台風一過の早朝4時、永井旅館で目が覚める。

腕時計を外し、登山モード。

初登山の紐野ゆうや秘書は緊張感を隠せない様子。

「だいじょうぶですかね?」

「大丈夫だ!」

と、根拠のない激励で勇気づけるのであった。

5時過ぎにはつやつやの朝風呂を浴び、現世の不浄を洗い清め?登山ファッションに着替える。

今回は、お天気もよろしそうなので、黒色スパッツと白色長そでシャツを着こんで紫外線対策。

その上から、バミューダパンツとオレンジのポロシャツ。

そして、坊主頭を隠すための、JOC味の素キャップ。

かっこだけは、万全だ。

朝ごはんは、美味しい山のごはんと、お味噌汁と、油揚げ。

この、油揚げがまた、美味しいんだなぁ。

日本人でよかった!

7時半過ぎ、永井旅館前で、今回のチーム馳4名で、記念撮影。



百坂町の大平さん、横須賀から大槻さん、そして、ゆうやと、馳浩。

永井旅館前の市ノ瀬ビジターセンターから、バス乗車。

「あ、代議士、もうバスにのっとるじ?市ノ瀬で八時半集合やてゆうたがいね~~!」

と怒る山女の石原ちひろ編集長。

見つかっちゃったよ。

「ほうやったけ?」

と、とぼける馳浩。

待っているのが大嫌いな53歳のわがままなおっさん。

「登山会の案内に書いてあったがいね。読んとらんげんろ~~?!」

・・・はい、読んでません。

「勝手に先に登ったらだめねんぞ、別当出合で待っとろ!」

「努力します~~!」

と手を振って、バスは軽やかに別当出合に向けて出発。

深緑神々しく、北鉄シャトルバスの吊り革を握る手のひらにも力がみなぎる。

うれしいなぁ。

3年前のこの山女白山登山会にお誘いしてから登山にはまったという大平さんも、ポーカーフェイスながら、興奮を隠せない。

「台風8号逸れてってよかったがいね!まんでいい天気や!」

と、金沢弁丸出し。

「おいや、ほうねんて。いっつもこの山女登山会は、だっれか雨女か雨男おれんて。今日は奇跡やわいや!」

と、金沢弁丸出しで興奮気味の馳浩。

かれこれ19年目。

参議院議員選挙に当選し、今は亡き当時の秘書、松川和司君に誘われて登り始めた白山登山。

選挙のない年以外はすべて、この白山麓自然派マガジン「山女」の石原社長、石原編集長ご夫妻のご厚意で継続してきた登山会。

初心者のために、かならず毎回歩荷さんを手配していただいたり、室堂センターでの宿泊手配をしていただいたり。

本当にお世話になっています。

お世話になっていながら、集合時間より先に別当出合行きのバスに乗り込むわがままな国会議員なのであった。

ま、いっか。

別当出合に到着し、昨年まで室堂センター所長だったおじさんが店長を務める自動販売機の売店で、一休み。



聞けば、白山禄観光協会の職員なんだとか。

「どんくらい室堂センターの所長してたの?」

「7年かなぁ。一区切りつけて降りてきたわ!」

とにこにこしながら今朝の北國新聞を勧めてくれる。

いいなぁ、白山で読む北國新聞。

午前8時45分、少々遅れ気味で、今回の参加者全15名集合。

ちひろ編集長のごあいさつの後、馳の号令でストレッチ。

・・・年々からだが固くなっているのを実感する参加者面々。

最高齢の桶谷さんや、初参加の女性の松本さんを気遣いながら、今年の登山ルートは砂防新道に決定。

「やわやわ~っと登るまいけ。とりあえず、中飯場で休憩。お昼ごはんは甚の助ヒュッテ。黒ボコ岩を通って、午後3時くらいに室堂に到着って感じやね!」

と、ルート確認。

初心者には何のことかさっぱりわからないが、経験者には、のんびりルートということが伝わり、安堵の表情。

さぁ、午前9時、全員で自己紹介をしたあと、白山神社の鳥居をくぐって、いざ出発。





山全体が神域であり、全国で3000社ある白山神社の総本山。

また、国立自然公園にも指定されており、数々の特異な高山植物にも恵まれ、石川県民にとっては、まさに聖域。

神聖な気持ち。

吊り橋を渡ると、さっそく左右に揺らし始める、子どもよりたちの悪い馳浩。

なぜかというと、大槻さんが、吊り橋が大の苦手なのであった。

・・・・いったいどこが神聖な気持ちやねん!

その大槻さん、今回が初登山の松本女史と、なんか、いい雰囲気だぞ。

登りながらお互いに声を掛け合って、励ましあってるじゃないか。

ふむふむ、白山が結ぶ恋?(って、勝手にキューピット役をするなっちゅうの)

登り始めて最初の休憩所である中飯場のトイレ前で、二人を呼んで記念撮影。

そしたら、あ~~あ、山田しゅうじ参議院議員政策担当秘書の町岡さんが、二人の真ん中に割り込んじゃったよ。

ふんとにもう、気が利かないんだから・・・

ペースがのんびりモードなので、最高齢の桶谷さんに気を遣いながらも、順調に登山続行。

甚の助ヒュッテまでは、中飯場から1.6キロ。

休憩なしで、一気に登る。

下手に休憩摂ると、足がなまっちゃうからね。

一気に登るとはいえ、登るペースは超のんびり。

かかとにお尻を乗っける感じで、一歩一歩、かみしめながら、体重移動に意識しながらの登山。

少しずつパノラマが開けてきて、高山植物も珍しいはっぱが見られるにつけ、深呼吸する胸にいっぱいの精気がみなぎる。





山って、いいなぁぁぁぁ。

玉の汗も出てきて、背中はびっちょり。

いい感じで足が重くなり始めたころ、午前11時50分、甚の助ヒュッテ到着。

お昼ごはん。

ここはいざというときの避難小屋でもあり、近年建て替えられたばかり。

休憩所もお手洗いも新品で、木の香り充満。

もちろん水飲み場も完備されており、登山者は冷たい水で顔を洗い、水筒にその水を汲んで命のチカラとするわけだ。

ご多分に漏れず馳浩も、その冷たい水に生き返る気分。

ぷふぁあ~~。

そして、遠くに連なる山並みを仰ぎながら、永井旅館で今朝作っていただいたおにぎりを二個、たくあんとともに、いただきます。

いいね~~、最高の贅沢。

ところが、ここで図に乗って、ワンカップ焼酎を50ccほどぐい飲みしてしまった馳浩、一気に酔いが回り、ダウン。

なんでかというと、焼酎水割りだとばっかり思い込んでいたから。

水割りではなく、25度の焼酎そのものだったわけだ。

ここは、下界とは違って標高2000メートルを超えているわけで、ぐい飲みするほうがばかだ。

ばかは死んでも治らない?

「・・・・ちょっと、ねぇ、代議士、もう12時半やよ、みんな行くげんよ、はよ起きんかいね!」

とちひろ編集長に叱られるも、酔いが回った馳浩は、一回起きてまた大の字。

結局、心配した大平さんに付き添われ、午後一時、再出発。

・・・本当に世話の焼ける大男だ、という感じの大平さんの冷たい視線を感じながら、足元もおぼつかなく、登山再開。

足取りも重く30分ほど歩きつめて、ようやく汗が出てきた。

大息をつきながらも、快調に急こう配の斜面へ。

黒ボコ岩にたどり着くころには、汗とともに酔いもすっかりぬけて、元気回復。



良かった。

ここから眺める白山の絶景は、やっぱり、素晴らしい。

気持ちを入れ替えて、最後のアタック。



午後3時、予定通り、室堂に到着。

全員、落伍者もなく、室堂センターに到着し、ベンチに腰かけて、生ビールで感謝の乾杯。



石原社長、ちひろ編集長、ありがとうございました。

晩御飯をいただいたあとは、早めに就寝。