自由民主党の北海道の長谷川岳です。
 本日は、TPP、水産物の価格低迷、そして鳥獣被害という題を取り上げさせていただきますが、今外務省の浜田政務官が遅れられるということですので、まず最初に水産物の価格低迷補償について伺いたいと思います。
 水産物の価格が非常に低迷している魚種があります。これは、今般の東電事故によって、輸出ができず国内でだぶついているのが原因であると。この場合、東電が魚価の下落分について満額補償することはできるのか伺いたいと思います。また、これに携わる流通業者に対しても、原発影響で水揚げが非常に激減をしております。流通業者に対しても十分な対応になっているのかを伺いたいと思います。文科省、お願いします。

○文部科学省 藤木 研究開発局長 
 お答え申し上げます。
 まず、原子力損害賠償紛争審査会が策定いたしました中間指針でございますが、まず類型といたしまして、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県の水産物に係る風評被害、それから輸出先国の輸入拒否などの輸出に係る風評被害、これにつきましては、まず類型として損害の対象と示されております。また、この中間指針におきましては、このように指針に類型として示されている被害だけではなくて、本件事故の以降に現実に生じた農水産物の買い控えなどによる被害、こういうものがございましたときには、その発生状況あるいは取引価格の動向などに応じまして、事故との相当因果関係が認められる場合は賠償の対象となる旨、これも明記されております。
 委員御指摘の魚価の下落のケースにつきましても恐らくいろいろなケースはあると思いますけれども、このような指針の考え方に沿って基本的に判断していくべきものということで考えております。
 以上でございます。


○満額補償することはできるかと言っているわけで、短めに答えてほしい。
○文部科学省 藤木 研究開発局長 
 大変失礼いたしました。
 先ほどのような発生状況あるいは取引価格の状況等を検証いたしまして、その被害と認められるものはもちろん全て損害賠償の対象になるということであります。
 そして、申し訳ございません、一点、先ほど流通業及びその加工業等に係る部分につきましても同様であるということでございます。


○自民党の部会において、東電の農林水産物の補償基準は東電の主観的基準であるというふうに私もその場で伺ったんですが、文科省、まずどうですか、その点については正しいでしょうか。
○文部科学省 藤木 研究開発局長
 お答え申し上げます。
 まず、当然でございますけれども、先ほど申しましたように、今回の原発事故との相当因果関係が認められる損害は全て東京電力による適切な賠償が行われるべきというふうに考えてございます。
 まず、先ほど原子力損害賠償紛争審査会におきまして中間指針を策定したと申し上げました。東京電力におきましては、この指針を踏まえて公正、迅速な賠償を進める旨、表明しておられるというふうに承知しております。文部科学省といたしましても、この指針策定直後に当時の高木文部科学大臣が直接、西澤東京電力社長をお呼びいたしまして、中間指針を踏まえて被災された方々との間で円滑な話合いと合意形成を進め、速やかな賠償が実施されるよう強く要請したところであります。
 いずれにしても、こうした中間指針で示されている考え方、方針に沿いまして、賠償すべきものは全て賠償するという姿勢で東京電力の賠償が行われる進捗を見守っていきたいというふうに考えております。


○経産省にも伺いますが、経産省は以前の部会で私が直接伺いましたが、補償基準は一切関与していないと答弁しておりましたが、いかがですか。
○経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 糟谷 部長
 東京電力の補償、賠償でありますけれども、中間指針に示されている考え方や方針に沿って行われておりますが、指針に算定方法の具体的なところまで書いておりませんので、その具体的なところは東京電力が基準を策定しまして、農業団体との協議を通じて合意を得て、合意を得られたものに従って賠償をしていると承知しております。その過程で経済産業省としては具体的に関与はいたしておりません。


○農水省に伺いますが、今回の補償基準というのは適正と考えているでしょうか、伺いたいと思います。
○鹿野 農林水産大臣 
 いわゆる今お話しになられました補償基準ということにつきましては、当事者であるところの東京電力が、お話しのとおりに一方当事者である東京電力が定めたものだと、こういうふうに理解をしておりますが、そういう中でも現実ということを考えたときに、実際の賠償におきましては被害者側の個別具体的な事情に応じたいわゆる対応がなされておるものと、こういうふうなことも承知をいたしております。
 そういう意味で、農林水産省といたしましては、被害者の側の人たちが不利にならないように、こういうことで今日までも七回にわたりまして協議会、説明会というふうなものを行ってきたところでございます。いわゆる連絡会議ということです。そういう中で、被害者側のお話というもの、お考えというものをできるだけ東京電力に受け入れてもらうような、そういう橋渡し役もやってきたところでございますけれども、これからもとにかく現状に合った、被害者の方々が不利にならないような形でこれからも強くそういうところは被害者の側に立った一つの視点で強く求めていくところは求めていきたいと、こう考えております。


○是非とも農水省として補償基準が適正かどうかというチェックをする体制を是非ともつくっていただきたいと思います。
 それから、各地域、今やはり水産、これから被害も水産物に対する放射線被害というもの、それから風評被害もこれからまた出てくるのではないかというふうに思われますが、各地域、各港での水産物の放射能検査の実施、あるいは強化というのをどのように考えておるかお答えいただきたいと思います。
○鹿野 農林水産大臣 
 これは風評被害防止のためにも非常に重要なところでございまして、できるだけそういう調査が、地点が多くなるように、このようなことから機器の整備なりというふうなところに農林省も全力を挙げているところでございますけれども、これからも風評被害防止並びに食の安全というものを確保するために調査の強化ということについて取り組んでまいりたいと思っております。


○北海道において、少し話は飛びますが、北海道においてはトド、オットセイの被害というのがかなり出ております。その漁業被害と対策について、次は伺いたいと思います。
 一九一一年にラッコ、オットセイの保護国際条約というのが制定されまして、日本国内においても一九一二年、明治四十五年にラッコ、オットセイの猟獲取締法というのが整備されました。一九四〇年に日本が破棄通告し、翌年の四一年、一九四一年に条約が失効となりました。再び一九五七年、北大西洋のオットセイ保護条約が結ばれ、一九八八年にその条約は失効となっておりますが、そもそもこの国際条約に基づいて国内法を整備したという経緯から考えますと、この明治四十五年の臘虎膃肭獣猟獲取締法というのは、この法律はもう要らないのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○岩本 副大臣 
 長谷川先生にお答え申し上げます。
 平成二十二年度におきましてトドによる被害は約十五億円に上っております。北海道等と連携して駆除、追い払いの手法の実証試験、あと出現調査等を実施しておるところでございます。平成二十四年の概算要求でもこれらの対策にかかわる予算を引き続き要求しているところでございます。
 御承知のとおり、一度失効したと。これはもう第二次世界大戦の直前でございまして、その後また戦争が終わって締結されたんですけれども、米国が環境保護団体の反対活動を受けてこういう延長議定書の批准を行わなかったため失効しているわけでございますけれども、甚大な、本当、漁師の皆さんは本当にすがる思いでこの問題解決したいと思われておりますので、しっかりと、私も現場に行きまして取り組んでまいりたいと思います。


○じゃ、一度現場を見てくださるという考えでよろしいでしょうか。
○岩本 副大臣
 そうでございます。


○ありがとうございます。
 ゼニガタアザラシの漁業への被害も生じておりまして、ゼニガタアザラシというのはどのようなものを食べ、そしてどのような被害があるのかというのをやはり調査をする必要があるというふうに思いますが、今後このような調査をする考えがあるのかも伺いたいと思います。
○環境省 渡邉 自然環境局長 
 ゼニガタアザラシに関しましては、近年、サケの食害が増加をしております。そういった食害の増加を受けまして、環境省におきましても、水産業との共存、これに向けまして、平成二十二年度から襟裳地域におきましてゼニガタアザラシの生息状況、そして漁業被害の実態を把握するための調査を実施しております。また、電気ショッカーや花火などを使って定置網にゼニガタアザラシが近づかないようにすると、こういった被害軽減対策を検討するための実証試験を並行して進めているところでございます。
 地域の皆さんの意見も聞きながら、効果的な調査あるいは対策の実施ができるように対処してまいりたいと思います。


○効果のないものもたくさんありますので、是非とも効果のある退治の仕方をしていただきたいというふうに思います。
 次に、北海道も含めて、今、鳥獣被害というのが非常に多く出ておりますが、先日、私も森遊人という北海道の若手ハンターの方々の集まりに参加をしてまいりました。これは一般企業のサラリーマンの方が圧倒的に多く、大体二十代から四十代の方々で年齢構成はなっておりまして、その他、農業、自衛官、医師、会社経営、財団職員、IT関係の方々で構成されている団体なんですが、いろんな話合いができました。やはり、今、銃を所持することは厳格な判断が必要であるということは十分に認識をしておりますが、しかしながら、同時にサラリーマンハンターの増加、あるいは有給休暇の特に取りづらい若手のハンターの養成をすることも私は非常に大切なことだというふうに思います。
 そこでお尋ねしたいのが、現在は、新たに猟銃の免許を取得する際に、申請は警察の就業時間のみの受付なんです。新たに免許を取得する際に、月に何回でもいいから、土曜日、日曜日及び祝日、あるいは平日の夜間の受付というのを是非やってほしいという声が強くありますが、警察庁、お答えをいただきたいというふうに思います。
○警察庁 田中 長官官房審議官(生活安全局担当) 
 お答えをいたします。
 今お話がありましたとおり、銃砲、特に猟銃につきましては人を殺傷する能力があるわけでありまして、この許可の取扱いについては非常に慎重に警察でもやっておるところでございます。
 そこで、今、平日の昼間のみの取扱いになっておりますが、もし休日あるいは夜間というときに許可事務を行うということになりますと、この特殊な銃砲に関する専門的な知識を持った職員を相当数配置することが必要となります。現在の体制では非常に困難ではないかと、このように考えておる次第でございます。


○警察庁の方に言いますと、北海道、今エゾシカが六十四万頭いるんです。第二の人口の旭川で人口三十六万、それをはるかに超えているんです。しかも、私もこれ先日、つい先日なんですけれども、地元で車の移動中、かつて出てきていないところ、出てきたことのない場所でエゾシカが出てきまして、二メートルを超すエゾシカ、もう間一髪というか危機一髪というか、そういう状況の中で難を逃れることができました。
 つまり、警察庁の方、これは非常に認識をしていただきたいのが、有害鳥獣による交通事故増加防止のためにも、やはり申請受付の時間延長というのは警察庁には特に力を入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○警察庁 田中 長官官房審議官(生活安全局担当) 
 鳥獣被害につきましては、大変深刻化していることは私どもも承知をしておりまして、銃刀法の運用の中で様々な利便を講じておるところでございますけれども、許認可申請につきましては、今申し上げましたように、もちろん基本的には各県の方で体制を考えて対応すべきではありますけれども、全国的にも昼間以外のところにやるということはやっておらない現状でございまして、体制的にはやはりちょっと厳しいのかなと、このように考えております。


○銃を持つことの規制を緩和しろと今言っているわけではありません。申請の受付の時間の延長は行政としての努力が必要ではありませんか。
○警察庁 田中 長官官房審議官(生活安全局担当) 
 銃の許可と申しますのは大変なこれは専門的知識が必要でございまして、普通の例えば遺失物の届出のようなものとは異なるわけでございます。このような専門性のあるものを増員するということは大変困難ではないかな、少なくとも現状の中では難しいのかなと、このように考えておる次第でございます。


○これ、しぶとく言いますけれども、交通事故の増加も鳥獣被害によって増えているんです。こういうことの観点からでもこれは難しいですか。
○警察庁 田中 長官官房審議官(生活安全局担当) 
 ちょっと……


○検討してください。
○警察庁 田中 長官官房審議官(生活安全局担当) 
 はい。北海道と地方の現状などを更に研究いたしまして、対応について考えたいと思っております。


○是非ともよろしくお願いいたします。
 それから、北海道において国有林に入林するに当たって、道東エリアを除く入林については各々の森林管理署に入林申請をして地図を入手しなければならないのが今実態です。全道で一括で、入林許可者に対しては許可番号とか並びに氏名のみで地図を一括入手できたり、あるいは各森林管理署にて簡素に地図を入手できるような一元管理の仕組みというのは私は是非とも必要だと、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
○森本 大臣政務官 
 長谷川委員の質問にお答えさせていただきます。
 確かに、おっしゃられるように今、道東の五森林管理署においてはそうしたことを実行させていただいております。猟友会との連携というものが十分必要でございますが、今後につきましてはこの一括入林承認の仕組みを全体に拡大するように検討をいたしてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。


○是非ともスピード感を持ってやっていただきたいと思います。
 同時になんですが、ハンターに提供する各地域の地図作成において、それぞれ地域でばらばらなんです。凡例のフォーマットの統一をやっぱり行っていただかないことには、ハンターが間違ってしまったり誤認をしてしまったりということになりますので、この誤認を防いで安全確保につながるというふうに私は考えますが、このフォーマットの統一と、併せてこの地図をホームページに公開する、それによって山菜取りをする方とか、あるいは渓流釣りをされる方、こういった方々が今事故に巻き込まれることも多くありますので、ホームページに公開することによって、そのようなハンター以外の皆さんの安全を確保するということが私は必要だと思いますが、このホームページの公開、できるだけ早くやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○森本 大臣政務官 
 今、長谷川委員がおっしゃいましたように、入林者の安全というものが一番やっぱり大事でございますので、ここのところ、しっかりとこの地図につきましても、聞いておりますとやはりところによって違うというような、ここは統一をするように指示をいたします。
 そして、ホームページにつきましても、ここのところを早急に、スピード感を持ってという今お話いただきましたが、そのように私の方からも指示をさせていただきます。
 改めて被害の状況を聞かせていただいて、私の地域も猿とイノシシと鹿でもうめちゃくちゃ、まあ私の子供のときは猿はおりの中にみえていただくものが、今は残念ながら人間がおりの中で作業をしておるような、このもう四十年、五十年で隔世の感があります。こうした問題、事故の問題も踏まえて認識いたしておりますので、頑張ってまいります。


○ホームページについては確約を受けたということでよろしいでしょうか。
○森本 大臣政務官 
 これはしっかり前向きに実行するように指示をいたしていきますので、よろしくお願いします。


○それともう一つ大切なのは、刑法三十七条、緊急避難としてやむを得ず銃を使用した場合、そしてこのことにおける、生じる全ての責任、例えば誤射などをしてしまった場合に、刑事だけではなくて民事の全ての責任を捕獲隊員全員、個人が負うことになります。行政からの依頼によって住民の安全のために危険な任務を遂行している捕獲隊員に過大な負担を強いているのが今の現状です。捕獲隊員のみに課せられる現行制度の改正と併せ、捕獲隊員の市町村臨時職員の身分取扱いの法制化に取り組む必要があることを要望いたします。
 これは各省が連携して取り組んでいただきたいと思いますが、農林水産省、ちょっとこういうことについて御姿勢を示していただくことができればというふうに思います。
○鹿野 大臣
 各省庁とも連携を取り、今問題指摘がありましたことにつきまして、いろいろとお互いに勉強してまいりたいと思っております。


○そしてもう一つは、これは国の、先ほど、ちょっと話を戻しますけれども、国だけではなくてやっぱり県有林とか道有林という部分で同様のやはり方策をしてほしいというふうに思っておりまして、各県と連携を取って入林手続の簡素化に向けて取り組んでいただきたい、そのように思いますが、いかがでしょうか。
○森本 大臣政務官 
 この件につきましても前向きに検討をいたしてまいりますので、よろしくお願いします。


○ありがとうございます。もう一つ伺います。
 地域協議会が捕獲活動をする際に弾代やあるいはガソリン代などの経費が非常にかかっておりますが、行政からの助成金で賄えないという状況でありますけれども、十分なやはり助成措置というのを考えていくのが私は必要だと思いますが、いかがでしょうか、農林水産省の考え方。
○岩本 副大臣 
 農林水産省といたしましては、地域の捕獲活動に対する支援措置としまして、鳥獣被害防止総合対策交付金におきまして、箱わな等捕獲機材の導入、また狩猟免許取得のための講習会の開催、捕獲鳥獣の処理加工施設の整備等を支援しているところでございます。
 委員御指摘のガソリン代ということなんですが、現段階では弾代は入っておりますけれども、ガソリン代を支援の対象とすることは現段階では困難と考えているところでございます。


○やはり急増する有害鳥獣の被害を鑑みて、そういった今までにない措置を思い切ってとっていただくことも必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○岩本 副大臣 
 現場の状況ももっともっと把握して、臨機応変に対応できるところは対応してまいりたいと思います。


○ありがとうございます。
 続きまして、やはりTPPの問題を取り上げたいと思います。浜田政務官、公務の後、ありがとうございます。今日は国際政治学者であります浜田外務政務官にお聞きしたいと思います。
 浜田政務官は、「恐るべきTPPの正体 アメリカの陰謀を暴く」という著書でも、著者でもありまして、この中には、日本に利益をもたらさない平成の開国、アメリカ主導で作られるTPP協定案文、そしてアメリカの要求は更なるアジア市場の開拓、そしてTPP交渉の裏で暗躍するアグリビジネス、TPPという黒船に日本は潰されるという主な項目立ての中で、四月三十日、ちょうど六か月前に発行されたものでありますが、まず浜田政務官に伺いますが、この本の主張にお変わりはございませんか。
○浜田 大臣政務官 
 今御指摘をいただきました「恐るべきTPPの正体」という本は、この四月に発刊させていただきました。当時、私は自民党に籍を置いておりましたし、農業関係の団体の方々に大変強い御支援をいただいていました。そういう観点から、TPPの問題点についていろいろと私なりに調べて、その本に全てインプットしたわけであります。基本的な考えは変わっておりません。
 ただ、現在、私は政府の一員として、TPP、これについての様々な賛成論、反対論、いろいろと協議し、その中で本当に日本の国益にかなったものになるのかどうかということについて今協議を進めている最中でございます。


○一年前よりTPPについての勉強を一緒にさせていただいたというふうに思いますが、浜田政務官にとって外交の基本というのは何ですか。
○浜田 大臣政務官  
 外交というのは、やはり日本の国益を最大限に守る、あるいは増進する、そのために必要な手だてをやはり講じることだと思っております。


○TPPというのは日本から出てきた発想ではありません。にもかかわらず、今現在、TPP交渉参加について政府はアメリカにはっきりと今、現段階で断れない背景があるのではないですか。アメリカに何かそういうような借りをつくっているとすれば、これは何であるか含めて伺いたいと思います。
○浜田 大臣政務官  
 長谷川委員がおっしゃっているような、日本が断れないような何か裏があるのかどうか。私はそういうことはないと思っております。日本の決断、これはアメリカ側も日本が自前にきちんと検討して決めればいいことだと繰り返し言っておりますので、それはあくまで日本側の決断次第だと思っております。


○昨年九月、尖閣諸島で中国漁船衝突事件が起こりました。十月二十八日、ちょうど一年前になりますけれども、ヒラリー当時の国務長官から当時の前原外務大臣に、尖閣諸島は日米安保条約の第五条が適用される対象の範囲内であるという重要な発言がありました。
 民主党政権になってからというもの、普天間飛行場の移設問題は全く解決しておりませんし、民主党の外交失態を取り返すために、アメリカと生じた亀裂を修復させるためにこのTPP参加という安易な妥協が生まれたのではないかと私は思いますが、いかがですか。

○浜田 大臣政務官  
 長谷川委員の御懸念も分からないわけではございませんが、もしアメリカが普天間の問題とTPPの問題をリンクするというようなことで考えているとすれば、先般もパネッタ国防長官が来られまして、普天間の問題いろいろと議論がありました。しかし、TPPに関しては一言も言及されていません。
 やはりそういうことを考えますと、日本とアメリカとだけの問題じゃないわけですから、急成長を遂げるアジアの市場と日本がどう向き合うか、それはTPPがプラスになるかどうかということでありますので、アメリカ側だけの圧力で何か日本が抜き差しならない状況に置かれているということは私はないと思います。


○パネッタさんの会見の議事録読ませていただきましたが、パネッタさんはTPPという言葉は一切使っていませんが、しかしながら、太平洋におけるアメリカのコミットメントというか、そういう位置付けを非常に大切にする、これからも強くする、プレゼンスを強くするとはっきりおっしゃっていますが、その点はこのTPPと直結する話ではありませんか。
○浜田 大臣政務官  
 その点は、長谷川委員が先ほどもおっしゃったように、中国との関係、尖閣の問題、あるいは韓国との関係の竹島、その他日本周辺をめぐる安全保障上の懸念材料が大きく今あるわけですから、そういう点でパネッタ国防長官がこのアジア太平洋における重要性を述べられたのは、私、当然のことだと思います。


○パネッタさんは経済も含めということを言っていることを申し伝えておきますが。
 一つ質問を変えます。
 政府がTPP交渉に向けて国内議論の集約を急いでおりますが、ハワイのAPECに対して、集約が遅れた場合、どのようなことが想定されますか。政務官の考え方で結構です。
○浜田 大臣政務官 
 それは、その集約が遅れた場合には、当然、APECにおける日本の表明というものもその影響を受けると思います。


○それからもう一つ伺いますが、我が国としてTPP交渉に参加し、交渉いかんによっては途中で離脱できるということを前原政調会長はおっしゃっていますが、国際信用上そういうことができるんですか、本来。国際政治学者としての浜田政務官のお考えを伺いたいと思います。
○浜田 大臣政務官  
 お答えします。
 それは、確かに日米関係を考えれば決してプラスではないとは思いますが、準法律的、準条約の交渉の段階で、前もって考えていたことが交渉に参加してみたら違っていたということになれば、それは撤退するということは当然保証されていることだと思います。


○保証されている内容と国際的な評価というのは別だと思うんですが、いかがでしょうか。
○浜田 大臣政務官  
 それは、日本がどういうような外交的な説明、説得ができるかどうかだと思いますね。


○それをもう少し詳しく伺いたいと思いますが。
○浜田 大臣政務官 
 いや、これは、アメリカの国内にも必ずしもこのTPPに関しては合意ができているわけではありません。また、今九か国が加盟交渉をしておりますけれども、まだ最終的な結論が出たわけではありません。
 そういうことを考えますと、日本が交渉に参加した後に、具体的な協議や、来年もまあ最低でも五回はTPPに関しては協議を行うということが言われていますもので、その過程の中で日本の国益にプラスにならないというようなことが明らかになった場合には、それは日本の国民に対しても説明する、その上で、交渉参加国との間でも、そういう条件であればのめないということを当然説得し、日本が離脱するということも可能性としては私は担保されていると思います。


○今政務官が言われたように、アメリカの中で国内的合意が取れていないというふうに伺いましたが、その国内的合意が取れていない背景はどの分野、どういうふうな背景があると考えておられますか。
○浜田 大臣政務官  
 それはUSTRのホームページを見ていただくとお分かりになるように、アメリカで国内のステークホルダー二百五十団体が常に自分たちの言ってみれば国内の利益というか、それを守るために働いてロビー活動もしているわけですよね。ですから、特に農業団体におきましては、酪農、畜産、あるいは砂糖、そういうところは大変厳しい反対意見があることは承知しております。


○著書によると、TPP以上にこの今の円高の方が海外進出している企業にとっては悪影響と考えると。浜田政務官のお考えを伺いたいのは、今優先すべきことはTPPですか、それが円高対策ですか、そこら辺の考え方を伺いたいと思います。
○浜田 大臣政務官  
 これはおっしゃるとおりだと思います。
 円高が日本経済にとって大変なおもし、足かせになっていることはもう多くの方々が納得されていることだと思います、日本の輸出産業にとってはこれは大変な状況ですから。ですから、TPPに参加することとこの円高対策をどうするか、これはやはり両方を同時進行で進める必要があると思いますし、韓国のウォン安につきましても、今の欧州の経済危機、そういうものの影響を受けて韓国経済が相当おかしくなってきているという状況もありますので、そうしますと、まさに通貨を切り下げるとか、そういう金融通貨政策だけでこの厳しい状況を乗り越えられるかどうかということは、これはなかなか別の判断が必要になってくるんであって、総合的に、アメリカとの関係も大事にしながら、成長を遂げるアジアとどう協力していくのか。その中でTPPが本当に日本の産業にとって、輸出産業にとってプラスなのかどうか、そこのところの大きさですね、ここは必ずしも通貨政策だけで対応できるものではないと私は思います。


○それでは、通貨政策にTPPを加えればこの輸出産業が強くなると、そういうようなお考え方になったのかどうかを伺いたいと思います。
○浜田 大臣政務官  
 なったのかということではなくて、それは厳然たる今の世界の貿易あるいは金融のライバル同士の戦いぶりを見ていますと、これはもう独自の通貨政策は必ずしも日本としてもまだ十分対応が取れていない部分がありますので、そこはしっかりとした円高政策、総合政策を今遂行しようとしていますので、それを推し進めつつ、信用問題として、TPPに対して日本がどういう立場、どういう姿勢で臨むのか、そこを与野党の中でしっかりと合意ができるかどうか、そこが大事だと思いますので、自民党の中においても、民主党の中においても、その他の様々なところで議論が今まだまだ煮詰まっていない部分がありますから、そこをしっかりしないと、誤ったメッセージ、それがひいては、日本の通貨に対する、日本の経済、対外政策に対する信用をおとしめることになる、そのことを私は大変危惧しています。


○随分TPPに対する考え方がお変わりになったんじゃないかというふうに思います。
 浜田政務官、私たちのこの、日本海新聞の中で、TPPの問題の本質は、米国、アメリカに都合の良い、新たな世界市場戦略の基準作りなのである。一方的な米国式ビジネスモデルは拒否し、独自の地産地消と技術立国を目指すことこそが日本の生きる道だと思われると、新聞にしっかり自分の著書で、著者として書かれている。
 このお話と今のお答えというのは、どうも私は乖離して思えるんですが、いかがですか。
○浜田 大臣政務官  
 お答えします。
 確かに、日本にとってアメリカの言いなりになるというようなことは避けなければならないと思いますし、やはりアメリカとしても、どこの国でも自分の国の国益を最大限に取り込むということは当然の話であります。
 ですから、このTPP、途中からアメリカが参加してきた、そこにはそれなりの背景があるわけでありますから、日本としてもその背景をしっかりと理解した上で、それが本当に日本のためにプラスにならないんであれば、それはもう当然拒絶すべきだと思いますけれども、やはり様々な今交渉が進んでいるわけですから、その中で日本の立場を生かせるという可能性も否定はできないわけであります。
 そういう意味で、交渉を進めるかどうか、そのためには情報収集が必要ですし、その情報収集に基づいた徹底的な議論が私は必要だと思います。


○政務官が以前、政務官になる前に、この六か月前の著書と、それから今の御発言は随分乖離があるように思いますが、私は、本来、議員の主張を通すために政府の一員になられた、そしてやはり政府に入ったら主張を消すというのであれば、私は、政府の一員になったあなたの存在が私は意味がない、そのように思います。
 私は、今回、外務政務官として国益に反するTPPに前のめりである玄葉大臣を諭す必要がある、それをやるのがあなたが、この政治主導たる政務官の役割だと、使命だというふうに思いますが、いかがですか。
○浜田 大臣政務官  
 私も、自分の信念に基づいて政治活動をしてまいっておりますし、これからも続けたいと思っております。
 そういう意味で、玄葉大臣であろうと野田総理であろうと、このTPPに関してもっと徹底的な議論をし、本当に日本の国益にかなうものかどうか、そこまで見極めた上で今度の十一月のAPECの総会に臨んでいただきたいと思っております。
 今はその過程にあるわけでありまして、私自身も、これまでの様々な情報ルートを通じて政府とは別の情報を収集したり、それに基づいて政府内での議論に生かせる、そういうことを心掛けておりますので、是非その点を御理解いただきたいと思います。


○今の段階の情報収集の中では、TPPに政務官としては賛成ですか、反対ですか。
○浜田 大臣政務官  
 私、個人的にはまだまだ問題が煮詰まっていないと思っております。


○いつも政務官は質問主意書を出されておりました。で、TPPの参加のメリット、デメリットを明らかにしてほしいと再三尋ねていました。政府から一切の答えがない、毎回お答えする立場にないと、それは、これでは国益を守るべき国会議員としてとてもじゃないが承服するわけにはいかないとお答えしています。私も同じです。
 もしも政務官が、今政府の中で、やはりより分かりやすく、私たち国会議員も含め、全員にメリットとデメリットをより詳しく、そしてこういう懸念があるということをはっきりと、国際政治学者として、政務官として、立場としてしっかりと明確にしていただいて、そして何よりもこれは国益にかなわない、私たちはそう確信を持っておりますが、この国益にかなわないということであれば、堂々と大臣に、玄葉大臣に対して、やはり諭すぐらいの勇気と、それから私は良識を持っていただきたいと、そのようにお願いしますが、いかがですか。
○浜田 大臣政務官  
 その点については、私、全く同感であります。


○質問を終わります。ありがとうございました。