僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実/草薙 厚子

¥1,575 講談社
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を読みました。

かなり衝撃的でした。涙がウルウル来た部分もありました。奈良県で起きた医師の家族の事件です。加害者というか犯人は、全国でも屈指の進学校へ通う、IQ136の少年。父親は医師。少年も医師になることを期待されていたのですが、どこかで歯車が狂ってしまいました。

いろいろな要素が複雑に絡み合った感じがしますが、同じ著者の著作を3冊読んだ感じでは、かなり少年犯罪を追いかけている著者ですから、その記述もなるほどなあと思うことばかりです。

一つの要素は完全に家庭内暴力。父親のです。しかも、その暴力をまったく暴力と認識していないことが悲劇の始まりです。握りこぶしで殴ることや、髪の毛を引っ張ってひきずったりなど日常茶飯事のようです。それらと家庭生活のさまざまなことが重なり合って、さらには、広汎性発達障害。

発達障害は近年研究が急速に進み、さまざまなことがわかってきているのですが、それでもまだ解明されていないことも多く、専門家も少ないようです。しかしながら潜在的な数はかなりであると思います。

私もこれについてはもう少し研究をしてみないと何ともいえませんが、この年齢、17歳前後の子どもたちの犯罪が本当に増えていることが心配です。あの神戸の事件からはもう随分時間が経過したような気がしますが、以前は考えられなかった年齢の、いわゆる「優等生」が、常識をはるかに超えたことをしてしまう。そういうことが増えました。だからこそ、この著者の作品を立て続けに読んだのですが。

この少年も、ものすごい孤独感を味わっていたようです。あまり内容を細切れに記載するのも良くないので、ぜひお読みいただきたいと思います。ひとつだけ書いておきたいのは、あとがきに、「真の愛情があるかどうか」ということが重要だと書いてありました。まったくその通りなのですが、そうでない人が多いのだと思います。

なんだかやるせない気持ちになってきてしまうのですが、子どもを取り巻く環境というのは我々の時代から比べると、激変しました。遊ぶ場所の問題。遊ぶ時間の問題。遊び自体の変遷。テレビ。ゲーム。パソコン。食生活。道徳教育。習い事。高校進学率。大学進学率。家族構成。住宅環境。学校教育そのものが変化し、それ自体も修正を迫られている現状。以前にも触れた理不尽なことを言う保護者。健全に子どもが育ちにくい環境であることもこれまた厳然たる事実なのです。

なんとかしなければ、道徳教育のことが最近また言われ、最近の新聞では、武道の必修などが話題になっていますが、挨拶のできない子が多かったり、言葉遣いが乱れているのは当たり前としても、そのひどさは驚くほどです。本当に教育は大事だと思いますが、良い教育が行われる環境は崩壊しつつあるような気がします。