○自由民主党の長谷川岳です。

 今回の法案について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、特定技能の在留資格を創設する背景として、内外のそれぞれの事情があると認識をしています。日本国内の情勢については理解をしておるつもりなんですが、一方で、海外のそういった外国人材の争奪戦というものがやはり非常に激しくなってきている、どういった取組においてその外国人材の受入れというものが海外において加速しているのか、そういったことを伺いたいと思います。


○法務省入国管理局長

まず、国内の状況を申し上げさせていただきます。

 国内状況に目を向けましたら、アベノミクスの推進によりまして、有効求人倍率が約四十四年ぶりの高さとなっております。一例を挙げますと、介護においては三倍以上、建設業の中には十倍を超えるものがあるなど、極めて高い数値を示しているところでございます。他方で、少子高齢化の影響によりまして、労働力となり得る生産年齢人口は毎年減少し、本年一月には初めて全人口の六割を切るに至っており、今後もその傾向が続くと見込まれております。

 現下の人手不足の状況は深刻であり、この問題への対応は急務であるため、今般、新たな在留資格を設けることとし、これにより国内的な差し迫った状況に対応しようとするものでございます。

 また、国外でございますけれども、例えば近隣諸国であります韓国、シンガポール、台湾などにおいても、人手不足に対応するため、外国人労働者の受入れを行っているものと承知しております。

 こうした状況の下で、我が国が何も対策を講じないままでは各国との優秀な外国人材の争奪戦に後れを取ってしまうため、今般、新たな在留資格を創設し、受け入れた外国人への支援を実施するなどの規定も盛り込み、優秀な外国人材を獲得しようとするものでございます。

 

○例えば、シンガポール、韓国、台湾の取組の中でこういった外国人材の受入れを加速しているとは聞いておりますけれども、具体的にどんなような制度設計をしているとか、そういうことはございますか。一例がありましたら教えていただきたいと思います。

○法務省入国管理局長 

例えば、シンガポールでございますけれども、シンガポールでは、企業幹部のほか、エンプロイメントパスというものを与えることによって、外国人労働者の雇用を進めていること、それから韓国におきましては雇用許可制と言われる非専門就業というもので、例えば製造業、建設業、サービス業、農畜産業及び漁業を対象といたしまして、二〇一七年現在で外国人労働者二十三万二千五百九人を受け入れているというようなことがあるというふうに承知しているところでございます。

 

○特定技能の在留資格で受け入れる外国人についての受入れの上限について伺いたい。

 我々の党の部会でもかなり議論になりましたけれども、無制限に外国人を受け入れるつもりなのかどうかといったことも大変懸念があるところでございます。大臣に直接もう一回、この点、確認をさせていただきたいと思います。

○山下貴司法務大臣

まず、本法律案において、特定技能外国人の人数について、数値として上限を定めることを義務付ける規定は設けていないというところでございます。これが一点目。ただ、一方で、これは、結論からまず申し上げますと、分野別運用方針で示す向こう五年間の受入れ見込み数、これを上限として運用するということでございます。

 これはどういうことかと申しますと、この上限、運用に当たっては、まず政府としては、本法案の成立後に定める分野別運用方針において、向こう五年間の受入れ見込み数をお示ししていくこととしております。この示された数字、向こう五年間の受入れ見込み数につきましては、受け入れる業種における大きな経済情勢の変化、つまり、各業種の雇用情勢全般に関わる事項についての大きな変化が生じない限り、五年間は受入れ数の上限として運用するということにしております。じゃ、どのように運用していくかということにつきましては、これは本法案に定める受入れ停止措置、これを活用して行っていきたいと考えております。

 具体的には、業所管省庁においては、生産性向上や国内人材確保の取組等の状況、その後の受入れの動向も勘案した上で、受入れ見込み数を超えることが見込まれる場合には法務大臣に対し受入れの停止の措置を求めて、法務大臣が外国人の受入れを停止する措置をとることになります。また、法務省におきましても、どの程度の人間が例えば在留資格認定証明書の申請をした、認定証明書を得たかということを把握できるわけでございますから、先ほど、上限として運用する数値に近づいた場合に、業所管省庁に注意喚起して適切な措置をとってもらうということについてもしっかりやっていくということになります。

 したがって、基本的には、基本的にはと申しますのは、やはり大きな経済情勢の変化ということはあり得るわけでございますので、この数字を超える外国人を受け入れることはないということでございます。そしてまた、この経済情勢の変化があった場合にも、これは分野別基本方針で定められたこの五年間のこの受入れ見込み数、これを分野別運用方針の数字を変えるということでやっていきたいというふうに思っております、大きな経済情勢があればですね。ですから、一部の報道にあるように、青天井で外国人を受け入れるということはないということであります。

 さらに、先般集計値として報告いたしました三十四万五千人、これは実質的に最大値であるということ、これについても御説明させていただきたいんですが、先日法務省が示した受入れ見込み数、これにつきましては、最大値で約三十四万五千人という数字が報告されております。これは、各省庁からこの受入れの見込み数、五年目までの累計ということで、二十六万二千七百から三十四万五千百五十人というふうに言われて、幅のある数字として言われておるんですが、このうち、この最大値の三十四万五千百五十人ということ、これは各業所管省庁が現時点における推計として算出した五年間の受入れ見込み数の最大値ということでございます。これはもう各省庁が真摯に推計した最大値でございますので、本法案に成立後に定める分野別、分野別運用方針に明記される数字について、その合計を合算してもこの最大値を超えることはない、すなわち三十四万五千百五十ということは超えることはないというふうに我々考えておりますので、これを上回ることはないということでございます。ただし、具体的な運用上の上限については、法案成立後定められる分野別運用方針において、五年間の受入れ見込み数として定められるということでございます。

 

○この点は非常に不安に思う点でございますから、大臣の方から皆さんに御説明を重ねていただくことを要望したいと思います。

 それから、失踪した技能実習生の所在について伺いますが、判明をしているのかどうか、この点について伺いたい。

○法務省入国管理局長 

 失踪した技能実習生の所在について確認をしたところ、既に出国した者や退去強制手続中の者など、当局が所在を把握している者の各年の失踪者に対する割合を申し上げますと、平成二十九年は六五%、平成二十八年が七六%、平成二十七年が八六%、平成二十六年が八八%、平成二十五年が九〇%、平成二十四年が九五%、いずれも約でございますが、となっております。

 このように、失踪した時期が近年になるほど所在について確認できた者の比率が低くなっておるわけでございますが、これは失踪者が時の経過により摘発をされたり、自ら帰国をすることが、望む者が増えてくることによりまして、古い年次のものの方が判明しているものが多いと、このようなことになっているわけでございます。

 

○特定技能の活動を今回行う外国人を受け入れる特定技能所属機関というものは今回非常に大きな役割の一つだと思いますが、どのような基準に適合する必要があるのかを伺いたい。

○法務省入国管理局長 

 本制度におきます受入れ機関、特定機能所属機関でございますが、これは出入国管理法令及び労働関係法令を遵守することはもとより、本制度の趣旨、目的を理解し、本制度がその趣旨、目的に沿って適正に運用されることを確保し、また、受け入れる外国人材の適正な在留活動を確保する、このような責務がございます。

 そのため、受入れ機関に対しましては、報酬などを含めまして外国人材との間で適切な雇用契約を締結するとともに、その適正な履行が確保されていることが求められます。また、受入れ機関には、受け入れる外国人に対してその活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするため、職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を行う、このような責務がございまして、支援計画の作成を求めるほか、支援計画の適正な実施が確保されるための基準に適合すること、これが求められるものでございます。

 

○特定技能一号の活動を行う外国人に対しては支援を行わなければならないとされておりますが、特定技能の制度において登録支援機関はどのように位置付けられているのか、あるいはどのようなものが登録支援機関となり得るのか、登録支援機関はどのような役割を果たすのかを伺いたい。

 特に地方では、外国人材を受け入れたいという声は強くあるが、一方で、どうやってこの登録支援機関を、単独でつくれないではないかと、どういう形でつくったらいいかということを非常に悩ましいというような、そういった意見も出ておりますが、その点について伺いたい。

○法務省入国管理局長 

 特定技能一号外国人に対する支援を行う主体は、原則としては受入れ機関でございます。しかし、実際に受入れ機関となることが想定されている中には、中小企業など十分な支援体制が有さず、支援の実施が困難な機関も存在すると考えられるところでございます。そこで、そのような機関であっても特定技能一号外国人を受け入れることができるように、登録支援機関に支援の実施を委託することができると、このようにしたものでございます。この場合には、登録支援機関が支援の実施主体となるわけでございます。

 そして、登録支援機関となり得る主体でございますが、支援体制を整えた業界団体、士業者、民間法人など幅広い主体を想定しているところでございます。その支援の具体的な内容といたしましては、入国前の生活ガイダンスの提供、住宅の確保、在留中の生活オリエンテーションの実施、生活のための日本語習得の支援、相談、苦情への対応、非自発的な離職時の転職支援など、こういったものを考えているところでございます。

 

○つまり、地域の実情に合った登録支援機関というものを幅広くつくれる選択肢があるという認識でよろしいか。確認をしたい。

○法務省入国管理局長 

御指摘のとおりでございます。

 

○本法案では、外国人の在留を適切に管理するためにどのような仕組みが設けられているのかということを伺いたい。新制度において失踪者を出さないためにどうしていくかということも問われると思いますが、その点について伺いたい。

○法務省入国管理局長 

 本改正法案におきましては、在留管理を適切に行うことができるようにするための規定を整備しているところでございます。

 具体的に申し上げますと、まず、受入れ機関などによる届出規定を拡充しております。また、受入れ機関等に対する指導、助言、報告徴収や立入検査、さらに、罰則で担保した改善命令、こういった規定を設けているところでございます。これらの規定によりまして、特定技能外国人の活動状況等の実態を的確に把握することが可能になるとともに、受入れ機関の適正さ、これも確認することができるということになります。

 また、本改正法案におきましては、新たに出入国在留管理庁を設置いたしますので、ここで抜本的な組織体制の強化を図ることとしておりまして、この体制面での大幅な増強により在留管理をより一層適切に実施してまいりたいと、こう考えているところでございます。

 

○先ほども御発言もいただいておりますけれども、櫻井充議員から重要な指摘も踏まえた上で、今回、法案は衆議院で一部修正されまして、附則の第二条で、政府は、人材が不足している地域の状況に配慮し、特定技能外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中して就労することがならないようにするために必要な措置を講ずるよう努めるものとするとされました。

 衆議院による修正でこのような規定が設けられましたけれども、特に東北、北海道、そして震災の後、しっかり復興を目指している地域にとっての人材不足というのは非常に喫緊の課題であると思います。このような法案が通ったとしても、地域に人材が行かないという話になれば、これは非常に大きな課題が残ると思います。

 その中で、大臣、今回のこの修正に関してどのようなお考えで、地方に対する外国人人材についてどのようにお考えか。

○山下貴司法務大臣

 御指摘の修正につきまして、これはやはり外国人材が大都市圏など過度に集中しないようにするための必要な措置を講ずるよう努めること、これは極めて重要な御指摘であろうと考えております。この修正案についてしっかりと対応できるように検討していきたいと思っております。

 まず、そもそも、やはり人手不足について大都市も地方も変わりない部分はございます。ただ、業種によってはやはり相当深刻な人手不足があり得るということもございます。

 そこで、受け入れる外国人が大都市圏に集中しないための措置として、例えば、まず分野別運用方針、これにおいて地域の人手不足の状況を適切に把握し記載するとともに、地域で人手不足が深刻な業種、例えば農業であるとか漁業などであるとか、そういったものに配慮して対象となる業種を選定するということ。

 そして、第二に、年内に政府として策定する外国人材の受入れ環境整備のための総合的対応策の中で、これはやはり人手不足が深刻な地域の実情に対応した具体的な対応策を盛り込もうというふうにも考えております。

 例えば、具体的には、地方における外国人材の受入れ環境整備を充実させるため、自治体の一元的な相談窓口、外国人が利用可能な医療機関、あるいは外国人児童生徒への日本語教育の充実、そしてハローワークによる地域の就職支援などを着実に進めることなどを考えておりますが、なお、在野の委員の皆様からの御指摘もいただきながら、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

 

○今大臣おっしゃっていただいたように、地域の共生のための総合的対応策というのは非常に重要だと思います。

 先日、自民党としても、群馬県、伊勢崎市、大泉町に伺ってまいりまして、非常に様々な課題を認識してまいりました。例えば、こういった相談窓口の一元化を是非していただきたいとか、あと、緊急性の高い情報、例えば地震とか気候とかですね、そういったものに対しての情報の多言語化、Jアラートも含めてですね、そういったものについても非常に強い要望がございました。あるいは、医療通訳がやはり足りていないという状況もあって、あとは子供の教育についてのやっぱり不安というのも非常に高くございました。

 こういった様々な課題をこの外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策に入れ込んでいただけると、我々もしっかりと提言もしていかなければならないと思いますが、特に、この在留資格を持つ、これは新しい今回の制度の方たちのみならず在留資格を持つ全ての外国人という考え方でよいかどうか、また、そういった対応策のお考え方についてお聞かせをいただきたいと思います。

○山下貴司法務大臣

 外国人との共生社会の実現に向けた環境の整備については、国が一定の責任を負うとともに、政府を挙げて取り組むべき課題であると認識しております。そして、その上で、その整備を進めるに当たっては、外国人の生活の場となる地方公共団体との連携支援が重要であるというふうに認識しております。

 そうしたことから、政府におきましては、外国人材の受入れ・共生のための関係閣僚会議、これを設置させていただきまして、その中において、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策、これを年内に取りまとめるというふうに考えているところでございます。

 そして、法務省においては、そのような観点も踏まえつつ、現在、地方公共団体の関係者の御意見も伺いながら、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策のための検討会を設けて、先ほど申し上げた総合的対応策の年内取りまとめに向けて作業を加速化させているところでございます。そして、その中においては、先ほど委員が御指摘になりました、在留する外国人全体にわたって生活者としての外国人に対する支援、こういったところも大きな柱として設けているところでございます。

 そういった中で、例えば、具体的には、生活、教育、就労に関する情報提供、相談を行う一元的窓口の設置であるとか、あるいは日本の生活習慣に関する理解促進のための政府横断的な生活・就労ガイドブックの作成、例えばごみ出しルールを守ってくれないじゃないかということでトラブルが起きるようなこともございますので、そうしたことも含めたもの、あるいは、日本語教育、これはしっかりとやっていかなければなりませんし、子供の教育の充実もやっていかなければならないわけでございますが、日本語教室の空白地域、これは地域によってはどうしてもあり得るのかなという、あり得るとは思いますが、その解消のため、地方公共団体による日本語教育の開設による国の支援、これをしっかりやっていく、あるいは、ICT技術を用いたそういった日本語教室ということの支援も考えていきたいと考えております。

 そうした施策をしっかりと盛り込んだ総合的対応策ということを作っていくことによりまして、外国人の方々を日本で働き、学び、生活する方として迎え入れ、社会の一員としての生活環境も確保するということで、おいでになる外国の方も、受け入れる日本の側も、お互いが尊重し合えるような多文化共生社会の実現に向けた体制整備を進めてまいりたいと考えております。

 

○地域によって外国人が来られた背景も違いますし、入ってこられる国の方も違いますので、地域に対して柔軟に対応できる仕組みをつくっていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、我々自民党としても非常に厳しく今回重要な決断でございました。しっかりと丁寧に、一つ一つ丁寧に進めていただきたいと思います。成案した場合においても、この運用をしっかりと党としてもチェックしてまいりたいと思います。大臣、一言お願いします。

○山下貴司法務大臣

お申し越しの趣旨は本当にしっかりと受け止めていきたいと考えております。

○終わります。