そして、翌年。

平成23年7月19日、サテライト金沢開設同意文書に署名、押印し、サテライト金沢開設予定者に提出。

これが第2のミス。

それも、

「金沢市長 山野之義」

と。

実はこの2か月後、9月議会で、「サテライト金沢設置賛成意見書」が、21-18で、否決されている。

「議会の意思は住民の意思」

と、従来の答弁をしていたはずの山野市長が、議会を裏切った紛れもない証拠がこの同意文書。

この文書はサテライト金沢開設予定事業者によって経済産業省に提出され、受理されたが、

「押印が私印であり、市長公印ではない」

との理由で、枝野幸男経済産業大臣の名前で不許可処分となっている。

この経過の中で、経済産業省から、

「この文書はあなたの署名押印ですか?」

と、山野市長は確認を受けている。

「その通りです」

と山野市長は答えているが、まさかこの文書を勝手に経済産業省に提出されるとは思わなかった山野市長は、事の重大性を認識する。

なんとしてもサテライト金沢を開設したい事業者は、

「市長の公印を捺すように!」

と再三再四迫るも、山野さんは、

「それだけはできない」

と、頑として否定している。

この時点ですべて断ち切ればよかったのである。

ところが。

あまりにも執拗に迫られるので、ここで出てくるのが、今回の新資料に出てくる、

「代替案」の提示、である。

これが第3のミス。

山野市長とこの業者と、二人きりで会わせて交渉させ、言質を取られてはいけないと、某市議が一人、この代替案提示の席に同席している。

代替案とは、このビルを使っての、金沢市資源回収センターのことである。

山野市長は明確に代替案を提示している。

しかし、そんな施設よりも、サテライト金沢を開設したい業者は、代替案を渋る。

最終的に、あまりにも熱心な山野市長の「調査だけでも!」との勧めに、

「じゃあ、調査だけなら」

と業者は応じる。

ところが、その後の調査はなしのつぶて。

調査はしていない。

また、陪席した市議に対しても、その後の報告をしていなかった。

あまりの不誠実な対応に、業者側は態度を硬化させ、これまでの経緯をしたためた文書や録音を盾に、告発まで口にする始末。

選挙前の念書を書いていたことは、うわさには聞いていたものの、実際に私が見たのは、この8月に、新資料が届けられてから。

昨年3月、私が同意文書を経済産業省から入手し、山野市長に事の経緯をただした時は、金沢市議会の全員協議会で市長が謝罪し、一件落着していたかに見えた。

ところが、今回の新資料で、代替案提示という新たな事態が発覚し、市長は自ら判断し、政治的な責任を取って、引責辞任をしたという次第。

新資料が馳事務所に届いたのは8月初旬。

8月4日に山野市長に確認したところ、

「資料のことは知っています。必ずマスコミはじめ関係各所に出すといわれていた」

と打ち明けられ、

「では、マスコミから漏れる前に、私が先に自民党の市議と県議にこの資料を見せて、11月の市長選挙候補者としての資質を判断してもらうことにします」

と、8月8日に自民党金沢支部県議市議団会議に内部資料として提出した次第。

私は思う。

首長たるものが、一民間業者に、4年間にわたって不当な圧力を受け続けることは異常。

公平公正を旨とする行政への信頼を根底からゆがめる。

首長は、議会人のそれとははるかに違う、許認可権限を持つ。

また、行政のトップとして、人事権や議案提出権限や、予算権を持つ。

したがって、許認可権限に絡む業者とは、一定の距離を持たなければならない。

ところが、今回のサテライト金沢の事案は、一番たいせつなところで、一線を越えてしまっている。

「告発する」

「するならどうぞ」

というところまで感情的なもつれになってしまい、お互いに弁護士を立てる事態に至った原因は、どこにあるのか?

・ 山野市長が選挙直前に「念書」をかわし、

・ 当選後に「同意文書」に署名押印し、

・ 議会の反対でにっちもさっちもいかなくなってから資源回収センターという税金を使う代替案を示した(実現していないけど)

という一連の軽率な判断ミスにある。

この一連の経緯には、公職選挙法違反疑義とか、利益誘導とか、公文書もどきとか、議会への背信・背任行為とか、法的問題も絡む。

また、もう一つの論点もある。

どうして、代替案提示という2年前に終わった話が今頃、音声資料とともに、県連会長である私のところに届いたのか、だ。

おりしも、市長選挙の候補者選考に絡む時期。

そして、現職の山野市長は自民党金沢支部に推薦願をだし、その審議も大詰めになってのこの時期に。

結果として、山野さんは推薦どころか、引責辞任に追い込まれた。

タイミングが良すぎないか?

この、

「どうしてこの時期に?」

というタイミングに、山野さんご自身が、一番悔しい思いをしているのではなかろうか。

自業自得とはいえ、感情的に無念極まりないのだろう。

ここが、山野さんの再出馬要請の火が消えないところではないかとみる。

しかし、事の経緯をあらためて振り返ってほしい。

山野さんは、首長としてやってはいけない政治判断を連発した。

その判断ミスは、議会人をも巻き添えにしてしまった。

市政への信頼失墜のダメージは計り知れない。

そんな中で、再出馬を検討すること自体、非常識。

「選挙で市民の審判を受ける」

とは、引責辞任をした前市長の言ってはならない言葉。