ちょうど今、大学院で自閉症について学ぶクラスを取っています。今週、そのクラスでHBOフィルム「Autism: The Musical」を見ました。日本語だと「自閉症:ザ・ミュージカル」って感じでしょうか。そんなドキュメンタリー映画が存在していたことすら知らずに見たのですが、号泣でした。涙拭くハンカチの用意なんてしてませんから、デニムシャツの袖で鼻水と涙をふきふきし、最後は唇をわなわなとふるわせながら映画終了。多分、25人いたクラスメートの中で私が一番泣いておりましたが、周りも完全に涙目でした。

何がそんなに泣けたのかと後になって落ち着いて考えたのですが、絶対に言えるのは同情心というか「ああ、かわいそう」というのではありません。もっとポジティブ。

日本で公開されていないので軽くストーリーを説明します。自閉症をもつ子どもの母親エレインが自らの子育て経験を通し、「自閉症児達でミュージカルをしよう」とプロジェクトを立ち上げます。The Miracle Projectです。

6ヶ月の間、自閉症をもつ子ども達とその家族が、喜び、悲しみ、葛藤、いろいろな山を乗り越えてミュージカル上演という一つのゴールを目指していきます。それが大まかなストーリー。

この映画では、大勢いるキャストの中の5人(だったかな)とその家族にフォーカスします。そこでカメラは子ども達の日常生活の様子、家族の様子、子ども達の本音なんかがどんどん映し出されます。ここで興味深かったのは、子ども達の本質が見えて来るという点です。自閉症というのはあくまでもその子の一部であり、自閉症が彼ではない。コミュニケーションを取るのが難しいため誤解されやすいが、スピーチ機能のある特殊なデバイスを使って会話をすると、驚くほど洗練された言い回しを使って話す子どもも。「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」の東田直樹さんを思い出しました。

その中に一人、ワイアットという名前の男の子がいます。小学校3年生くらいでしょうか。一見自閉症とは気づかないほどコミュニケーション能力は高いです。ある日ブランコに一人で揺られながら「学校にいるbully(イジメる子)がどれだけ嫌いだ」とか、「友達のヘンリーはすぐに自分の世界に入ってしまうのが嫌だ」とか、「でも自分も入っちゃう時があるんだよね、どうしてもそうなっちゃうんだ」とか、「周りは僕が一人で遊ぶのを見て一人が好きなんだと思っているんだけど、僕も友達と遊ぶほうが好きなんだよ」とカメラマン相手にぼやきます。それがすごくリアルなんですよね。

子ども達の本音を聞いて「わかるわかる!!」って思えた時、それと子ども達が心底、めっちゃくちゃ楽しんでいる瞬間の映像を見た時、鳥肌な瞬間でした。このプロジェクトを立ち上げた女性、素晴らしいですね。インスパイアされるな~と思いました。

日本で公開されていないので何とも言えないのですが、アクセスのある方はぜひ見てみて下さい。サイトでDVDも販売されています。エミー賞も取ったらしいです。

以下、予告の動画です。