4 次に、北海道における一次産業の課題について伺います。

 【パネル⑤ 北海道内の観光客数と道内向砂糖・飲用乳の販売実績推移】

パネル⑤の棒グラフをご覧ください。北海道内の観光客が激減している中で、宿泊だけではなく、道内の砂糖、業務用脱脂粉乳、バターなどの消費も激減しているというグラフです。

北海道の観光客数は、新型コロナウイルスの拡大を受け、大きく減少しています。

令和2年度の宿泊者数はコロナ禍前の平成30年度の約6割減となっています。また、道外からの観光客数も同約8割減となっています。

同じように棒グラフの後ろの面グラフですが、道内向け砂糖、道内業務用脱脂粉乳とバター販売実績について、コロナ禍前の平成30年度を基準とした変化率を表しています。いずれもおみやげ用のお菓子などに使われますが、観光客数の減少と同じように、販売量も激減していることが、一目瞭然ではないかと思います。

全国の農業者の皆さんが、米・砂糖・バター・脱脂粉乳など多くの農畜産物の販売環境の悪化に苦しんでおります。来年スタートを予定しているGo To トラベル事業などの観光支援と合わせて、農畜産物の需要喚起・販売対策についても、徹底していく必要があると思います。

特に、直近では、国内の経済活動は活発化してきておりますが、インバウンドが元の水準に戻るにはまだ時間がかかります。観光事業関係者・1次産業従事者にとってこれは本当に死活問題となっていくことは明らかであります。観光客数や販売環境が戻るまでがコロナ禍であります。このコロナ禍の収束は、インバウンドが再開し、もとの水準に戻るまでである、という認識で取り組んで戴きたい、国としても万全に支援していくが必要ですが、金子農水大臣に伺いたいと思います。(対農水大臣)

 

○金子原二郎農林水産大臣

お答えいたします。

新型コロナウイルスの影響で観光業が落ち込み、乳製品等の需要が減少したことから、在庫は高水準になっております。また、年末年始には生乳の廃棄も懸念されており、業界挙げてその回避に向けまして消費拡大策の取組を進めているところであり、年末に向けて更なる対策を検討してまいりたいと思います。

 観光業と食の需要は密接に関係していることから、コロナ禍の影響がなくなるにはインバウンド需要の回復が重要であると認識しております。特に北海道では、稲作、畑作、野菜、酪農、畜産など多様な農業が展開されておりまして、これが北海道経済の基幹産業となっているばかりではなく、我が国にとっても重要な食料基地となっている、役割を担っているというふうに考えております。

 コロナの影響を受けた農林水産業に対しまして、引き続き、資金繰りや新たな販路開拓への支援等によりまして経営継続を支援してまいりたいと考えております。

 

ありがとうございます。

大臣から、今、「年末にさらなる対策を検討」、という前向きのお言葉をいただいたことに、感謝申し上げます。

また、今年、農林水産省は環境負荷軽減の推進の一環としてみどりの食料システム戦略を策定しました。この「みどりの食料システム戦略」の中に、「消費者を含めた関係者の行動変容と理解促進」という言葉が書かれています。

このことは経済安全保障の観点からも非常に重要であります。ある新聞社の調査で、「コロナの状況において国産農畜産物の重要性に気付いた」という国民が多かった、との結果が出ています。これはまさに、経済安全保障であります。国民全体が、自国の農水産物に対する理解を深め消費する、農・漁業者はそれに対して安定供給していく、この当たり前のサイクルを再構築する政策予算が必要です。自国の農水産物をしっかりいただくことが、厳しい局面にも強い1次産業の経営につながると考えますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。(対農水大臣)

 

○金子原二郎農林水産大臣

 国民に対し将来にわたって食料を安定的に供給するためには、国内農業の生産基盤を維持強化し、国内で生産できるものはできる限り国内で生産していく必要があります。

 また、国土の保全などの多面的機能の発揮を含めた国内農業の重要性につきましては、国民が認識を共有し、国際農産物の、国産農産物の積極的な選択など、具体的な行動変容に移していくことが重要であると考えております。特に、コロナ禍においては国産農産物を消費することの重要性が再認識されたところであり、そのための施策を更に進めてまいりたいと考えております。

 

コロナ禍において、さらに施策を進めていただけるお願いを申し上げたいと思います。

次に、北海道太平洋沿岸側赤潮に係る漁業被害への支援について伺います。

【パネル⑥ 赤潮による漁業被害の様子】

パネル⑥をご覧ください。これは広尾、釧路、釧路町、太平洋岸500kmにわたる海の底であります。

私も、現地で被害状況を確認しましたが、ウニがもう白くなっています。白いというのは、もう死んでいるというものであります。毛ガニが死んでひっくり返っており、サケのエラはプランクトンの影響で、通常赤いものが、呼吸ができず白くなってしまっています。こうして、ウニやサケ、サクラマス、たこなどの大量死による漁業被害は相当深刻な状況です。

 赤潮の被害というのは、今回実は、北海道で赤潮が起きるというのは誰もが思っていなかったことで、ロシアから来るセリフォルミスという新しい、低温、低水温にも強い、新しい、もうこれは外来種と言っていいと思うんですが、このようなプランクトンの影響を受けまして、ウニは壊滅的損害、ナマコ、ツブ、タコ等にもすでに影響が生じ、たとえば資源回復までにウニは4~5年、ツブでは、7年ほど要する見込みであり、これから数年間にわたって漁業経営だけではなく、水産加工や流通など地域経済を取り巻く状況の悪化も強く懸念されているところです。

今般の補正予算案により、15億円に上る緊急対策が措置され、赤潮により漁業被害を受けた漁場の回復を目的として、単年度での事業の活用が図られることとなりました。そして、総務省からは交付税措置率のかさ上げをいただきました。両金子大臣に厚く御礼を申し上げたいと思います。

しかしながら、ウニ資源や、あるいは赤潮により壊滅的な状態となっている地域では、今年で終わるわけではなく、しばらく続きます。来年度以降も、毎年、種苗の放流、小さなウニを放流していくということを重ねていかなくてはなりません。

赤潮を要因とする深刻で広範な漁業被害は、先ほども申し上げたとおり、北海道が初めて経験する事態で、長期的にも大きな影響を及ぼすと想定されているところであり、漁業者の皆さんの生活を支え、守るためにも、複数年の予算措置が必要と考えます。また、新たな被害が想定される魚種(ツブ、たこ、昆布等)への支援策の検討が必要と考えますが、大臣どのようにお考えか、漁業者の皆さんへのメッセージもお願いしたいと思います。

 

○金子原二郎農林水産大臣

 お答えいたしますが、今般の赤潮被害の発生を受けまして、農林水産省といたしましては、十月に武部副大臣などを現地に派遣いたしました。

 その際、漁協の組合長など地元の関係者から、ウニについては四年程度の影響があり、さらに、ツブ、タコ、ケガニ、昆布などへの影響が拡大、サケの回帰の減少を懸念する声があったと報告を受けております。重く受け止めておりまして、今回の漁業被害に対しましては、漁業共済等により減収の補填を行うほか、令和三年度補正予算案に盛り込んだ北海道赤潮対策緊急事業により、北海道庁とも連携をしながら赤潮の発生源の究明や漁場回復の取組への支援を行っていくこととしております。

 今後、ツブやタコを含め、どのような魚種についてどの程度の被害が発生、拡大するかを注視してまいりますが、今後とも現場の状況を丁寧に把握した上で、漁業者が安心して漁業経営を継続できるように農林水産省はしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 

 

「漁業者が安心して」という言葉をいただきました。よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 

国土強靱化、不都合な情報を地域の皆さんと共有する大切さについて、伺いたいと思います。

 【パネル⑦ 浸水予想】

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の対策について伺います。

政府においては、巨大地震モデル検討会を設置し、地震による津波高等の検討を行い、令和2年4月に浸水想定を公表しました。

公表エリアは、北海道から千葉県に至る広い範囲を対象としていますが、ここで、パネル⑦をご覧ください。今回は一例として、北海道釧路市に関する浸水想定をもとにお伺いいたします。

 たとえば、この釧路市の例では、津波高などがどのように想定されているのか、具体的な説明をお願いいたします。

 

○榊真一内閣府統括官

お答え申し上げます。

 御指摘の釧路市につきましては、釧路市沿岸の沖合における代表地点で地震発生から十六分後には高さ三十センチメートルの津波が到達し、三十三分後には高さ八・三メートルの最大波が到達すると想定をされております。

 最大沿岸津波高は、釧路市三津浦地点で二十・七メートルと想定をされております。また、釧路市役所におきましては、地震発生から三十四分後に津波による浸水深が最大で五・九メートルに達するとされ、釧路市内では海岸線から内陸部の十キロメートル以上の範囲まで津波による浸水の影響があり、市街地を含む約九十平方キロメートルの範囲が浸水する可能性がございます。

 この浸水想定範囲には、JR根室本線や国道三十八号なども含まれておりますことから、広範囲にわたって大きな被害が生じる可能性がございます。

 

 

 たとえば、釧路市において、かなり大きな浸水被害が想定されていることがわかりました。

 巨大地震が発生し、津波の到達が想定される場合には、一刻も早く安全な場所まで避難することがとても重要になります。

 一方、今回の地震による被害が想定される地域は、冬になると、暴風雪などきわめて厳しい自然環境下に置かれ、夏に避難する場合とは異なる対策が必要になります。

 現在、政府では被害想定を検討している最中と聞いていますが、その中で、北海道の冬の、最悪の気候条件と重なることを想定した避難行動などへの影響についてどのような認識でいるのか、具体的にお答えください。(対内閣府)

 

○榊真一内閣府統括官

 お答え申し上げます。

 北海道、東北地方では、特に冬場は積雪寒冷の影響により避難に時間を要することや低体温症のリスクがあることなど、積雪寒冷地特有の課題がございます。

 避難行動について申し上げますと、条件の厳しい冬の深夜に地震が起こった場合、夏の昼間に比べて、積雪等の影響により避難速度が六割程度にまで低下するほか、避難の際には防寒対策を取る必要があることから、その準備にも倍以上の時間が掛かると言われております。

 また、避難路や避難施設につきましても、寒さや風による低体温症などの被害を防止するための施設の在り方などについて検討を加える必要があり、さらに、北海道の地理的特性を踏まえれば、渋滞や事故による逃げ遅れ等に配慮しつつ、自動車による避難を検討することも必要となってまいります。

 このような積雪寒冷地の特性を踏まえつつ、現在、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループにおいて防災対策について検討を行っているところです。

 

 避難に当たっても、大変厳しい条件であることがわかったかと思います。

 今後発表される被害想定は、住民にとって決して優しいものではなく、不都合な情報と受け取られるものかもしれません。

 しかしながら、関係自治体は、このような情報についても、いたずらに不安をあおることなく、住民に正しく理解してもらい、避難施設などの整備を進めるとともに、住民に適切な避難行動をとってもらうための、情報開示と、意識の啓発を行う必要があると考えています。

 このように被害想定を冷静に受け止め、十分な事前準備につなげていくことが重要かと思いますが、その被害想定はいつ頃公表されるのか、また、被害想定を踏まえた防災対策のあり方をどう考えているのか、時期についての見込みを含めて、大臣にお聞きします。

 

○二之湯智防災担当大臣

 日本海溝、千島海溝によって予想される被害は、非常に発生頻度は低いものの、堤防等では防御できない、そういう津波が来るということが予想されるわけでございます。このような津波に対する住民避難を中心とした対策がこれから必要になってくると思います。

 地震の発生後、住民の方々に速やかに避難行動を取っていただくためには、平時からの地域や学校での防災訓練や防災教育が必要となってまいります。

 また、避難路や避難施設については、まあ北海道寒うございますから、屋根や壁を設けるなど冬の雪や寒さを考慮した対策を進めることで避難に要する時間を短くするとともに、防寒機能を確保することが必要になってまいります。

 なお、この被害が大きい大きいということを公表する際には、余り住民に不安な気持ちを持たすというようなことはこれまた避けなければならないわけでございますから、深刻な不安だけが独り歩きすることのないようにしなければならないと思います。

 今後、関係自治体とも連携しながら、年内には被害想定を公表したいと考えております。地域の住民の皆さんに対して関係自治体が適切に情報を正しく伝達し、対策が早期に講じられるよう、内閣府としても必要な支援を行ってまいります。

 

ありがとうございます。「年内に公表」という話をいただきました。

 この度、総理を始め各大臣に明確な答弁をいただきました。答弁にとどまらず、事業者、地域住民の皆さん、一次産業の従事者の皆さん、明確なメッセージをいただけたと思います。感謝を申し上げます。

 特に、日本海溝、千島海溝沿いの巨大地震の被害想定については、政府があえて不都合な情報を公表することは相当覚悟が要ることだと思います。しかし、地域の市町村に正しく伝え、真っ正面から向かい合う姿勢こそが一番信頼される政府の在り方だと思います。そのスタンス、その姿勢を岸田政権は是非とも持ち続けていただきたいと申し上げまして、質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。