【リハビリテーション医学】
問題73 障害モデルとして用いられているのはどれか。
1.ADL
2.ICF
3.MMT
4.QOL
答え: 2
ICFはInternational Classification of Functioning, Disability and Health(国際生活機能分類)のことで、人間の生活機能と障害に対する分類法として、WHO(世界保健機関)によって採択された医療基準である。 したがって、2が正解。
ICFでは、人間の生活機能と障害について「心身機能・身体構造(生命維持レベル)」・「活動(日常生活レベル)」・「参加(社会・人生レベル)」に分け、その状態に影響を及ぼす「背景因子」として「環境因子(建物、福祉用具、人的資源、社会環境など)」と「個人因子(年齢、性別、生活歴、価値観など)」を含み、約1,500項目に分類されている。
1.ADLは、Activities of Daily Living(日常生活動作)。
3.MMTは、Manual Muscle Testing(徒手筋力テスト)。
4.QOLは、Quality of Life(生活の質)。
問題74 FIMに含まれる運動項目はどれか。
1.食事
2.調理
3.洗濯
4.買い物
答え: 1
FIMは、Functional Independence Measure(機能的自立度評価法)のこと。 全介助を1点とし、最大介助2点、中等度介助3点、最小介助4点、監視・準備5点、介助不要の修正自立を6点、完全自立を7点として、ADL(日常生活動作)における運動項目と認知項目について、必要とされる介助量の評価を行う。
運動項目は、食事・整容・清拭・更衣などのセルフケア、排尿・排便の排泄コントロール、ベッド・車椅子・トイレなどの移乗、歩行・車椅子による移動など。 認知項目は、理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶である。 したがって、食事がFIMの運動項目に含まれ、1が正解。
問題81 呼吸補助筋はどれか。
1.三角筋
2.大菱形筋
3.頭板状筋
4.胸鎖乳突筋
答え: 4
努力呼吸(深呼吸)において、呼吸補助筋として吸息時に働くのは、胸郭周囲の胸鎖乳突筋、僧帽筋、大胸筋などで、呼息時に働くのは腹筋群である。 したがって、1~4の中で呼吸補助筋となるのは胸鎖乳突筋であり、4が正解。
問題82 球麻痺の原因となる病巣はどれか。
1.延髄
2.海馬
3.前頭葉
4.小脳半球
答え: 1
球麻痺は、延髄にある脳神経運動核の障害による麻痺である。 したがって、1が正解。 脳神経支配の口・舌・喉の運動が障害されるため、発声、発語、構音、嚥下、咀嚼などに困難を生じる。 筋萎縮性側索硬化症、ギランバレー症候群、多発性硬化症、延髄梗塞などが原因となる。
問題83 C7完全麻痺の脊髄損傷者が目標とするADLとして正しいのはどれか。
1.人工呼吸器からの離脱
2.BFO による食事動作の自立
3.車椅子駆動の自立
4.歩行の獲得
答え: 3
C7完全麻痺(C6レベル残存)では、座位で肘ロックによるプッシュアップが可能なため、トランスファーボードで車椅子へ移乗し、ノブ付きリム車椅子を駆動することができる。 したがって、3の車椅子駆動の自立を目標とする。
1.人工呼吸器からの離脱は、横隔膜機能が残り自力呼吸が可能なC5脊髄損傷(C4レベル残存)の目標となる。
2.BFO(Balanced Forearm Orthosis)は、上肢を金属アームで支えて、その支点位置と傾斜角度を調節し、肩以下のわずかな筋力で机上の諸動作を可能とさせる装具。 BFOによる食事動作の自立は、C4~C5脊髄損傷(C3~C4レベル残存)の目標となる。
4.歩行の獲得は、T7以下の脊髄損傷(T6レベル以下残存)で目標となる。 T6レベル残存で長下肢装具とロフストランドクラッチ(前腕部支持型杖)での大振り歩行、T12レベル残存で長下肢装具とロフストランドクラッチでの実用歩行が可能となる。
問題84 血管障害による下腿切断について正しいのはどれか。
1.早期からの断端圧迫は禁忌である。
2.非切断側の血流障害を評価する必要はない。
3.切断直後に幻肢痛を生じる。
4.糖尿病性足部壊疽は原因となる。
答え: 4
下腿切断は、かつては労働事故や交通事故などに伴う外傷性の切断が多かったが、現在では糖尿病や閉塞性動脈硬化症、バージャー病などによる血管障害性の切断が多くなっている。 糖尿病では、細小血管の血流障害によって足部壊疽に至ると、壊疽の拡大を防ぐために切断することがある。 したがって、4が正しい。
1.血管障害性の切断では、傷口を確認しながら、なるべく早く義足を作るために、断端に弾性包帯を巻いてソフトに圧迫し、断端浮腫の早期消退を促す。 外傷性の切断では、手術中に断端にギプスを巻いて、義足をつけてしまう方法がとられることがある。
2.血管障害性の切断では、切断1年後の死亡率は約30%で、平均余命は2~5年とされているが、入院によるリハビリテーションを行い、非切断側の血行障害が軽度であれば、余命が伸びる傾向にある。 血流障害評価は、歩行などの訓練を円滑に進め、非切断側の健康を維持するためにも重要である。
3.四肢切断患者の50~80%が幻肢痛を感じるといわれるが、幻肢が先ず現れてから幻肢痛に移行する例が多く、切断直後の痛みは断端痛であることが多い。
問題85 痙性麻痺がある脳性麻痺患者に対してよく行われる治療はどれか。
1.向精神薬投与
2.頸椎除圧固定術
3.ボツリヌス療法
4.人工膝関節置換術
答え: 3
痙性麻痺は、筋緊張の異常亢進による運動障害で、脳性麻痺や脳卒中、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症などの上位運動ニューロン障害によって生じる。 異常な筋緊張を解き、関節拘縮を予防し、リハビリテーションを進めやすくするブロック療法の一つとして、ボツリヌス療法がある。 したがって、3が正解。
ボツリヌス菌が作り出すタンパク質成分(ボツリヌストキシン)には、筋緊張を亢進させる神経の働きを抑える作用があり、その成分を含む薬を筋肉内に注射することで、筋緊張をやわらげることができる。 ボツリヌス療法の効果は、注射後2~3日目からゆっくりあらわれ、通常3~4か月間持続する。
問題86 心臓リハビリテーションにおける運動負荷試験の中止基準として正しいのはどれか。
1.疲労
2.息切れ
3.筋肉痛
4.チアノーゼ
答え: 4
運動負荷試験の目的は、心電図異常やその他の臨床症状を運動によって誘発し、安静時には発見できない異常を発見することである。 それと同時に、試験の結果から運動耐容能を把握できるため、適切な生活指導と運動処方が可能となる。
運動負荷試験は、医師の管理のもとに行われるが、以下のような症状・兆候・所見が認められると、中止となる。
(1) 症状: 狭心痛、呼吸困難、失神、めまい、ふらつき、下肢疼痛(跛行)があったとき。
(2) 兆候: チアノーゼ、顔面蒼白、冷汗、運動失調、異常な心悸亢進がみられたとき。
(3) 所見: 収縮期血圧の上昇不良ないし進行性低下、異常な血圧上昇(225 mmHg 以上)、明らかな虚血性 ST-T 変化、調律異常(著明な頻脈ないし徐脈、心室性頻拍、頻発する不整脈、心房細動、R on T 心室期外収縮など)、2~3 度の房室ブロックがみられたとき。
したがって、チアノーゼは運動負荷試験を中止すべき兆候であり、4が正しい。
問題87 変形性膝関節症に対する運動療法で最も適切なのはどれか。
1.階段昇降
2.水中歩行
3.ジョギング
4.自転車エルゴメーター
答え: 2
変形性膝関節症に対する運動療法では、関節への重力負荷を軽減するため、水中歩行や長座位での大腿四頭筋等尺性収縮が推奨される。 したがって、2が正解。
問題88 パーキンソン病の歩行障害に対する訓練で最も有効なのはどれか。
1.つぎ足歩行訓練
2.松葉杖を用いた歩行訓練
3.両長下肢装具を用いた歩行訓練
4.メトロノームによるリズム歩行訓練
答え: 4
パーキンソン病の歩行障害で、すくみ足に対しては、歩行開始時に「イチ、ニ、イチ、ニ」と声を出し、リズムをつけて足踏みをしながら、踏み出す足を決めておいて、その足を挙げてから、「せーの」で一歩目を踏み出すようにする。 小刻み歩行に対しては、床に30cmほどの間隔でラインを引いてこれを目標にしたり、メトロノームの音や音楽に合わせたり、腕を振ってリズムよく歩くようにする。 したがって、4が正解。