下記の記事は私にとっては、衝撃的でもあり、やっぱりなあという気持ちでもあり大変複雑です。一見、外から見たことだけで判断すると間違えてしまう。だからまだうわべだけだろうと思うことも多々あるのです。
が、こと軍事に関しては、意外や意外。けっこう先進的であったり、なめてはいけないことが多いのです。


MSN産経ニュースより

【正論】中国軍事専門家・平松茂雄 海自補給を中国軍が代行?
2007.12.25 02:48
■インド洋でも十分の活動能力
≪30年以上の海上実績≫
日本の海上自衛隊がインド洋での給油活動を停止したことに関連して、中国海軍がこの活動を代替するのではないかとの見方がにわかに出てきた。それに対し、中国海軍の洋上補給能力を過小評価する見方がある。その論議をみていると、中国の軍事力に対する相も変わらぬ無知あるいは過小評価を感じないわけにはいかない。


絶対、過小評価はいけません。民生と軍事がまったく違うのが中国。民生品は安かろう悪かろうはいくらでもあり。しかし軍事に関しては…。


中国海軍の洋上補給活動は近年になって始まったものではなく、30年以上に及ぶ歴史を持っている。1980年5月、中国は南太平洋のフィジー島近くの海域に向けて、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を実施した。
この時、大陸間弾道ミサイルを追跡・誘導する科学観測艦「遠望」号とそれを支援する海洋調査船、サルべージ船、洋上給油艦など6隻の艦艇からなる観測船団が2組編成され、さらに2組の船団を護衛する6隻の「旅大」級ミサイル駆逐艦が随伴した。
観測船団は上海を出港してわが国の沖縄本島と宮古島の間の海域を通って太平洋を縦断し、フィジー島近海海域でミサイル実験を追跡する実験に従事した後、同じ海域を通って上海に帰港した。40余日の航海であったが、その間2隻の洋上給油艦は60余回船団の艦艇に洋上給油したと報じられた。


≪日本側専門家の甘さ≫
当時筆者がこの事実をある海上自衛隊の幹部に話して意見を求めたところ、「中国のやっているのは、補給艦の後部から補給を受ける縦向きのやり方で、あんなのは駄目だ。海上自衛隊では補給艦と受給艦が横に並んで行っている。横向きの補給は高度の技術が必要で、中国海軍にはとても無理」と、言下に切り捨てたのである。
当時筆者は相模湾で海上自衛隊の洋上補給訓練を何回か見学したことがある。大きさが違い、速度の異なる2隻の艦艇が、至近距離で同じ速度で一定の間隔を保って、燃料、水、各種物資を補給することが簡単でないことは理解できる。
だが中国ができないと決め付けるのは暴言である。その時筆者は「中国をばかにしていると、そのうち中国もできるようになりますよ」と述べた。


まさにそうです。私が駐在していたときは、「昭和20年代の日本だよ~」って、上司や訪問してくる方々が口々に言っていましたが、瞬間的に抜かれたことがたくさんあるのです。


まず、携帯電話をはじめとする通信インフラの整備は、あの広大な国土の中国なのに、主要なところのインフラ整備は目を見張るものでした。駐在し始めの頃は、以前もこのブログに書きましたが、アナログ電話で、国際電話をかけるのも一日がかり。それが、急ピッチで光ファーバーケーブルの敷設が一気に進んだのでした。これらも軍事用優先の姿勢が見え隠れしていました。


通信インフラは、ゼロに近かったのですから大変です。一気に光ファイバーケーブルへと行きました。携帯電話も、香港では明らかに日本よりずっと早かったですし、それに伴って、中国本土でも早かったのです。


80年代に入ると、中国海軍は南シナ海、西太平洋で長期間に及ぶ大規模な軍事演習をしばしば実施するようになり、また85年には海軍艦艇部隊がパキスタ ン、バングラデシュ、スリランカを友好訪問した。こうした軍事演習や友好訪問ができたのは、「縦向き」とはいえ、洋上補給艦が洋上で各種物資の補給を行ったからである。
こうした過程を経て、87年5月、東海艦隊の洋上補給艦が、西太平洋上で、縦向き、両横向き、さらにヘリコプターによる上空からの4方向からの補給を実施した。
その模様は解放軍報、解放軍画報、艦船知識その他の新聞雑誌に写真入で誇らしげに報じられた。
90年代に入ると、洋上補給活動は本格化するが、いくつか注目する動向を思いつくままに挙げると、97年、太平洋を横断して米国西海岸の米海軍基地を訪問した後、メキシコ、ペルー、チリと南北米大陸の西海岸を南下しつつ友好訪問した。2002年には、インド洋からスエズ運河、地中海を通って西欧諸国を歴訪した後、大西洋を横断しパナマ運河を通過して世界一周の航海をした。


世界のコンピュータの進展に伴い、中国のコンピュータ産業の成長もすごかったですね。1990年代の最初の頃で、もう既にパーソナルコンピュータの組み立てが盛んで、米国のコンピュータ産業はなだれをうって中国へという感じでした。


私の知人も、蘇州というところで、パソコンの組み立てをしていましたが、国家教育委員会(日本で言う文部科学省)の採用がきまり、全国の小学校に配置される可能性が出てきたというところまで話を聞きましたし、工場の見学にも行きました。パソコンも軍事用ということを考えればうなずける話です。


そもそも、中国へのパソコン輸出など本来はCOCOM(Coordinating Committee for Multilateral Strategic Export Controls)対共産圏輸出規制委員会という組織がありましたので、組み立てなんてありえないのですが、そのコストから、なし崩しになった感じです。また、パソコン程度の技術は大丈夫だろうという油断はあったと思いますね。


≪現実を直視する必要≫
また1999年から2002 年にかけて4回実施された無人宇宙船の打ち上げ、続く2003年と05年の有人宇宙船などの重要な宇宙開発事業においても、4隻の「遠望」号が北太平洋、 南太平洋、インド洋、大西洋に展開して打ち上げを支援したが、これを可能にしたのも洋上補給活動である。
さらにこの数年来パキスタン、インド、タイの海軍との海上共同捜索・救助演習、米国サンディエゴ近海と南シナ海海域での海上共同捜索・救助演習をはじめ、いくつかの国と共同で実施されている対テロ闘争にも、補給艦が随伴している。
中国の洋上補給艦あるいは洋上補給活動は、わが海上自衛隊に比べると水準は低いかもしれないが、目的は十分達成できる水準に達しているとみられる。後は場を踏むだけである。
わが国の軍事専門家たちの見方は非常に厳しい、というよりは完璧(かんぺき)主義であり、中国の軍事力あるいは軍事活動についての見方が厳しい。
というよりも筆者の長年の中国軍事研究から言えば、中国の軍事努力について何も知らないのに、過小評価したり、バカにする傾向が強い。改める必要がある。(ひらまつ しげお)


そうです。一見民生用と思われるものの技術ですが、軍事転用可能なものを集中的に国家予算を入れて育成しています。というより、逆ですね。軍用技術に力を入れて、民生用に技術移転可能なものをどんどん民生用に技術移転をしています。


これはアメリカも同じで、ちょうど昨年の今頃、私の元にそういうお話がきました。アメリカの場合は軍事技術はどんどん民生用に転用するための会社(知的所有権管理会社)があり、超一流大学の研究者がゴロゴロいる感じで、やはり軍事大国を感じざるを得ない話がポンポンでてくるのでした。