✴️あしや温故知新VOI.19 「旧芦屋図書館、松濤館」 ✴️review 懐かしのバックナンバー22


  1930年、金庫業の実業家松山与兵衛氏が旧逸見銀行だった建物を「松濤館」美術品収蔵庫として現在地(兵庫県芦屋市打出小槌町打出公園のすぐ北側)に移築、市が買い取り、1954年に芦屋市立図書館となりました」

と記録にあります。

 

 2階建の組積造(石造り)の鉄筋コンクリートの洋館です。1990年に改修しています。建築面積は150㎡。登録有形文化財(建造物東と北の外壁はルスティカ風に花崗岩を積み、重厚な外観とする。


 隅部は円弧状とし、2連アーチ窓を配し、軒にデンティルを施す。イタリア・ルネッサンス邸宅風の意匠が見られる素敵な建築物です。

  

 北隣の小槌幼稚園の土地も、元は松山さんのお屋敷の敷地でした。松山邸の母屋は第2次世界大戦の戦火で焼けたので、ご家族はしばらくこの建物にお住まいだったそうです。


  また、戦後しばらくしてからはアメリカの進駐軍に接収され、そのあと警察予備隊(自衛隊の前身)も駐留していたとの記録も残っています。昭和にも歴史が重ねられた貴重な文化財です。

 

 ここが図書館になり、エアコンが設置されたらそれを目当てに多数の子供たちや受験生が殺到しました。私などは単に涼みにいっただけですが、それでも読書に触れるチャンスが多くなりました。


 図書館員の方に「あんたら勉強しないんだったら、隣の猿公園で遊んで来たら?」確かに私たちは図書館の正しい使い方も知らずに漫画「世界偉人伝」、特にベイブルースと野口英世博士の物語を何度も読み返してました。私は小学校3年生でした。

 

作家の村上春樹さん。「いちばん個人的に好きだったのは、昔の芦屋市立図書館です」と述べられているように村上春樹さん自身もこの図書館を利用された時代の方です。


重厚な組積造建築物は永遠に残して欲しいと思います。


 【参考文献】

芦屋市史 昭和46年版

芦屋市史 昭和31年版 

芦屋の里 島 之夫昭和4

『芦屋郷土誌』細川道草、芦屋史談会1963