私は、志方俊之閣下のご講演を聞かせていただいてから、盲目的かもしれませんが、全面的に100%支持する者の一人です。
今回も下記の記述を100%支持します。
憂国の士。これぞ国士であります!!

MSN産経ニュースより

船橋市議会 勝手にe-報告 (長谷川大のe-通信簿)-sankei

【正論】帝京大学教授・志方俊之 ミサイル防衛が試されるとき
2009.4.1 04:47
≪「国民の目線で…」とは≫
与野党を問わず、政治家はよく「国民の目線で」とか「生活者の目線で」という表現をする。だが政治家が目線を下げるという言葉に、高慢さを裏返しにしたような響きがあり、どこかおかしい。
政治家は、常に国民と国家のため、より広い視野と遠大な展望をもって政策を練り実行するのが義務なのだから、「国民の目線で」は当然のことだ。いまさら言わずもがなの言葉を口にしないでほしい。政治献金問題で「国民の目線で」とか「政治を国民の手に」などと唱えた政治家こそ胡散(うさん)臭いと感じる。
さて「国民の目線で」の逆は「国家の目線で」だが、それがないと国として立ち行かない。個人や企業、自治体がいかに努力しても、自分たちではどうにもならないことがある。「国政」が国政である所以(ゆえん)は、まさにそれだ。その国政の基本に憲法があることは言をまたない。
憲法に、すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を…とあり、この権利を保障するため、義務教育や保険年金、弱者を救済するセーフティーネット整備など国の経済・財政、金融政策がある。原理主義や専制独裁の国家は別として、社会や経済分野の政策は修正ややり直し、妥協が可能で、短期的に収斂(しゅうれん)するものだ。
しかし国政の核心である安全保障にかかわる「外交」や「防衛」はそうはいかない。短期的で、対症療法的な施策では対応できないのである。経済や景気浮揚の緊急対策のように修正ややり直しがきかないところで、動いている。
≪経済・金融と違う長期戦略≫
北朝鮮の弾道ミサイル発射が大きい問題となっている。今回、わが国が迎撃から国連安全保障理事会への持ち込み、さらには制裁強化までの幅広い外交・防衛の選択肢を持っているのも、自衛隊に対弾道ミサイル能力を持たせることに至った戦略的判断と長期的な取り組みがあったからだ。
安全保障にかかわる外交と防衛の問題は、長期的かつ戦略的な対応を必要とする好例だろう。時期と方向を誤れば、その結果は取り返しのつかないものとなる。
ミサイルをミサイルで撃ち落とす専守防衛的な装備体系の整備は、高度な技術と莫大(ばくだい)な費用と長い年月を必要とする。将来の脅威を予測して戦略を定め、技術の開発、装備の取得、要員の養成、部隊の訓練、法改正(自衛隊法第82条の2の破壊措置命令)を積み重ねて初めて成り立っている。
現在、自衛隊が持つ対弾道ミサイル能力はいまだ完成されたものではないが、早い時期に戦略を定め営々と整備してきたからこそ、いま何とか迎撃という選択肢を持てるようになったのである。長期間にわたる営々とした積み上げがなかったら、弾道ミサイルの脅威を目の前にして国家として対応する手段を持ち得なかった。
国民はただおびえ、無力感や敗北意識にとらわれ、国としてはすべてを米軍に依存するしかなかったであろう。
ミサイル防衛能力の整備は、経済、金融のように2年から数年間で回復させられる短期、中期的取り組みとはわけが違うのだ。
≪安保を政争の具にするな≫
外交と防衛が表裏一体のものであることは、海上自衛隊のソマリア沖派遣でも分かる。年間約2000隻の日本関係の船舶が、アデン湾周辺を通過していることを考えれば、同海域の安全がわが国にとって死活的な国益である。
この地域の安全を維持する国際的活動にわが国が参加すべきことは、昨年からはっきり分かっていた。ところが国会は経済の緊急対策一本ヤリで、海賊対策法案の整備は遅れに遅れた。
この海域では、すでに約20カ国の海軍艦艇が海賊掃討の活動をしている。ところが、わが国は先日、ようやく2隻の護衛艦を見切り出航させた。これは、日本に関係する船舶しか護衛できない「海上警備行動」を取りあえず発令したものである。独立した意思を持つ国家として、あまりに腰が引けたやり方である。
海賊対策のための法案が国会に提出されているが、民主党が政局がらみでこれを人質にとるようなことがないことを訴えたい。もしも非現実的な修正案や対案を示して成立を先延ばしするようであれば、政権交代を口にできる政党とはいえない。派遣された部隊指揮官が現場で困惑することがないよう、明確な法律を一刻も早く整えることこそが真の文民統制であり、政治の責任である。
国会では、海上自衛隊の艦艇ではなく海上保安庁の巡視船を派遣すべきだと主張している政党もあるようだ。その場合は海保の機能と能力強化を盛り込んだ関連法案を付帯させなければならない。
ミサイル防衛もソマリア海域での海賊対策も、国際貢献ではなく自国の安全に直結した国政の最重要任務であることを政治家も国民も認識すべきだ。国際社会とリスクを分担できないようでは、国連安保理の常任理事国に手を挙げることなど考えないことだ。(しかた としゆき)