昨日のブログで、駐在中に日本人社員が危ない目に遭ったと書きました。その前に「以前にも書きましたが」という前置き付きでした。しかし、なんと、以前に書いていませんでした。書いたつもりになっていました。というのも、私が友人、知人と話をするときに必ずする話だからです。それほど衝撃的な、ショッキングな事件でした。

私が駐在を始めた頃は、中国民航(Civil Aviation Administration of ChinaCAAC)、

中華人民共和国民用航空総局という国営航空会社でした。ちょうど、私が駐在中に、日本の国鉄と同じような形で、地域分割民営化のような形を整えました。

北京ベースは、中国国際航空公司

上海ベースは、中国東方航空公司

広州ベースは、中国南方航空公司

成都ベースは、中国西南航空公司

西安ベースは、中国西北航空公司

瀋陽ベースは、中国北方航空公司

でした。国際線を飛んでいたのが上から3社でした。我々が香港から西安に移動するときは、南方航空公司だったのですが、そういう形になる前に事故は起きたのです。

この私が関わった中国事業のための会社を、株式会社ららぽーとと三井不動産株式会社とで設立をしていたのですが、その会社へ大卒新入社員が2名入社して下さったのです。しかも、西安に留学経験のある、中国語に堪能な女性2名です。そんな優秀な女性社員を入社駐在開始早々、大変な目に遭わせてしまったのです。

入社時イコールホテルのオープン時です。もういろいろな出来事がたくさんあったときですが、なるほどなあ~とうなってしまうようなことがあったのです。とにもかくにも、オープンし、OJTで従業員教育も進む中、中国料理のレストラン厨房の皿洗い担当の中国人従業員が、まさに皿だけ洗っていたようです。日本ではちょっと高級な中国レストランは、長めの白っぽい箸を使います。最高は象牙ですが、まあプラスチックだったでしょうか。それを、洗わず全部捨ててしまっていたのです。当然ですが、開業数日で、レストランの箸が足りなくなりました。日本のゴールデンウィーク直前だったような気がします。いずれにしても、連日宿泊予約がかなりで、どうすりゃあいいんだという話になって、もちろん国内調達不可の箸です。(当時の中国の箸はお話にならない)

で、大至急で購入だということで、その新入社員の女性を香港に買い付け出張に出したのです。当時の中国は確実な輸送、運送手段がなく、人がハンドキャリーするのが確実な物品の運搬方法でした。しかも、中国人スタッフは、簡単に出国ができませんから、おのずと日本人がそういう仕事をしなければならないのです。

で、彼女に日帰りで行ってこ~いっていう感じだったような気がしますが、ひょっとすると1泊だったかもしれません。直行便で片道2時間半の行程。しかし、毎日、多数の便が西安―香港を往復しているわけではないので、帰りが、広州まで大変重い荷物を持って移動し、広州から西安へ戻る行程だったと思います。そして、西安へ戻るというその日、航空便の遅延は当たり前すぎるくらいの国ですから、何も心配せず、しかも中国語に堪能ですから、元気に大きな荷物を持って帰ってきてくれるだろうと思ってました。

それなのに、広州から電話がかかってきて、「帰れません。今日は、○○ホテル(広州でも当時一流と言われていたホテル)にとまって良いですか?」って涙声。どうしたんだろうと思いきや、搭乗した便が、離陸後ほどなくしてエンジンが爆発。なんとか広州の空港に着陸できたけど、怖くて怖くてとのこと。最初は何がなんだかわからず、「いいよいいよ、泊まりなよ」って言っただけ。今考えると冷たい上司ですよねえ。西安に戻ってから詳しく聞いた話では、次の通りです。

広州離陸後、5分たったかたたないかで、爆発音。彼女は最前列か2列目くらいに着席。隣か前にいた控えのパイロットが、中国語で「ヤバっ!!」みたいに言ってコックピットへ。戻ってきて、「やばいかもしれない」みたいなことをいって頭を抱えていたそうです。外国人は、厳密には彼女一人。香港人のホテルに関係するスタッフが一人。あとは全部中国人。天井からは、水が結構落ちてきて(?)、急降下を続けているけど、その中国人控えのパイロットの言葉がわかってしまっただけに、涙が止まらなかったとのこと。当然「死」を覚悟しての話。

ところが能天気な中国人が、「はっえ~なあ、飛行機は、もう西安に着いたみたいだ。」みたいに言っていて頭にきたと彼女が言っていましたが、飛行機に乗るのなんて初めての中国人が多いのでしょう。で、特段のアナウンスもなかったのでしょう。そしてなんとか無事着陸しても、なんのアナウンスも無く、すぐには降ろされなかったそうです。やっと降りられる状態になって、エンジンを見たら、完全に隠してしまって、どういう状況かわからないようになっていたそうです。当然ですが、西安でニュースで報道されるわけでもなく、翌日や数日間の間に新聞報道されるわけでもありませんでした。こういうふうに報道されない航空機事故はたくさんあるだろうなあって感じた事故でした。

その後、西安の旅行会社の役員や幹部、航空会社の役員や幹部と話をする機会があったとき、「ああいう事故って多いの?」って素朴な疑問として何気なく聞いたら、かなりあわてて、「なんでお前があの事故を知っているんだ!?」と逆に聞かれました。完璧に隠蔽できたと思ったのでしょうか。驚きです。