西安駐在中のいろいろな出来事を書かせていただいております。政治、文化、慣習何をとってもすべて違うのが海外での生活。日本国内だって、北海道と沖縄じゃあ、違うことがたくさんあると思います。日本中どこへ行っても、何もかもが同じなら、国会議員もたくさん要らないし、何でも効率的に進められますね。

日本という極めて狭い国土でもいろいろあるのに、中国みたいな広大な国土の国は、もうすごいですね。言語だけでも大変。北京語が最も標準語に近いと言われています(標準語ですが)。北京は北京特有の巻き舌とでもいうのでしょうか、生まれも育ちも北京っ子だということをアピールしたい人が、どうも標準語の北京語をわざとおかしくしているようです。上海語、広東語まではポピュラーですが、閩南語という福建語、上海語も違う言い方がありました。それ以外にも、多くの少数民族がそれぞれ独自の言語を使用していますから、大変です。それだけでも楽しかったですね。

さて、またまた話がずれてきました。厨房でのお話です。

「鈴木ちゃんのオリジナルスープ(特性スープだったかも)って、お醤油をちょっとたらしただけだからね~」っていうのは当時の我々の神様のような存在だった社長のお言葉です。ムッシュ鈴木は、本当に明るく、優しく、おもしろいステキな方でした。例えばですが、コンソメスープをきちんとムッシュのレシピに基づいて作った後に、醤油を数滴たらす。それが「かくし味」らしいのですが、ばれちゃっているので、メニューの作成時の試食や社長が訪中時の特製メニューって、頑張っても社長はお見通し、なのでした。スープに限らず、けっこう「醤油」はフレンチに重宝するそうです。

それ以外でも、ムッシュや日本から来た厨房スタッフ、購買という仕入れ部門の専門の方のお話を総合すると、今はもう手のかかる前菜のような製品は、食材供給会社からできたものが納品されるようです。これは前菜に限ったことでもありませんけど。それを調理長の長年の経験と技で最後のオリジナルの味に仕上げるそうです。すみません、誤解があるといけませんので、お断りしておきますが、もちろん素材から調味料まで、ご自身で厳しい目で厳選して、さまざまな技術を駆使して、テーブルにお出しするムッシュやレストランも多いんですよ。ただ、我々が勤めたホテルのように、食事の予算が決まっている、日本で言うところの観光ホテルみたいなところは、予算との兼ね合いで、工夫を加えなければいけません。人件費の節約や、食材ロスの軽減、味の均一等々です。

さて戻りますが、「やわらかくて、安い牛肉なんてなかなかねえよ」「俺たちはそういうのは絶対食べないよ」っていうのが、牛肉をめぐる話のときでした。

「牛肉はね、ヒミツの薬を塗ればやわらかくなるんだよね」ってことで、ご存じの方はご存じらしいですね。でも僕は知りませんでしたから、「なになに、ヒミツの薬ってなんなの?」って聞くと、「重曹だよ」ってことでした。「だから、やわらかい牛肉だね~」なんてありがたがっちゃダメだよって言われたのを覚えています。「な~んだ、牛肉そのもののやわらかさじゃないんだ」ってことで、かなり衝撃的でしたね。

ヒミツの薬や、醤油数滴の隠し味やら、厨房の中の工夫って想像を超えたものでした。それでいて、まかない料理はおいしいもの食べてるんですよねえ~。