スタジアムに隣接する、他競技のナショナルチームの練習を視察していたら、重量挙げの監督が、こう嘆いていた。

「IOCの言いなりになって会場を準備したけど、大赤字になって、その補填で財政悪化で、今じゃこのありさま。IOCなんてマフィアみたいなもんだ。その矛盾を放置している政治家は、不正ばかりやりやがって・・・・」

と、話題はあらぬ方向へ飛躍。

でも、純粋なスポーツマンからすれば、そういう不満を言いたくもなるだろう。

オリンピックをIOCの指摘するままに受け入れて開催したら、国家財政にどでかい借金が残った、そして施設は閑古鳥で無用の長物。

・・・・それがギリシャの偽らざる実情。

オリンピックを開催すればそれでいいのか?という疑問は、2020オリパラ東京大会にも降りかかる大問題。

「税金の使い道に対して国民が納得しなければ意味がない」

という馳浩の指摘に対して、重量挙げの監督は、

「おっしゃる通り。ギリシャはそういう意味では失敗の典型だ。五輪のせいで国家財政の赤字が増えて、国債で賄って、それでEUのお荷物になっちまった。金融も経済もスポーツも、バカな政治家のせいだ!」

と、さらに辛辣な表現まで飛び出した。

なるほど、ギリシャの厳しい財政状況の原因がアテネ五輪であり、ここまで国民感情を傷つけているかと思うと、他人事ではない。

IOCの言うがままに五輪会場の準備をしたら、次から次へと財政需要が膨らんでしまった、ということ。

・・・反面教師として、とても参考になる。

「13歳の娘が新体操をしてるんだけど、毎月35~50ユーロも支払わないと教室に通えないのはおかしい!」

と、パノスさんも主張していた。

いろんな主張を聴くだけ聞いていたが、通訳の清水さんもお疲れのようなので、およそ2時間の視察をキリのいいところで切り上げる。

シシケバブでお昼ご飯の予定だったが、街中(経済産業省の前)で公務員のデモが発生しているということで、予定変更。

2時から3時半まで、パルテノン神殿(アクロポリス)視察。



入口のチケット売り場の前にて、サンドイッチとフレッシュオレンジジュースのお昼ご飯。

ベンチに座って食べていると、馴れ馴れしい子猫が近寄ってきて、「ちょうだいちょうだいちょうだい」とせがむ。





おまえはシンバルか?



観光地の小動物の図々しさは、万国共通?

坂道を歩いて、歩いて、1時間半。

パルテノン神殿の修復作業も佳境のようで、まだら模様に新しい大理石による修復が進んでいた。






丘の上からは、今朝ジョギングをしたゼウス神殿跡地がすばらしい俯瞰で見渡せる。


ギリシャ国民執念?のアクロポリス美術館も。

360度のパノラマ、空は快晴。



神々が降臨した神話にふさわしい?小春日和の昼下がり。

午後4時過ぎいったんホテルに戻り、休憩。

三つ揃えのスーツに着替え、6時15分、再出発。

清水さんもドレスアップして迎えに来てくださる。

午後7時より、西林大使公邸において、懇談会。

カプラロス・ギリシャオリンピック委員会会長ご夫妻と、パラヌ女史(ギリシャ外務省五輪担当参事官)との会食。

西林大使ご夫妻、前島書記官、そして、清水書記官も合流。

カプラロスさんは、モントリオール五輪とロス五輪の水球のギリシャ代表。

今は海運業で財をなし、NASDAQ上場会社社長&CEO。

時期ギリシャを代表するIOC委員との呼び声高い。

しかし、物腰柔らかく、冷静にギリシャスポーツ界の現状を分析してくださる。

いわく、

「ギリシャはアテネ五輪で失敗した。あまりにも準備段階から無計画すぎた。五輪施設も活用できずに無駄の象徴。日本なら計画通りに成し遂げると思うが、新国立競技場の計画変更は、いい判断だったよ!」

と、すべてお見通しのようだ。

「ロンドン五輪のように、いかにレガシーを遺すかが重要だ!」

とも。

「馳さん、日本に帰ったら、安倍総理に、ぜひともギリシャを訪問してくださいと伝えてください。トルコには今年2回も行っているのに!」

と、これまたよく御存じ。

午後9時半、お開き。

清水さんにホテルまで送っていただく。

車中、いつのまにか清水さんの恋愛談義で盛り上がる。

「・・・そりゃ、クリスマスに彼のところに行かなきゃ。そこがポイントだわね!」

と、遠距離恋愛の大変さに悩む乙女?に、アドバイス。

まぁね、俺のアドバイスは、話半分に聞いといたほうが良いかも?