『養生訓』 中年からの食事(巻三30) | 春月の『ちょこっと健康術』

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「飲食の欲は朝夕に起こるので、貧乏な人でも誤ることが多い。まして富貴の人は美食することが多いから、度をこしやすい。特に節制しなければならない。

 中年から後は、元気が減ってきて、男女の色欲は次第に弱まるけれども、飲食の欲は衰えないものだ。老人は脾気が弱い。それゆえに飲食に傷つくことが多い。老人が病気になって急死するのは、ほとんどの場合は食傷である。大いに慎むべきであろう。」


西洋医学的にみても、年齢を重ねれば基礎代謝量は落ちてきますから、摂取カロリーはそれに従って自然と減っていくはずのものなんですね。聖路加病院の日野原重明先生の生活ぶりを拝見すると、それがわかります。


ところが習慣からくる思いこみは恐ろしいもので、からだの要求としては減ってくるはずのものに気づかない。で、結果的に食べ過ぎになる。からだの声を聞けなくなっているのです。


これは、朝昼夜の食事にも言えることで、からだはおなかがすいたと感じていないのに、時間が来たからといって食べてしまう。それが重なって、実は脾に負担を強いていることになる。


脾気というのは、五臓で消化吸収を担当する の気のことで、消化吸収力と言いかえることのできるものです。加齢によって、からだのいろいろな機能は低下します。脾気の機能もその例外ではありません。


食傷というのは、傷食ともいいますが、暴飲暴食、不衛生なものの摂取、冷たいもの・生もの・あぶらっこいもの・甘いもの・味の濃いものの過剰摂取など、食事が原因となる病全般を指します。その中で、食厥 という状態になると、急死することもあるんです。


現代では、益軒先生の時代ほど、食当たりを起こすことはすくなくなりました。ただ、美食や過食による生活習慣病の問題があります。気をつけるに越したことはありませんね。


『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』


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