私なんかがコメントする立場にはありませんが、法治国家で、裁判所の判断というものをどう考えるかという部分で、考えさせられる部分がありました。

テレビのニュース番組で、野球の星野監督が、それぞれの立場に立てば、それぞれの気持ちがわかるという言い方で、非常に苦悩の表情でコメントをしていました。だよね~って感じで見ていました。


MSN産経ニュースより


「大臣にもてあそばれた」薬害肝炎・原告団
2007.12.20 20:29
薬害肝炎訴訟で舛添要一厚生労働相は20日、線引きの大阪高裁和解骨子案を支持した。原告団は舛添厚労相と2回面談し、解決を期待していた分、ショックは大きく「大臣にもてあそばれた」と怒りをあらわにした。
20日午前会見した舛添厚労相は会見冒頭、椅子(いす)から立ち上がって「心からおわび致します」と深々と頭を下げた。一方で「骨子案に矛盾しない形で解決する。限られた中で智恵を絞った」と、線引きの正当化に終始。原告の求める全員救済の政治決断は「今日の案が政治決断です」とすり替えた。
会見の後には、原告団の会見が迫っていた。隣室で待機する原告団と“ニアミス”を気にしたのか、舛添厚労相は矢継ぎ早に質問が飛ぶ中、「もういいですか」と20分で会見打ち切り、足早に立ち去った。
原告団代表の山口美智子さん(51)は「私たちを避けて、違う出口から出ていった。自分は原告に顔向けできないということ」と憤った。

会見で山口さんは「和解という最後の山で『解決』のアドバルーンを上げた舛添大臣は、握っていた手を解き放った」と辛辣(しんらつ)に批判。感情が高ぶり、嗚咽(おえつ)する原告の姿もあった。
会見を終えた原告団は20日午後、あいさつのため、運動を支援した各政党を回った。民主党のヒアリングで九州原告の福田衣里子さん(27)は「『心を一つにしましょう』といったのに、官僚と心が一つになってしまった。大臣は『全面解決に向け、一生懸命、頑張る』といっていた。期待を持たせるだけ持たせて…。もてあそばれた」と、疲れ切った様子で話した。
原告団の和解協議打ち切りについて舛添厚労相は同日夕、記者団に「引き続き、全力をあげて解決するようにしたい」と繰り返した。


舛添厚労相の今日までの発言を聞いていませんし、ニュース記事などを読み返す気持ちもありません。しかし、下記の町村官房長官の会見こそが、国のとるべき態度を丁寧に冷静に表していると思います。
感情に流されず、対応することこそが信頼されるべき政府の姿だと思います。


【官房長官会見(1)】「何らかの対応考えて」(20日午後)
2007.12.20 18:31
町村信孝官房長官は20日午後の記者会見で、薬害C型肝炎訴訟の和解交渉で、政府が示した救済案が原告団に受け入れられなかったことについて「政府は大阪高裁の対応に誠実に対応していくつもりだ。原告も、ただ簡単にだめですと言うだけではなく、何らかの対応を考えいただきたい」と述べた。会見の詳細は以下 の通り。

【薬害肝炎】
--C型肝炎の訴訟の関係だが、今日、国が示した和解案について、原告側は被害者全員に対して責任を認めるものではないと。東京地裁の判決の範囲に限るという原則にとらわれたもので、意味付けが曖昧(あいまい)なものに金を出すことで問題の終結を図るもので到底受け入れられないと言って拒否をしたが、これについての受け止めは
「今日、大阪高裁に私どもが示した案というものは、何度も申し上げておりますけれども、これはまさに三権分立という観点から、司法の判断を行政府として尊重すると。大阪高裁の和解骨子案と矛盾することなく、同時に原告のみなさま方の思いも受けとめ、また、薬害というものを発生させてしまったおわびの気持ちも込めて、できるだけ、この関係する方々を救済したいという思いで舛添大臣が中心になって、昨夜までかかって調整を行ってまとめたものでございます。


原則論であるけれど、これが許されないとなると、政府の対応のしようがありません。まさに三権分立を壊すことを政府がするわけにもいかないし、尊重しなければならないのは、この国の制度の問題としてどうにもならないのです。もちろん原告側の気持ちとしては、納得できるものでないことも理解できますし、非常に厳しいものであることは否定できません。


そうしたギリギリの案であるということなんですけれども、原告団が受け入れられないと いうご意向を示されたということは、大変残念な思いであります。感染者、患者の方々の長きにわたるご労苦というものを考えましたとき、一刻も早く解決したいと、こういう思いで私どもは提案をしたわけで、この思いは今も変わっていないわけでございます。大阪高裁は先般の和解案を出すときをはじめとして、従来、年内には合意成立に向けて調整作業にあたるということを触れておられますので、今後はその調整作業に誠意をもって私どもは対応していきたいと考えております。また、今、ちょうど予算編成中ではございますけれども、今後、医療費助成などの総合的な肝炎対策、これを来年度予算の中で具体化をしていく。そして、すべての感染者、患者の方々を対象にして実行していくというプランでございますが、これも来年度予算で数字を入れて具体化をして対応していきたいと考えているところであります。私どもとしては受け入れられなかったことは大変残念な思いでございます。しかし、やっぱり、原告、被告双方が司法当局に和解を、調整を原告が申し立てた。それで調整に乗り出した。それに対して、この案でなければ受け入れられないとおっしゃるのは、私は少々、司法の立場というものをどういうふうにお考えなのかなあというふうに思わざるを得ないわけでありまして、ぜひ大阪高裁の今後の対応というものに政府はさっき申し上げたように誠実に対応していくつもりでございますので、原告のみなさま方も、ただ簡単にだめですと言うだけではなくて、何らかの対応というものをお考えいただけないものかと思っております」


自分たちの案以外は一歩も譲れないとなると、和解なんてありえません。冷たいようですが、和解とは歩み寄ることだと思います。お互いに誠意を見せつつですね。それを、あたかも可能性があるように、和解のための戦術を、反政府、反権力の思想で行われるとしたら残念です。(そうだとはいいませんが、原告側弁護団の意思、意図がそう見えてしまうのはなぜでしょう。)気持ちは理解できるのです。しかし、やみくもに、原告を煽り立てるのは弁護士の姿として、社会的責任としてそれでよろしいのかと思います。

決して煽り立てているとは断定しませんが、どうしてこうなってしまったのでしょう。
なぜか釈然としない違和感を感じます。


--今回の国側の回答について、税金の使い方という観点でおうかがいしたいが、国が法的な責任を負わない部分についても和解金を支払うという内容なのか
「これは大阪高裁から示された案を基本的に私どもは受け入れ、それで本当に十分な救済ができるかというところを検討していったわけであります。でありますから、私どもはさっき申し上げたように司法の判断を重視したということでございますから、そういう意味で、トータルでご判断をいただきたいと思っておりま す」


--長官は午前中の会見で、事実上の全員救済ができると発言したが、これまで厚労省は一律救済すれば数兆円かかるというアナウンスをしていた。結果的には政府案で全員救済できるとなると、額に大幅な差があると思うが、厚労省側の説明にミスリードする部分はなかったか
「これは原告側が原告総数を1000人程度というふうに述べられたんですね。この交渉の過程の中で。これははっきりと彼らが出されたメモというか、文書の中にもそれは載せてあります。本当にそうなんだろうかということをわれわれも検討しましたが、かなり遅い段階で原告側が1000人程度であろうということを言われたものですから、そのことを考慮いたしまして、今回のこういう判断にいたったということであります」

--そうすると厚労省側が数兆円かかるかもしれないと説明してきたことは問題ないということか
「それは、肝炎の患者というものの数というのは100万人とか200万人とかあるわけですね。その原因にはいろいろあるし、B型もあればC型もあると。それをどこまでどういうふうに把握するかという問題でありまして、別に捏造(ねつぞう)したわけでもなんでもない。いろいろな、それは考え方、計算の仕方というのがあるんだろうなと思います。私は数兆円なるものの根拠を別に聞いたわけではありません」


--長官の話をうかがっていると、原告側が一律救済の旗を降ろさない限り、難しい状況ではないかとうかがえるが、認識はいかがか
「一 律という意味が私には必ずしもよく理解ができないわけであります。特に司法の判断、和解案というものが出されているわけでありましょう。それとまったくかけ離れた、今まで解決というものは一度としてなされたことはないわけであります。しばしばハンセン病は政治判断だったという言われ方をします。しかし、これは熊本地裁の判決を多分、政府は受け入れないだろうと大方の人は思っていたかもしれないが、それを受け入れた。やはり、政府、行政の立場に立つものとし ては、やはり司法の判断というものは三権分立の中で大変重いものであります。それをまったく無視した判断、あるいは行動というものを政府はとったわけではありません。それが法治国家というもんだと私は思っております」


--ハンセン病の時は小泉総理自ら公表したが、今回は厚生労働大臣が公表する形になった。原告は福田総理の政治決断を求めていたが、厚労省での記者会見になった理由は
「特にありません」


ここから下の部分の質問は、非常にいやらしいなあと思う質問の仕方ですね。何を言わせたいのかわかりません。記者の嫌がらせでしょうか。揚げ足とりという感じがしないでもありません。それを聞いて、どう答えさせたいの。って聞きたいですね。もっと純粋に患者さんの気持ちに立って聞くとか、冷静に、この問題をどう社会に提起していくかなどの観点がないのでしょうか。こういうデリケートな問題だからこそ、記者の鋭い視線っていうものがほしいなあって感じました。


--国の公的責任の部分について改めておうかがいします。国が法的責任を負わない部分についても和解金を支払ったということになると、同種の事案に与える影響は非常に大きく、たとえば、和解金は国民が納める税金から支払われるということを考えると、納税者の理解が得られるかどうかという問題も出てくると思うが。
「それは和解金ではない、基金という形の支払いを止めるべきだというご意見なんですか?ちょっと、質問の趣旨を教えてください」


--法的責任について、あるから基金を支払うかどうかという質問だ
「いや、ですから、そういう基金による支払いというのは納税者の理解が得られないでしょうと、こういうご質問ですね。ご意見ですね」


--法的責任がないのに支払うということは納税者の理解が得られない可能性があるので、ここについては。
「だから、問題だとおっしゃっているんですね。ちょっと、お立場なり、考えをはっきりした上で聞いてください」


--いや、そこは長官のお考えを
「いやいや。あなたが聞いているんだから、まず、あなたのご意見を教えてください」


--そこは、国が法的責任を認めた上で支払うのであれば、論理的につながるので、納税者の理解は得やすいと思うが、法的責任がないのに支払うとなると、同種の事案でも責任がないのに支払うのかということにもなってくる
「それは直接、間接、被害者の方々を、救済をしたいということで、司法当局もそう判断をされた。大阪高裁もそう判断されたわけでしょ。政府もそういう判断だということです」