インターネットのニュースで中国の貧富の差のことがでていました。この場を通じて、何度か中国のことを書いていますが、私が経験したのは20年も前のことですから、もう問題点も改善されたと思っていました。しかし、このニュースをもとに、あれはどうなんだろう、その件は解決できるのだろうか、なんて考えるとまだまだ大変かなって思います。

中国の「貧富の差」はアジア第2位!拡がる格差に打つ手はあるか?アジア開銀(Record China)

200788日、近年めざましい経済成長を続けている中国では、国内の貧富の差はますます拡大の一途をたどり、その差はネパールに次いでアジア第2位であるとの報道があった。アジア開発銀行(ADB)が発表した。
ADB
の報告では、アジアにおける貧富の差拡大の主因は、都市に集中する投資にあるという。都市は発展を続けて都市住民はその恩恵に浴し、高水準の生活・教育・医療・福祉が受けられる。貧困地域の状況は長年変わらないが、富裕地域はますます豊かになるためその差は拡がる一方なのだという。

ここで心配なのは、というか、私が駐在していた頃は、鄧小平氏がタイトルに関係なく国家の最高指導者として、その一挙手一投足が注目される状態でした。

その後、特に私が興味を持っていたのが「南巡講話」です。そこから中国の経済発展の速度が一気に加速期に入り、いまでも止まるところを知らないという感じです。そのときだったと思いますが、いわゆる「経済特区」はどんどん発展させろ、外資をどんどん導入させろ、規制などせずにガンガン行け~、多少の問題なんか気にするな、行け~行け~という感じでした。そして、その豊かになった資金は、地方に分配しろ、地方を発展させろ、地方のために使えという感じだったと思います。私も優秀な共産党員に囲まれて暮らしておりましたから、そういう話が随分あったと思います。南巡講話は、私が駐在を終えてからだったと思いますが、その基礎になる考えは、第一次中国投資ブームから一貫しているような気がします。あれだけの巨大な国を、全国万遍なくその生活レベルを上げ、先進国の仲間入りをしようとすれば、それはそれは大変なことです。

しかし、今回のこの報道では、都市住民だけが豊かになってその恩恵に浴し、貧困市域の状況は長年変わらないと書いてあることです。どこへ行ってしまったんだろう、共産主義は。

まずは教育の問題です。教育自体を受けることができない子どもたちがまだまだいるのだと思います。そもそも、一人っ子政策により、かなり厳しく出産を制限されていた中で、農民たちが2人目以降を内緒で出産することが日常茶飯にあり、その子たちは当然であるが、無戸籍になるわけです。戸籍があっても、農業労働力として学校へ行けない子どもたちなど、まだまだ100%の就学率には程遠いものでしたが、これだけ中国の発展が伝えられている中では、国家の重要な、その根幹でもある教育がまだまだであるのは心配です。

さらには、医療です。私が駐在しているときは、とてもじゃないけどという感じの医療の状態でした。技術、設備ともにまだまだなんだろうなあと素人目にも感じるものでした。しかし、多くの先進国にその医者の卵たちを送り込み、必死に先進医療を勉強させ、医療水準を上げていくことに頑張っていました。先進諸国も、もちろん日本もさまざまな形で協力をしていました。ですから、かなりの水準に達し、農村部やへき地などの医療も、優秀なやる気あふれる若手の医師を育てて、全国各地でそれこそ格差の無い医療サービスが受けられるようになっているものだと思いました。

が、しかしそうでも無さそうなことが今回の報道から感じ取れました。確かに、若い医師などと言っても、まさに一人っ子政策の子どもたち「小皇帝」として、甘やかされて育った6ポケットの子どもたちですから、そんな子どもたちが、国家の指示により、へき地の医師として赴任なんてありえないのかもしれません。

私の駐在時は、国家の分配などという言い方をしていましたが、職業選択の自由が無く、大学卒業者は、それなりの手続きをしないと、国がその就職先を指定して、そこに勤めなければならなかったのです。その制度自体どうなったのかなあと思います。というように、当時の中国では、就職先を強制的に決めますから、教育でも医療でも福祉でもそれらの業務に従事する人はいるはずだったのですが…。


ADB
は、中国のように急激に発展を遂げた国家にとって貧富の差拡大は社会の不安材料となり、社会の団結力を弱めるものだと指摘。国民に広く就業の機会を与えることが解決策だとしている。

以前にも書きましたが戸籍の移動が容易でないことや、档案制度など就業機会を広く自由に与えることが必要なのかもしれません。身分制度による見えない差別や、人権に対する考え方がまだまだ先進的ではないのかもしれません。

ADBはさらに、貧困地域に住む青少年が食事や教育・医療などを満足に与えられていない現状を憂慮し、アジア各国政府が真剣に取り組むべき課題だと強調している。


確かに数年前から、中国問題をウォッチしている方の論評や、メディア関係の方々の話でも、中国は都市と地方の格差が激しく、農民一揆や大きな暴動さえも起きる可能性があり、大変なことになる予兆があるぞ。と言われておりました。何も無ければ良いのですが。