私が大学を卒業して、株式会社船橋ヘルスセンター(現在のららぽーとマネジメント株式会社)に入社したのが昭和59年だったと思います。当時の大先輩の方にお借りして読んだのがこの本でした。できれば、後輩の諸君や、船橋市の関係者の皆様に歴史の一端を知っていただきたいという思いから、ここに残させていただくことにします。

 

********************************************************************************


丹澤善利自伝より

 

 ボーリング センター

 

篠原 福島君に食いものの話をさせると、どこまでいってもとめどなく、ウソチクを傾けちゃうから、このへんでボーリングの話を聞こうじゃないか。健全スポーツで腹ごなしだ。

 

福島 おっと待った。実はそのボーリングも、おれの領分なんだが、あんまりまぜっかえすと、ボーリング・エチケットに反するからやめとくよ。

 

篠原 ボーリングにもエチケットがあるの。

 

福島 あるさ、大ありさ。たとえば、他人のボールを無断で使ってはならないとか、ファルラインを守って、ロフトしないとか、二人が並んだときは、右手にいる人に、先に投げさせるとか、求められないのに、進言してはならないとかってね。

 

小林 宇都宮の旦那も、なかなかすみにおけないんだなあ、ところでこのスポーツは、あの三角形に並べてあるピンを、二球で倒さなければならない。二球目で残すと失格するときいたが、あれにも玉突きのような力学的な原理があるんだろうか。

 

福島 大いにあるようだな。それはボールの打ち込み場所によって、倒れたり残ったりするからそう思うのだが、あのピンは全部で十本だろう、それが最前列が一本、次の列が二本、三列目が三本、四列目が四本になっているから、全形では三角形のさかさまなんだ。だからその頂点である、前列の一本を覗えばよさそうなものだが、実は頂点をねらうと必ず残る。そこで右か左かにちょいと外すと、よく倒れるのだから、あるいは多少は、玉突きと共通したところもあるんじゃないかな。

 

小林 社長さん、これはよほどかかったと思いますが、ここの特長と、採算面の話といったことをきかせてくれませんか。

 

丹沢 そうですねえ、ご覧の通り冷暖房と、高級レストランつきの、デラックスな設備ですから、総工費では三億円近くかかりましたが、その特長といえば、アメリカの自動ピンスポッターを採用したことなんです。記録もコントローラーで、自動的に示されますから、一点も間違いがありません。

 これには前に、苦い経験があるのですが、かつて明治神宮に、ボーリング・センターができたとき、まだピンスポッターが輸入されない時分でしたから、ピンを建てるのに、たった十五レーンの設備に、七十人からの人を使いました。これではもちろん、採算がとれません。そこで入場料をうんと高くとったから、ボーリングは高くつく、賛沢な遊びだというように、宣伝されてしまったのですが、うちでは倍の三十レーンを、七人でやっていますが、全部機械がやってくれますから、この七人も、調整とか、整備とかの外は、ほとんど舞台裏で本を読んでいる有様です。

 

小林 それで入場料はどのくらいとるのです。

 

丹沢 ウィクデーは、朝十時から五時まで百八十円、土・日・祭は二百三十円、学生は二十円割引にしています。

 

小林 そんな安い料金で成り立つものですかねえ。

 

丹沢 ええ、計画では毎日一レーンが、十時間稼働すれば、三年間で元利とも、消却できる見込みなんです。ところが開業してみると、三十レーンでも、まだ足りなくなりましたから、仕方がないから、営業時間を延長して、やっと間に合わしているしまつです。つまり平日を十二時まで、土・日・休を午前二時までにしているのですが、ボーリング熱の盛んなこと、全く驚くべきものですねえ。

 

篠原 ここでは若い人々の恋愛とか、賭け競技とか、つまり弊害的なことはありませんか。

 

丹沢 さあ、センターの中では殆んどありません。やはりムードの関係でしょう。賭けごとの方は、外人さんにはちょいちょいあるようですが、日本人の方は禁じているせいか、あまりないようです。外人さんの賭けごとは、日常茶飯事ですから、賭けのない生活なんて、彼らには考えられないことなんです。ビールでも酒でも、賭けないで飲むなんてことないということですが……。