欠かしていません。また、西尾憲一県議(船橋市選挙区選出)も同様です。また現総理の野田佳彦内閣総理大臣もまったく同様です。

彼らは、選挙を行うごとに得票数を伸ばしたり、固いものにしていっています。(私は後援者にいつも叱られます。同様のことをしっかりやれ、と)
しかし、その真摯な姿勢ということでそのこと(1年365日休みなく駅頭で演説をしたり、政策チラシを配布したりすることを継続している)を評価をされていることって、議員として果たして喜ぶべきことなのでしょうか。少なくとも私自身の考え方では、そこをYesと答えるものはまったく存在しません。

中村議員は身近にその行動やお人柄を感じたでしょうから、コメントはしません。彼の場合はかなりの高得票で当選していますが、たぶん当選ラインにちょっと余裕かなというくらいの部分がベタな票と言うか、お人柄や地元での腰の低さなどが票になっていると思います。

彼の場合は、その政治思想、信条などはむしろかなり偏っており、その世界では第一人者的部分がありますが、万人受けするかというと「否」だと思います。しかし、その姿勢はかなり頑固で強固でありますから、政治家として評価すべき部分であると思います。

西尾県議も見た目のお人柄は良い感じです。ただし、私自身は政策やその政治思想に一貫性や信念などは微塵も感じられません。何のために議員をやっていらっしゃるかまったく理解不能ですが、しっかり、確実に当選するのは駅頭活動と空いてる時間の戸別訪問だと言われています。ということは、簡単にいうと「選挙」のための活動を選挙と選挙の間にしているということです。

野田総理に関しても同じです。県議の後に衆議院議員になりましたが、「駅頭」と「演説のうまさ」が武器のようです。衆議院議員になってから長年野党でありました。インターンで来ていた頃話したかもしれませんが、国においての野党と与党の差は雲泥の差です。

私も何度かのぞかせていただいたことがありますが、自民党政権時代、自民党議員は朝の8時過ぎには自民党本部で毎日なんらかの会議に出席して、関係省庁の官僚からの報告、説明、などを受け、議論をし、その後に国会の仕事をこなし、お昼からも基本的には自民党本部でまた官僚からの報告、説明、などを受け、議論をしていました。朝も昼も食事をしながらという超ハードスケジュールです。会議と会議の合間のちょっとの時間も官僚のレクチャーを受けたり、議論をしたりです。

ところが、総理が野党の頃は当然でありますが、官僚には相手にされないし、党の綱領も何もないから、政策の方向付けもできず、カウンターパートである官僚も与党と野党では職位が違う状況でした。言ってみれば「政策に関われない」のが野党の悲しい現実です。ですから「想像だけで考えたマニフェスト」が現実が見えてくると、中途半端にお利口な総理などは、官僚の言いなりになって平気で反古にしてしまうのです。

同時におわかりいただけると思いますが、駅頭に立って活動する時間的余裕がいっぱいあるのです。しかしながら、そういう現実は一般的な有権者の皆さんには見えてきません。

そうなると、顔の見えない与党議員よりも、ヒマで目立とうパフォーマンスをする議員の方が、「よくやっている」となるのです。そして得票がそのようなパフォーマンスによるものであると想像できる限りはなくならないでしょうね。