「君に捧げるエンブレム」3再放送とDVD化を!(その3)
さて、和也は、車椅子バスケに出会う。
そのハンドリングテクニックは相当練習しただろう。櫻井翔さんだけでなく、市原隼人さんも同じように乗りこなしています。
撮影後日談で、バスケの試合や練習風景の撮影では90%以上は代役なしで本人たちが演じていたことが明らかになっています。
それは櫻井翔という役者魂だと私は思う。
脊損障害者を演じるのに綺麗ごとでは済まないと彼は知っていたのだ。
その証拠にキャンバー角度の大きいㇵの字型の車椅子を軽々と直進操作しているのには驚いた。
まず、これは簡単にできないのです。
私の元に車椅子テニス用とバスケットボール用がありますが、一般車椅子から乗り換えるとき、真っ直ぐに走行するために感覚をリセットしなくてはなりません。
話を進めます。
和也はライバルに出会う。
必死で練習するが、やり過ぎて「褥瘡(じょくそう)」が悪化し入院「あなたは普通の身体じゃないだから無茶しないで。敗血症にでもなったら・・」
「分かっているんだ。自分が障害者だってこと。ほんとは一瞬だって忘れたことないよ。」そっと呟く和也。
未希もその言葉に何も言えない。
このドラマの中で「クラス1の脊損障害者が羨ましい」向井大隼役市原さんが簡単に言ってのける台詞があるのですが、解説すると選手には各々障がいレベルの重い順から1.0~4.5の持ち点が定められており、コート上の5人の持ち点の合計は14を超えてはいけません。
和也は一番障がいの重いクラス1の選手ということになります。
「脊損障害者が羨ましい・・・」このドラマのテーマの一つだろう。
演じている櫻井翔という役者の凄さはこのシーンに見られる。「一番遅くて点にならないようなこのクラス1のどこがいい・・・」意味が解らないのは当然だった。
その理由を探し続ける和也がそこにいました。
私たちも「痛みがない分を羨ましがったり、痛みが懐かしいと言い合ったり・・・」一般の人が聞いたらぞっとするような会話をよくやります。
命のやり取りをしている障害者仲間は明日の命を心配する。それが分かっているからこそ、誰もそれを尋ねたりはしない。
そんな会話もこのドラマでは描かれていました。
台詞が存在しない分、その選手個々が行動でその真実を言葉を言っていました。
このドラマは櫻井翔という役者が車椅子を使いこなしていることで成り立っているのです。
つづく