<MSN産経ニュースより>


sankei

【溶けゆく日本人】蔓延するミーイズム(2)“自子中心”の保護者
2008.2.5 08:33
■不安が生み続ける連鎖
大阪府内の閑静な住宅街近くの保育園で、5歳の女の子を迎えに来た父親が、同じクラスの男の子を押し倒し、蹴(け)飛ばす“事件”が起きた。
ことの次第はこうだ。仕事が早く終わった父親が夕方、保育園に来たとき、子供たちは外で遊んでいた。女の子は友人と遊んでいたが、けんかになり泣きだした。それを数人の男の子がからかい始めた。父親はしばらくその様子を見守っていたが、からかいが止まらないため、「しつこいぞ」としかった。
それでいったんは収まったかに見えたが、数分後、まだ泣いている女の子のところに1人の男の子が再び戻ってきて、何か話しかけた。父親はそばにいた保育士に仲裁するよう声をかけたが、保育士の返答があいまいだったため、ついに自制できなくなり、怒鳴りながら男の子を追い回した。最後は「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きながら逃げる男の子への暴行となった。
女の子の家は父子家庭で、父親は仕事から帰ると祖母から毎日のように、「この子は保育園でいじめられているらしい。迎えに行くといつも泣いている」と聞かされ、心配でたまらなかった。そしてこの日、目の前で泣くわが子の姿に逆上したのだという。
保育園では、男の子のけがはたいしたことがなく、保護者も警察に被害届を出したくないとの意向だったことから、父親からの謝罪で解決しようとした。しかし、当の父親は「自分は悪くない」と譲らず、結局、謝罪もないまま卒園を迎えたという。


なんだかなあ~。ですね。


言ったもの勝ち、やったもの勝ちの風潮がはびこる現代社会。兵庫県のある小学校では、こんなエピソードもある。中学受験を控えた6年生の親が「うちの子は塾通いで疲れているので、授業中は寝かせておいて」などと“注文”をつけてきた。「それは間違っている」という教諭の言葉は無視し、ついには「学校の勉強は試験に関係ないから」と子供を通学させなくなったという。
大阪大学大学院人間科学研究科の小野田正利教授は、10年あまり前から、保護者の教育現場への「いちゃもん」(無理難題要求)に関する研究を続けている。これまで小中学校や幼稚園、保育園を対象に行った調査で、教師側から示された「いちゃもん」の事例は1000件以上。
「うちの子は箱入り娘で育てたいから、誰ともけんかしないように念書を書け」(保育園)
「成績が下がったのは授業が悪いせいだ」(中学校)
「運動場でけがをしたのは誰かに押されたせいだ。うちの子は転ばない」(小学校)
「いちゃもん」を言われたときの教師の対応によって、保護者の怒りはますますエスカレートしていく危険性がある。小野田教授は言う。「今の世の中は、こぶしを振り上げやすくなっている。昔もこぶしを振り上げる人はいたが、一方で袖を引っ張ってくれる人もいたのだが…」。保育園で暴行した父親のように、振り上げたこぶしをどう下ろしていいか分からなくなっているのだ。
こうした学校に対する「いちゃもん」の根幹には、自分の子供のことしか考えず、ほかのことはどうでもいいという発想がある。小野田教授は、そんな考え方を「自己中心主義」ならぬ「自子中心主義」と呼んでいる。
「自子中心主義の保護者は、ここ数年で急激に目立ってきた」という。平成17年、関西地区の幼稚園、小中学校、高校、養護学校888校に対して行ったアンケート調査(回答数507校)では、「『無理難題要求』(いちゃもん)が増えているか」との問いに対し、「少し増えている」「非常に増えている」との回答が合わせて80%に上った。また「無理難題と思われる現象が気になり始めた」時期は、「10年ほど前から」が37%、「5年ほど前から」が25%だった。
「自子中心主義」が蔓延(まんえん)する背景には親の不安が隠されている、と小野田教授は指摘する。すなわち、仕事に追われてストレスを抱えている、少子化で「育児を失敗できない」プレッシャーを受け続けるなどの親の姿が浮かんでくるのだ。


私はちょっと違うような気がします。今までの大人というか、今、高齢者といわれる子育てが終わった人たちが、「仕事に追われてストレスを抱えていなかったか?」「育児を失敗できないプレッシャーを受けなかったか?」って思います。
昔から、仕事によるストレスはあるでしょうし、子育てを失敗できないプレッシャーだってあったと思います。ちょっと今回のこの記事は違和感を覚えますね。


教師たちが「いちゃもん」だけに振り回され、ことの本質を見ようと努力しなかった場合、解決も双方が納得できるものではなくなる。いちゃもんをつける親をモンスターペアレントと呼ぶ人もいるが、小野田教授はこの言葉は使わない。人格を否定した言葉だからだ。
小野田教授はトラブルが起こったとき、「まず、話し合おう」と提案している。トラブルは相手がSOSを発し、それをキャッチできた好機と考えれば、「話し合う」ことはできるはずだ。話し合うための力を付け、良識について学ぶためのワークショップも全国で開いている。「本当に子供の気持ちを考え、子供と向きあっている保護者は『自子中心主義』にはならない。良識を逸脱した言動に対して、トラブルを避けるために過剰防衛したり、看過したりすることで、社会全体がおかしくなってくる。そのツケは、子供たちにたまる。子供もはけ口が必要になり、陰湿ないじめなどにつながっていく」
「自子中心」の親が「自己中心」の子供を生む。社会にじわりと広がる悪しき連鎖を断ち切る努力が、大人に求められている。(武部由香)


この部分は大変重要な部分だと思います。より良い方向に向かっていけばよいのですが。実態はどうなんだろうと思いますね。


《メモ》ベネッセ教育研究開発センターが平成17年に行った「義務教育に関する意識調査」の保護者を対象にした項目では、「子供が通う学校に望むこと」として多 かったのは、「子供の学校での様子を保護者に伝える」(96.5%)、「学校の教育方針を保護者に伝える」(93.2%)、「保護者が気軽に質問したり相談できるようにする」(90.2%)などだった。