あしや温故知新VOL49  潮見さくら


  開森橋の近くに、潮見桜と呼ばれる「しだれ桜」が植えられています。


「潮見桜」という名称の由来は、このあたりから芦屋沖が一望され、紀州熊野(和歌山県)から流れてくる虹のような潮筋が見えたからだと言われています。


  何度も植え継がれて現在(東芦屋町・細雪碑横)に至ります。初代の潮見桜は、西山町の芦屋廃寺に在原業平が植えたと伝えられています。その後、1873年前田町の大竺堂の森、開森橋の西詰に。その後、芦屋小学校(精道小学校の前身)へ、昭和初期まで名木として語り継がれていました。そして、昭和33年芦屋史談会によって現在の開森橋近くの場所に植樹されました。


   また、春の芦屋風景は素晴らしく、業平橋から開森橋上流までの桜並木は春の満開の時期には多くの方々で賑わいますが、この桜は昭和20年に市民の寄付で植えられたものです。


 当時の芦屋市民の桜に対する愛情は今も変わらず受け継がていると思っています。


  この「潮見桜」はしだれ桜です。エドヒガンの枝垂れ品種で枝がやわらかく枝垂れる桜の総称としても使われています。エドヒガンの系統が多く、品種もさまざまですが、「八重紅しだれ」や「紅しだれ」などが有名で

「きよすみしだれ」のような品種もあります。

 

  又兵衛桜(またべえざくら)は、奈良県宇陀市大宇陀本郷(旧大宇陀町域)にある樹齢300年とも伝わる桜の古木、日本で最も古い桜ということだそうです。別名瀧桜(たきざくら)とも呼ばれていますが、これと同じ「しだれ桜」なのです。

 

さて、  国際文化住宅都市の芦屋市です。昔から外国の方もたくさんお住まいですから、私が見たエピソードをご紹介します。


  芦屋川付近で英国人の方がこの桜をお友達に説明されていました。英語で「しだれ桜」は「weeping cherry」と言っておられました。「weep」とは?「涙を流す、嘆き悲しむ、泣く」という意味の動詞ですね。彼女にとっては、下にしだれている様子を「悲しんでいる」と表現していました。


  しかし、日本の「しだれ桜」には英語にあるような、「悲しみ」とはとらえていません。しだれ桜の花言葉は「優美」です。それを知っていた芦屋市民が「優美」は英語で「grace」「graceful」「elegante」英国人の彼女にそのように伝えておられた姿を見かけました。


  それを聞いて、頷いておられた。その姿は「weep」ではなく、まさに「elegante」だ。

 

   英語で会話できることと日本の文化を伝えること。芦屋市内ではこんな風景をよく見かけます。

 

  「芦屋国際文化住宅都市建設法」は国の法律です。条例などではありません。こんな法律を持つ小さな都市は日本でも数少ない存在でしょう。


 これこそ芦屋市民の誇りであり、市民も実感している国際都市のように思います。

  先人たちはいい法律を作ってくれたと私は思っています。





【参考】

 

※芦屋国際文化住宅都市建設法・法律第八号(昭二六・三・三)

 ◎芦屋国際文化住宅都市建設法

(目的)

第一条 この法律は、芦屋市が国際文化の立場から見て恵まれた環境にあり、且つ、住宅都市としてすぐれた立地条件を有していることにかんがみて、同市を国際文化住宅都市として外国人の居住にも適合するように建設し、外客の誘致、ことにその定住を図り、わが国の文化観光資源の利用開発に資し、もつて国際文化の向上と経済復興に寄与することを目的とする。