まず、市の監査委員とはどういうものかを説明しましょう。以下は地方自治法です。

第百九十五条  普通地方公共団体に監査委員を置く。

○2  監査委員の定数は、都道府県及び政令で定める市にあっては四人とし、その他の市及び町村にあっては二人とする。ただし、条例でその定数を増加することができる。

船橋市は定員4名です。

第百九十六条  監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者(以下この款において「識見を有する者」という。)及び議員のうちから、これを選任する。この場合において、議員のうちから選任する監査委員の数 は、都道府県及び前条第二項の政令で定める市にあっては二人又は一人、その他の市及び町村にあっては一人とするものとする。

○2  識見を有する者のうちから選任される監査委員の数が二人以上である普通地方公共団体にあっては、少なくともその数から一を減じた人数以上は、当該普通地方公共団体の職員で政令で定めるものでなかつた者でなければならない。

○3  監査委員は、地方公共団体の常勤の職員及び短時間勤務職員と兼ねることができない。

○4  識見を有する者のうちから選任される監査委員は、これを常勤とすることができる。

○5  都道府県及び政令で定める市にあっては、識見を有する者のうちから選任される監査委員のうち少なくとも一人以上は、常勤としなければならない。

ということで、代表監査委員が1名常勤で、職員OBです。議会選出の監査委員が2名です。そして識見を有する監査委員のもう一人が、完全な民間の方のなかからの選出です。

第百九十七条  監査委員の任期は、識見を有する者のうちから選任される者にあっては四年とし、議員のうちから選任される者にあっては議員の任期による。ただし、後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことを妨げない。

第百九十七条の二  普通地方公共団体の長は、監査委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認めるとき、又は監査委員に職務上の義務違反その他監査委員たるに適しない非行があると認めるときは、議会の同意を得て、これを罷免することができる。この場合においては、議会の常任委員会又は特別委員会において公聴会を開かな ければならない。

○2  監査委員は、前項の規定による場合を除くほか、その意に反して罷免されることがない。

第百九十八条  監査委員は、退職しようとするときは、普通地方公共団体の長の承認を得なければならない。

第百九十八条の二  普通地方公共団体の長又は副知事若しくは副市町村長と親子、夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は、監査委員となることができない。

○2  監査委員は、前項に規定する関係が生じたときは、その職を失う。

第百九十八条の三  監査委員は、その職務を遂行するに当たっては、常に公正不偏の態度を保持して、監査をしなければならない。

○2  監査委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

第百九十九条  監査委員は、普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び普通地方公共団体の経営に係る事業の管理を監査する。

○2  監査委員は、前項に定めるもののほか、必要があると認めるときは、普通地方公共団体の事務(自治事務にあっては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあっては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により監査委員の監査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)の執行について監査をすることができる。この場合において、当該監査の実施に関し必要な事項は、政令で定める。

○3  監査委員は、第一項又は前項の規定による監査をするに当たっては、当該普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び当該普通地方公共団体の経営に係る事業の管理又は同項に規定する事務の執行が第二条第十四項及び第十五項の規定の趣旨にのっとってなされているかどうかに、特に、意を用いなければ ならない。

○4  監査委員は、毎会計年度少くとも一回以上期日を定めて第一項の規定による監査をしなければならない。

○5  監査委員は、前項に定める場合のほか、必要があると認めるときは、いつでも第一項の規定による監査をすることができる。

○6  監査委員は、当該普通地方公共団体の長から当該普通地方公共団体の事務の執行に関し監査の要求があつたときは、その要求に係る事項について監査をしなければならない。

○7  監査委員は、必要があると認めるとき、又は普通地方公共団体の長の要求があるときは、当該普通地方公共団体が補助金、交付金、負担金、貸付金、損失補償、利子補給その他の財政的援助を与えているものの出納その他の事務の執行で当該財政的援助に係るものを監査することができる。当該普通地方公共団 体が出資しているもので政令で定めるもの、当該普通地方公共団体が借入金の元金又は利子の支払を保証しているもの、当該普通地方公共団体が受益権を有する信託で政令で定めるものの受託者及び当該普通地方公共団体が第二百四十四条の二第三項の規定に基づき公の施設の管理を行わせているものについても、また、 同様とする。

○8  監査委員は、監査のため必要があると認めるときは、関係人の出頭を求め、若しくは関係人について調査し、若しくは関係人に対し帳簿、書類その他の記録の提出を求め、又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる。

○9  監査委員は、監査の結果に関する報告を決定し、これを普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会その他法律に基づく委員会又は委員に提出し、かつ、これを公表しなければならない。

○10  監査委員は、監査の結果に基づいて必要があると認めるときは、当該普通地方公共団体の組織及び運営の合理化に資するため、前項の規定による監査の結果に関する報告に添えてその意見を提出することができる。

○11  第九項の規定による監査の結果に関する報告の決定又は前項の規定による意見の決定は、監査委員の合議によるものとする。

○12  監査委員から監査の結果に関する報告の提出があつた場合において、当該監査の結果に関する報告の提出を受けた普通地方公共団体の議会、長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会その他法律に基づく委員会又は委員は、当該監査の結果に基づき、又は当該監査の結果を参考として措置を講じたときは、その旨を監査委員に通知するものとする。この場合においては、監査委員は、当該通知に係る事項を公表しなければならない。

ここに監査委員の職務について書かれています。この監査委員の職務の中の、監査対象に「議会」はありませんし、理論的にありえないのです。なぜなら、当然過ぎる話ですが、

地方自治は、市長を意味する執行機関、議会を意味する議決機関、監査委員を意味する統制機関にわかれまして、その独立性が確保されているのです。

監査制度仕方・受け方の実務(学陽書房)池田 昭義著及び

監査実務質疑応答集仕方・受け方のすべて(学陽書房)池田昭義著より抜粋、引用

地方公共団体を監査する機関としての監査委員は、不特定多数の住民に代わって、不特定多数の住民のために、地方公共団体の行財政を監査する権限をもつ長から独立した統制機関である。

このような監査委員の性格について、従来、地方公共団体の機関を議決機関と執行機関とに二分し、執行機関に属する特別執行機関であると解されてきた。現行地方自治法も、監査委員の設置、定数、任期、職務権限等の監査委員に関する諸規定を設けている。

しかしながら、地方公共団体の住民の立場からみると、地方公共団体の行財政は、議会が決定し、長が執行し、監査委員がこれを統制するという地方行財政のマネージメント・サイクルを繰り返して行われることが、最も合理的であるといえよう。したがって、住民の立場からは、監査委員は議決機関、執行機関のいずれにも属さない、第三の統制機関として、もっぱら、長その他の執行機関の行財政の執行をチェックする機関として機能することが望ましい。

また、監査の定義からみても、監査委員を統制機関として解する方が、監査委員が行う地方自治監査の本質を理解するのには容易である。

という原則論があるのです。

にも関わらず、今回の住民監査請求の請求人のロジックにまんまとはまってしまった感が否めないのです。監査請求相手(対象)は厳密に言うと、市長のお金の支出なんです。くどいようですが、今回の監査請求文中に指摘されている議員のお金の使い方は「?」なんです。ただし、その「?」に対して直接指摘をできない様々な壁があるのです。その壁を突き破ろうとする力(今回のロジックも含む)があるわけです。

それにものの見事に、美しいくらいきれいに反応したのが、監査委員であり2番目に質問した議員さんです。普段、こういうことに敏感な政党の方々はむしろ高見の見物で、代表監査委員を不規則発言(ヤジ)で援護射撃でした。(次に続きます)