ところが、この蘇州市の中には昆山市や常熟市といった別の市が含まれています。
市の中に市があるわけです。
わけがわかりません。
この謎の答えは、中国の難しい行政区分のルールにあります。
中国の一番大きな行政区分は「省」です。
ところが、北京・上海・重慶・天津の4つの市はどこの省にも属していません。
これを「直轄市」と呼びます。
直轄市は省と同格の行政区分です。
更に、香港・マカオからなる「特別行政区」、チベット自治区・内モンゴル自治区などからなる「自治区」があり、これらも省と同格です。
「省」「直轄市」「特別行政区」「自治区」の4つをまとめて「省級行政区」と呼びます。
「省級行政区」のひとつ下のランクが「地級行政区」です。
地級行政区の代表格が「地級市」です。
「地級行政区」のそのまた下のランクが「県級行政区」です。
県級行政区の代表格が「県級市」です。
単純に「市」と言っても「直轄市」「地級市」「県級市」という3つのランクがあり、県級市はたいていの場合、地級市に含まれているわけです。
蘇州は地級市、昆山や常熟は県級市なので、蘇州市の中に昆山市や常熟市があるという現象が起きることになります。
正確には、蘇州の中には常熟市、昆山市、張家港市、太倉市の4つの県級市があります。
そして、どの県級市にも属さない地域は「市轄区」と呼ばれています。
市轄区も県級行政区の一種です。
蘇州の市轄区は呉中区、相城区、姑蘇区、虎丘区、呉江区の5つの区に分かれています。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160901/22/harvest-minoru/36/a6/j/t02200294_0640085413737950464.jpg?caw=800)
中国の一般の人々は、殆どのケースで「蘇州」という言葉を「蘇州市の市轄区」を指して使っています。
つまり、常熟や昆山を蘇州の一部であると意識することはほぼありません。
普通に「蘇州から昆山に行く」といった言葉の使い方をします。
Google Mapとかで「蘇州市」と入力すると昆山などを含めた地域が表示されますが、これは市民の生活感覚からはほど遠いものです。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160901/22/harvest-minoru/31/8a/j/t02200294_0640085413737950463.jpg?caw=800)
ということで、このブログでも「蘇州」というのは「蘇州市の市轄区」のことを指しています。
更に言えば、呉中区・相城区・姑蘇区・虎丘区・呉江区の5つの区の中で、最後の呉江区は一般に「蘇州とは別」と見なされることが多いです。
つい最近まで呉江市という県級市だったからです。
僕の知り合いで実家が呉江区で今は呉中区に住んでいる人は、よく「土曜日に呉江の実家に帰り、日曜日に蘇州に戻って来る」という言い方をします。
ところで、呉中区・相城区・姑蘇区・虎丘区・呉江区という5つの区の名前を見て、「あれ?園区と新区がないじゃん?」と思った人は鋭いです。
そう。そんな区はホントはないんです。
だったらどうして会話の中に「園区」とか「新区」といった存在しない区の名前が出てくるのかという話はこちらです。
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