またまた、西安滞在中の話です。

1986年の中国国内の通貨は2種類ありました。厳密な使用のルールは知りません。が、中国人民銀行が発行する「人民元」と中国銀行が発行する「外貨兌換券」の2種類です。正式名称も今となっては知りませんが。

我々外国人は外国為替取扱銀行である中国銀行が発行する外貨兌換券に日本円やアメリカドルを両替します。今も、ほとんど変わらないと思いますが、1米ドル7.8元でした。それに、日本円はリンクしますから、円とドルの交換レートによって日本円と中国元の交換レートが決まるのです。

ですから、最初の我々のプロジェクトの基本契約時の投資額は、1,500万米ドルとなっておりました。米ドルと中国元の交換レートは、いわゆる固定レートだったような気がします。それに比べ円ドルレートが変動ですから、1,500万ドルはレートによっては投資額に大きく影響します。したがって、当社の経理担当課長や親会社の担当部事務管理担当者は大変だったようです。

そんな中、我々駐在員は、いろいろなことがありました。「羽毛布団」です。中国は、あひるや鴨ですかねえ、羽はふとんやジャケットなどに加工し、中身のお肉は食べちゃうという大変合理的なものでした。その羽毛布団ですが、駐在のスタッフみんなが、お土産にいいぜ~っていうので買い込んだのですが、これを買うときが、国内為替の存在です。闇両替商というか、いるんですね。西安は、遅れてはいても、ローマ、京都などと肩を並べるほどの歴史的な遺産が多い古都ですから、欧米、日本をはじめとする観光客はものすごい数です。その観光客相手に、外貨兌換券を購入したり、外国の通貨を購入したりの人が町中にたくさんいるのです。

我々が、羽毛布団を買おうと言っているときは、同じ中国の通貨である「人民元」「兌換券」の交換レートが、1.5対1だったと思います。ということは、兌換券100元札を渡すと、人民元を150元もらえるのです。物の購入はほとんど国営デパートですから、兌換券であろうと、人民元であろうと100元は100元です。ところが、デパートの途中で、両替をして、100元のふとん3枚を買うとすると、兌換券でも300元、人民元でも300元ですから、3枚200元(兌換券200元分)で買えちゃうんですね。

このからくりがわかってからの買い物は大きく変化しました。外国人専用お土産店やホテルは、外国人は兌換券でしか支払いができません。しかし、街中の商店はどこでも人民元での支払いが良いのです。くどいようですが、厳密なルール(法律等)はわかりません。でもどう考えたって、日本で言うところの、外国為替及び外国貿易法みたいな法律があってその適用を受けるんだと思いますが、あの国の、あの当時の一般庶民の順法精神なんて「?」「??」「???」って感じですから。

ですから人民元で買い物ができるところでのお宝探しがおもしろかったですね。そもそも、外国人向けのお土産屋にあるものとまったく同じだろうというものが、驚くべき価格で販売されているのですから。逆を言えば、中国人の庶民にとって、外国人専用お土産屋を覗いたことのある中国人は驚くべき価格だと思うでしょう。

その証拠に、といいますか、証拠証言があります。日本人観光客を案内するガイドの話です。「日本人は、私たちが貧乏だと思ってバカにしていますが、たぶん私たちの方が金持ちですね。だって、お土産屋に連れていって、掛け軸を勧めると大金で買いますねえ。その品物の価値がわからないくせに。そうするとバスに乗っている人全員が買いますねえ。バカですねえ、その大部分は私たちガイドに手数料として入ります。ということは、長谷川さん、1回のガイドでいくらもらえるかわかりますか~」

だよねえ~と思いました。

「日本人はいいですよ~。欧米人は、自分の気に入ったものを、少しだけ買いますから、ガイドも儲かりません。でも、日本語ガイドはバス1台の単位ですからね~」

あ~あ。

これには、まさに国内闇為替相場も連動しているからです。