<MSN産経ニュースより>


sankei

「夜スペ」スタート、特効薬か劇薬か 杉並区立和田中
2008.1.26 20:11
東京都杉並区立和田中学校で進学塾講師による有料授業「夜スペシャル(夜スペ)」が26日、スタートした。自治体などが費用を負担、塾講師が補習などを行う事例は各地で増えているが、成績上位層を対象にした有料授業に都教育委員会からいったん待ったがかかり延期されていた。「ゆとり教育」の失敗で塾に頼らざるを得ない公立校。塾の刺激は学校教育を変える“特効薬”になるか“劇薬”か。(小田博士、村上智博)


実は産経新聞本紙には表になって、少ないながらも、自治体で行っている事例がでています。杉並だけでないのですね。


■塾講師
「学校の授業よりスピーディーだけど、これなら分かる、分かると何度もうなずいた」。参加した2年の金田優季さん(14)は話す。
どんな授業なのか。
この日は英語で、2年約130人のうち男子1人、女子10人が参加。講師は大手進学塾「SAPIX(サピックス)」(東京)からの派遣だ。
午前9時に始まった授業のテーマは「節分」など日本の伝統文化を外国人に説明するもの。
男性講師はまず、「Tで始まりTで終わる、Tがたくさんのものは?」。答えは「teapot(ティーポット)」。
そんな頭の体操の後、文法の説明に入った。
生徒らの反応を見て回り、「1年後には頭も柔らかくなる」「先にできる問題からやるのが鉄則」…。45分授業が休み時間をはさみ3コマで正午ごろまで。最後に講師は自宅での復習法などをアドバイス。大みそかにも授業がある年間計画が配られると生徒の間からは「紅白がみられない」との声も漏れた。
剣道部員の原岳史君(14)は「他の塾に通うより授業料が安く、部活動が終わった後にすぐ参加できるのは魅力。家で勉強するよりはかどる」。授業を見学した女性の教員(23)は「途中でクイズを出したり、雑談を挟んだりと、生徒の側に立った授業で、参考になった」と話した。
参加生徒の保護者代表、金子純代さん(43)は「塾に行かせたい時期だったのでタイミングがよかった。一般の私塾に通うより受講料は安く、経済的で安心して任せられる」と期待を寄せる。


なるほど~。SAPIXの授業が格安で受けられる。これって意外に魅力的って感じるママたちが多いのでは。たぶん、SAPIXそのものに通うようなサービスは受けられないでしょうけど、そのノウハウの一端は享受できるわけですからねえ。


塾と学校の棲み分け。安易にこんなことを言ってはいけないのですが、大手進学塾のデータ解析力や豊富なデータ量(各種情報を含む)は、もう公立学校にはどうにもならないものになってきていると思いますね。そういう意味でも、進学コンサルテーションの部分や、学力分析など公教育で批判を受ける部分は公教育から切り離して、望む保護者、望む子どもたちだけにサービスが提供されるようにすれば良いのかもしれません。


全国学力一斉テストについて、四の五のうるさいことを言っている人たちがいました。そういう人たちはもう切り捨てていく。そうすればよいのではと思うのです。文部科学行政が停滞してしまいますし、そうなると国として大きな損失です。


■「浮きこぼれ」
学校と塾は長い間、互いに批判する対立関係にあったが、生涯学習審議会(当時)が平成11年、連携を促すよう答申、塾の補完的役割を認めた。
ゆとり教育が学力低下の不安を呼んだのと並行し、塾に通う子供は増え、昨年行われた全国学力テスト時のアンケートで、通塾率は小6で45%、中3で60%だ。中3の場合、大都市では66%と高い半面、僻地(へきち)では30%。
また学校現場では「浮きこぼれ」「吹きこぼれ」という言葉がある。学習内容が大幅に減った学校の授業だけでは指導しきれない中上位層のことで、「落ちこぼれ」と逆の意味だ。
塾のない地方では「浮きこぼれ」をどう指導するか課題だ。
茨城県鹿嶋市では塾経営者を市の教育委員会事務局に迎えた。
昨年3月まで学習塾を経営、現在は市教委事務局部長(教育部長)として公立校教員の研修・養成を担当する西川潤さん(60)は「公立校は学力が高い生徒に対しては教師が対応する余裕がない。親や地域の協力に加え、塾も同じ教育機関として学校とともに歩む姿勢を示すことが今後は必要では」と話す。

■賛否
ただ公教育に営利企業の塾が入ることに反対は根強い。中止を都教委に直談判した土屋敬之都議は「公立学校は成績下位層の支援も含め地味な教育が中心だ。企業の論理とは相いれない。教員の尊厳が失われ結局は塾に食いつぶされる。教員の質向上が先決」という。
これに対し、学力問題に詳しい国際医療福祉大の和田秀樹教授は「日本は江戸時代の寺子屋をはじめ民間教育の伝統が根付いている。だからこそ教育に対する公財政支出が世界的に少なくても、学力がかつては世界一だった。家庭環境に関係なく全員が通えるような補助制度を考えるべきだ」と話す。


土屋先生は大学の先輩。民主党ではあるけれども、国家国民を主体に考えていらっしゃる先生ですが、今回ばかりは考え方が違うようです。「教員の質向上が先決」は、日頃から土屋先生のライフワークに近いものがあります。ここの部分はおっしゃるとおりです。でも、時間がないのです。学校現場の現況と、そこにいる子どもたち。喫緊の課題でもあるのです。教員の質の向上も喫緊の課題です。でもあまりにも雑務に追われ過ぎている。現場の教員も疲弊しきっている。従来はひとりで担っていた教員の仕事内容がこなせないほど、本来の教育者としての「考える時間」「きめの細かい指導の時間」「尊厳を守る環境」などなど壊れています。あまりにもひどい話なのです。


和田中「夜スペ」保護者らボランティアの学校支援組織「地域本部」が進学塾と連携し、高校受験を支援する有料の特別授業。平日夜に数学と国語の週3日のコースと、土曜(英語)も加えたコースがあり、月額1万8000~2万4000円。藤原和博校長は民間の「リクルート」出身。


一度、お話を聞いてみたいですね。