手術着に着替えた私は、用意されたストレッチャーに横になりました。

 

そのまま手術室まで運ばれ、今度は手術台の上へ移動します。

 

体中に色々なセンサーを取り付けられていると、麻酔科の先生がやってきました。

 

先生は私の名前と現在時刻を確認し、

 

「では、今から全身麻酔の薬を入れていきます」

 

私の腕に点滴の針を刺し、酸素マスクの準備を始めました。

 

「気分は悪くないですか?」

 

「大丈夫です…」

 

それが手術前の最後の記憶です。

 

ほんの10秒ほどで全く意識がなくなりました…。

 

 

 

どれだけ時間が経ったのでしょう。

 

次に意識が戻った時、聞こえてきたのはカチャカチャという金属音、女性の話し声、硬い床を歩く足音でした。

 

目を開けようとしてもできず、まるで金縛りにあったように身動きできません。

 

声を出そうとしたのですが、低いうめき声しか出せませんでした。

 

私が目覚めたのに気付いたのか、誰かがそばに来る気配がしました。

 

看護師さんでしょうか。

 

私の耳元で落ち着いた声で話しかけました。

 

「お疲れ様でした。手術は無事に終わりましたよ。もう少しこのままでいて下さいね」

 

私はゆっくり頷きました。

 

だんだん意識が戻るにつれて、ズキンズキンと鈍い痛みが襲ってきます。

 

(痛い…。生理痛の数倍痛い…。)

 

思わず顔をゆがませると、先ほどの看護師さんがすぐに来てくれました。

 

「お腹が痛みますか?」

 

私が頷くと、彼女は手際よく点滴の準備をし、

 

「これは痛み止めです。すぐ楽になりますよ」

 

色々な管に繋がれている私の腕をとり、点滴の針を刺しました。

 

彼女の言う通りあっという間に痛みは消えましたが、今度はものすごい睡魔が襲ってきました。

 

眠くて、眠くて、とても目を開けていられないほどです。

 

私の変化に気づいたのか、

 

「もう大丈夫ですから、安心して眠ってください」

 

看護師さんが優しく言って下さり、私の意識は徐々に遠のいていきました。