translate 訳する              ~太宰治 西城秀樹 歌唱作品訳~ | 長谷川のブログ

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translate (訳する)

スマホ疲れと、これから少し忙しくなりますので、以前書いたブログを再掲致します。
2020年3月

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英語を日本語へ、逆に日本語を英語に、つまり他言語から他言語に、詞(詩)や文学を的確に訳するのは大変難しいです。
以前も書きましたが、西城秀樹さん歌唱の『抱きしめてジルバ』をユーチューブでみてましたら、それを『孤独舞台』と訳していたテロップに大変驚きました(中国語)。この『抱きしめてジルバ』の歌詞の内容をタイトルにすると『孤独舞台』が相応しいでしょう。この訳を見る前に『愛的擁抱』という訳語を見ていましたから大変驚きました。『愛的擁抱』では『抱きしめてジルバ』の直訳の様になってしまいます。
この歌の内容は、別れた彼女と男性は二度と踊れない、そしてかつての2人を回想している孤独な男性の気持ちを表しているものですので、タイトルは『孤独舞台』が的確だと思います。

なんでこんなに的確に訳する事ができるのでしょうか。

私は小説を全くに近く読みません。読んだ事がある著者と著書をあげろ、と言われて思いつくのは、合わせても20位でしょう。

これでは義務教育レベルです。

しかし気に入った小説は2冊、太宰治の『人間失格』と、マルグリットデュラスの『愛人』(映画が面白かったからたまたま読んだだけ)この2冊は、「この日本語の文章を英語に訳すとどんな表現になるのだろう」と英語でも読みました。太宰治の方は、高校生か大学生の時ですから、かなり昔になるので記憶違いがあるかもしれませんが、人間失格の一文に、

〈人間、失格。私はもはや人間ではなくなりました。〉という文章があります。
確か訳者はドナルド・キーンでした。そしてこれを、
〈Human lost. Iam no longar human.〉
と訳していた記憶があります。そして、この「人間失格」のタイトルは、Human Lost ではなく、「No Longar Human」でした。

〈もはや人間ではなくなりました〉

これが「人間失格」のタイトルとなっていて、感動したのを覚えています。Human Lost ではなく、「No Longer Human」が、やはりこの小説のタイトルとしては的確だと思います。

数学や物理などの訳は、その人の持つ才能は際立っては表れませんが、詞や文学は、このようにその人の持つ才能がはっきりと出てしまう分野なのだと当時わかりました。

それで気になっているのは、氷川さん歌唱で知りました、ポールアンカーの『You are my destiny』の日本語訳です。これは、『君こそ我が運命』と訳されてますが、以前も書きましたが、このタイトル、少し違和感がありまして、どなたか良いタイトルに訳して頂きたいのですが。

「的確に」訳するのは難しい事なのだと思います。以前、美輪明宏さんの本を読んでたら、エディット・ピアフの『愛の讃歌』の訳が出鱈目だと書いてありまして、美輪さん独自の訳を載せてましたが、私は、『愛の讃歌』の音楽しか知らないのでわからないので何とも言えませんが、多分美輪さんの言い分が正しいのではないかと思います。

しかし、『君こそ我が運命』の訳語は何とかして欲しいので、どなたかぴったりとしたタイトルを教えて下さい。

文学や詞(詩)の訳は、その作者と同じか、それ以上の才能がなければ(別の才能であっても)、上手く訳せないという事だとあらためてわかった次第です。