ひな壇で高田ゆうじ日本レスリング協会専務理事と談笑していると、グレコローマンスタイルの西口強化委員長が神妙な顔をしてやってきた。

こういう遠慮がちな表情をしているときは、必ず重大なお願いのある時だ。

「せんぱい、お願いします~~」

と、目が泳いでいる。

「どうしたのさ?」

「斎川と長谷川のことです!」

斎川と長谷川とは、昨日グレコで優勝した社会人選手の二人。

斎川は、4月から栃木県の足利工業高校の教員として赴任。

長谷川は、4月から青山学院大学の職員として赴任。

「実は、二人とも就職したばかりなので、世界選手権やアジア大会の強化合宿とか海外遠征に参加するには、職場の理解がいるんです!」

「そりゃそうだよな。斎川は初任者研修もあるだろうし!」

「そうなんですよ~~。二人ともメダル候補ですし、リオと東京の五輪強化選手ですから、我々のスケジュール通りに強化に参加してほしいんですよ!」

「おっしゃる通り。で?」

「なんとか、栃木県の教育委員会と、青山学院大学の学長に、斎川と長谷川を強化合宿や海外遠征に出してくださるように、協会からもお願いしてください!」

「そりゃそうだ。わかった。俺と馳とで、それから福田会長も含めて、みんなでお願いしておくよ!」

ということ。

そういえば、今から30年前。

俺も星稜高校の教員に赴任したばかりの5月に五輪最終予選があったんだよなぁ。

有給使って最終選考会に出場し、優勝したけど。

日本代表に決まった翌日に金沢に帰ってきたら、理事長に渋い顔をされたことを覚えている。

「私は国語の教師を雇ったんだ。まずは子どもたちにしっかりと教育し、学力をつけさせることが仕事だ!」

って。

あたりまえだけど。

でも、五輪にも出場したかった。

で、致し方なく辞表を出したら、最終的に、時の校長や教頭が間に入って、代用教員を3か月間だけ雇用して、強化合宿や海外遠征や五輪に行かせていただいたわけだが。

あの時の土谷校長・松田教頭、ありがとうございました。

最終的に、気持ちよく五輪に行かせていただいた稲置理事長、本当にありがとうございました。

その思い出がよぎる。

なんとか斎川と長谷川が、日本代表のメダル候補として、今年の世界選手権とアジア大会に気持ち良く出場できるように、関係者にお願いしなければ。

そのことを、あらためて、福田会長と高田専務理事とで確認する。

今朝は、朝一番の飛行機で金沢から上京し、代々木第2体育館へ直行。

日本レスリング協会の副会長として公務。

また、午後1時から3時までは、日本ドッジボール協会の会長として、公務。

評議員会開催。

平成25年度事業と決算を承認していただき、また、平成26年度事業計画と予算計画を承認。

こうして競技団体の代表を務めさせていただいているが、もちろん、ボランティア。

今まで選手としてお世話になったことを、恩返しのつもりでさせていただいているが、こうした競技団体の実務を担当している事務方はもっと大変だ。

もちろん、職務として人件費を支払ってはいるが、それは、十分な給与ではない。

寄付金や国庫補助金やtoto助成金で成り立っている競技団体の財政。

毎年の運営費は火の車状態。

そんな中で、財政力の脆弱な団体の、競技力強化費にかかわる不正経理問題や、ガバナンス問題が起きているわけだ。

ここにメスを入れておかないと、2020オリパラ東京大会は成功しない。

強化の成功と、運営の成功を、いずれも「レガシーとして」2020以降に遺すことができてはじめえ成功といえる。

そのための、ここ半年の「スポーツ庁設置」議論でもある。

今週中に、設置案をスポーツ議連に報告し、あとは関係閣僚や政府与党のとりまとめにゆだねることになるが。

さて。

代々木第2体育館の会場では、あわただしく過ごす。

・ 役員控室で、福田会長や栄強化本部長、そして、東日本学生レスリング連盟の多賀先生・藤沢先生と情報交換したり。

・ 高校生3年生の保護者にお会いしてスカウト活動をしたり。

・ 石川県から車でやってきた川井先生&石田先生と、りさことゆかこの応援したり。

・ 専修大学の魚住や武田の応援したり。

・ 横綱 白鳳と談笑したり。

・ モンゴルレスリング協会の元横綱朝青龍と談笑したり。

・ レスリング協会の大会協賛社スポンサーの皆様に御礼ご挨拶したり。

・ 斉藤審判長と、レフェリングについて解釈確認したり。

・ 専修大学OBの鈴木啓三総監督や沢内和興先輩と意見交換したり。

・ 日体大OBの藤本英男さんにご挨拶したり。

・ 松浪健四郎日体大理事長と、スポーツフォートゥモロー事業について意見交換したり。

・ 久木留毅教授とJICA派遣事業について情報交換したり。

・ 霞ヶ浦高校の大澤先生と、スカウト活動について情報交換したり。

・ 専修大学の佐藤満教授と、選手強化について意見交換したり。

などなど、あれもこれも、次から次へと、いろんなことが沸き起こる。

ひとつひとつ、丁寧に相談に乗り、熱く意見交換し、レスリング協会が「うまく」機能するように、心を砕く。

午後5時半、まだプレーオフの最中の会場を後にし、帝国ホテルロビーへ。

来日中の世界テコンドー連盟のCHOE会長と、面談。

懇親会。

2020東京組織委員会の職員やマスコミ関係者も入り、4名で会食・情報交換。

日韓関係にも大きな影響力を及ぼす可能性のあるテコンドー交流。

スポーツ交流なればこそ。

2020オリパラ東京大会招致にも援護射撃をいただいた、そのご縁でこうして仲良くお付き合いいただいている。

感謝。

IF会長として、戦略家でもあり、日本の応援団でもあるCHOE会長。

たくさんのご示唆をありがとうございました。

午後9時過ぎ、お開き。

帰宅。