○五月のロシア新政権の成立後の日本政府としての今後の動き方について伺いたいと思います。
 

○玄葉光一郎国務大臣

 私はロシアを重視しています。戦略環境が変わってきているという中で、日ロの関係というのは新たな重要性を帯びているというのが私の認識であり、日本国政府の認識でもございます。

 そういった中で、あらゆる分野において日ロ関係というものを深めていく、協力関係を深めていく中で、北方領土問題というもの、北方四島の帰属の問題を解決をして平和条約を締結をしていくということでございます。

 

○プーチン首相の発言をめぐる報道について伺いたいと思います。

 三月一日、プーチン首相は日本との領土問題を最終的に決着させることを非常に欲しているという報道をされましたが、この発言は、一部の地元の北海道新聞という報道機関もありますが、この発言は、玄葉大臣による、一月二十八日、東京宣言至上主義から日本が離脱するというシグナルをプーチン首相にあてたからだと、そのようなことにも一部見解をされておりますけれども、どのようにお考えですか。

○玄葉光一郎国務大臣

 まず、プーチン次期大統領の発言でございますけれども、これにつきましては、日ロ関係における領土問題解決の重要性を指摘をしています、おっしゃるとおり。その解決に意欲を示すものであるというふうに期待をしているところであります。

 一月二十八日のラブロフ外相との会談におきましては、四時間から四時間半にわたって様々な分野において議論をしたところであります。あのときに、領土問題でのやり取りということを紹介できる部分を紹介をいたしますと、私から、北方四島の帰属は日本にあるというのが日本の立場であるということを伝えた上で、この議論について、つまりは領土問題の議論について棚上げしないで、棚上げしないで再活性化させようではありませんかと、こういう提案をしたところであります。その提案に対してラブロフ外相から、新政権樹立後にまさに領土問題について議論していこうではないかという発言がありました。

 私は、この間も、またこの委員会でも、何とか実質的な議論を開始をしていかなければならないと。この間、なかなかそういった議論が行われにくい環境にあったわけでありますので、それを踏まえてそういった提案をし、ラブロフ外相からは先ほど御紹介をさせていただいた発言がございましたので、今回のプーチン次期大統領の発言も、その意味では軌を一にするものであるというふうに考えております。

 

○三月七日、衆議院の方の沖縄北方特別委員会がございました。その中で、浅野委員からの質問で、今後、二〇〇一年、イルクーツク声明に基づいた交渉を行っていくと理解してよいかという質問に対して大臣は、一九五六年の日ソ共同宣言が平和条約交渉の出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認したものだと、その上で、一九九三年の東京宣言に基づいて、北方四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべきことを再確認した重要な文書と答えています。

 つまりこれは、一つは日本の法的立場の強い歯舞、色丹の二島の具体的返還に向けた交渉をする、そして国後、択捉の二島の帰属の問題、この二つを同時並行的協議をしていくというメッセージとして受け取ってよいかどうか、伺いたいと思います。

○玄葉光一郎国務大臣

 まさに、領土交渉の中身につきましては交渉事でございます。お互いの今信頼関係が増してきているというふうに率直に思います。

 そういった率直な今受け止めをしているんですけれども、やはり、特に両国間の首脳あるいは外相間で、その信頼関係を基に直接会って領土交渉というものは行っていくというのが何より大切なことであるというふうに考えております。

 

○それでは、ちょっと角度を変えて伺いますけれども、外務大臣の所信において、ラブロフ外相と静かな環境の下で両国間のこれまでの諸合意、諸文書及び法と正義の原則に基づき問題解決のために議論を進めていくことで一致したと述べられておりますけれども、法と正義の原則に基づき問題解決するということはどのようなことなのか、伺いたいと思います。

○玄葉光一郎国務大臣

 いつも、この間も、両国間で交わされた諸合意、そして諸文書、そして言わば法と正義の原則、この法と正義というのはいわゆる一般的に国際法などで使用されるという意味での法と正義ということでありますけれども、あえて先ほどの諸合意、諸文書のところについて申し上げれば、東京宣言というのは、択捉、国後、色丹及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決して平和条約を早期に締結するという日ロ共通の方針を初めて文書の形で確認したものとして、日ロ間の平和条約交渉の基礎となる重要な文書である。

 あわせて、二〇〇一年のイルクーツク声明は、一九五六年の日ソ共同宣言が平和条約に関する交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した上で、東京宣言に基づき、北方四島の帰属に関する問題を解決することにより平和条約を締結することを再確認した、これも重要な文書であります。併せて言えば、プーチン次期大統領が大統領時代に直接署名をした重要なものであるというふうに考えております。

 

○法と正義という言葉がありますが、これは日本固有の北方領土を不法に占拠していることをも入っているのか、伺いたいと思います。

○玄葉光一郎国務大臣

 いわゆる、例えば、これはそれぞれ国際法上解釈があって、我が国の立場として、例えばサンフランシスコ平和条約における解釈の問題だとか様々あるわけであります。そのときにきちっと我が国の立場として考えているまさに法と正義、かつ、ある意味国際社会全体で、この国際法全体の原則の中で、言わば通用する通用しないという言葉が適切かどうかということはありますけれども、そういう中でしっかり我が国の立場を確保していくという意味でございますので、そういう意味では、今おっしゃったように、法的解釈というのは、これまたよく不法占拠と法的根拠のない占拠はどう違うんだとかいろいろ言われますけれども、これはもう法的解釈は変わらないと、我が国の立場は変わりませんと、一貫していますということでございます。

 

○最近、玄葉大臣がロシアが四島を不法占拠しているという発言をしなくなったというふうに言われておりますが、その認識はありますか。

○玄葉光一郎国務大臣

 これは、御存じだと思いますけど、実は自民党政権時代もそういうところがあるんです。これは私は、先ほど申し上げたように、不法占拠だろうが法的根拠のない占拠だろうが、法的評価に変わりはないというふうに考えています。そして、現実に我々日本国政府としてもそういう立場であります。

 それで、結局交渉事なんですね、領土の問題というのは。交渉事で解決をしなきゃいけないんだと私は思っています。ですから、そういうことを踏まえて表現ぶりというのは私は考えていいというふうに思っているんです。ただ、法的立場は変わりはないということでございます。

 

○それでは、不法占拠という発言をしなくなったのは大臣の意思なのか、外務省としての意思なのか、伺いたいと思います。

○玄葉光一郎国務大臣

 もちろん、それは最終的に私の意思でございます。

 それはなぜかというと、私の言葉として発している、つまり発出しているわけでありますので、例えば自民党政権時代もたしか二〇〇七年のときは法的根拠のない占拠という形で実は表現をしています。私も、もちろんこの問題について全く何も考えていなくて、そのまま、例えば外務省が言ってきたからどうだこうだということではなくて、私なりに先ほど申し上げたことを全て踏まえた上で申し上げていると、言っているというふうに申し上げたいと思います。

 

○その冷戦期の不法占拠論というのは、一九五一年、サンフランシスコ平和条約で日本政府が放棄した千島列島の範囲の当時の認識が、国後、択捉から成る南千島が含まれていた、あるいはそうではない、含まれていないということに焦点が当たるということからこのような不法占拠論については今控えているという認識ですか。

○玄葉光一郎国務大臣

 もう御存じのように、例えば先ほど申し上げたように、例えばサンフランシスコ平和条約の解釈の問題なんというのは、もう我が国の立場は全て御存じのとおりであります。

 ですから、余り具体的にそういったことについてこの場で申し上げるのが適当かどうかということはあるんですけれども、いずれにしても、そういった議論はそういった議論で、実はこれもまたどこまで申し上げていいのかどうかというのはあるんですが、それは交渉の中で度々やり取りというのはなされることはあるわけでございますけれども、私が考えているのは、北方四島の帰属の問題を解決をしていって平和条約を結ぶ、そして我が国の立場が確保される、そのためにどういうふうに発言をし行動したらよいのかということを考えて発言し行動しているというふうに考えていただければと思います。