神の君へ。 | にっぽんの嵐とあらしの松本潤くんについての考察

にっぽんの嵐とあらしの松本潤くんについての考察

にっぽんの稀有なアイドルグループ嵐と、
天然まじめ天使の松本潤くんへの興味がつきません。



最終回を終えてからまだしっかりと感想を述べてなかったので、少しだけ…




臆せず自分の書きたいことから書きますと、


最終回の潤くんの演技がすごかったです。



これが一年間、


大河で主演を張ることなのだと思いました。


ただただ圧倒され、胸を打たれました。




大坂夏の陣で家康が鎧はつけなかったのは史実ということのようですね。


それを「最初から死ぬつもりだった」とした古沢さんの解釈にも唸ったのですが、


淡々と戦支度をする老いた家康と阿茶のやり取りに、ものすごくリアリティを感じました。




金扇の馬印をわざと前に出させて、


敵兵を手繰り寄せる家康の鬼気迫る表情や声色に、


乱世の亡霊のような、すでに髑髏のような顔をした真田信繁が一瞬怯むシーンも凄かったです。



今までだと家康が命からがら逃げ出す描写が一般的だったようですが、


よく考えたら、


齢74才百戦錬磨の総大将が鎧も纏わずに最前線に出ているわけで、死を覚悟している大蛇がそんなに簡単に怯むだろうか。


案外、こちらの方がリアルかもしれないと思わせる説得力がありました。



瀬名と信康が出てきたところは、全くの不意打ちで声が出てしまって…


武者隠しの間と言われる主君を影から守る場所から見守っていたと思われることや、


(だから死にたくても死ななかった?)


あれは家康の弱い心の象徴で、天下泰平の世になったのでもう隠さなくても良くなったのでは?


というどこかのお子さんの解釈を読むにつけ、ますます感情を揺さぶられました。


この時の呆然とした家康の顔は、白兎そのもの。


そう言えば顔だけでなく、髪も真っ白。


いつのまにか全身白一色で、フワフワな兎のようでした。


そこに家光の描いた"うさぎ"の絵が届けられる…


幻想的で美しいシーンでした。




そこから三河家臣団総出演、


圧巻のラストへ。



突然、彦と七に叩き起こされる家康。


最初は夢現の家康が、


一瞬で信康の婚礼の朝の白兎に戻るんですよね。


その口調の変化に鳥肌が立ったし、


その後の家臣団とのやり取りが懐かしすぎて、


笑いながらも涙が止まらなくなって…



この時期には無かったはずの大きい白兎の彫り物や老齢の家康が彫っていた獏の彫り物があったことなどから、ただの回想では無いとわかります。


すごい演出だなと思いました。


おそらく夢の中で、家臣に振り回される家康の心がどんどん解放されて行き、状況を楽しんでいるように見えるところも泣けて泣けて。



家臣たちの信頼と愛情を一身に受けたところで、


若々しさを取り戻していた家康の心がふと思い出したように現状の家康に飲み込まれて行き、


若き日の姿のまま老人のように礼を述べる。



それは臨終間際の家康が、仄暗くだだ広い部屋の真ん中でひとりでお辞儀をしているのだと気づいた時には、もうダメでした。




もしここで終わりだったら、


苦しくてメンタルが死んでたと思うんですけど、



泣き虫弱虫鼻水垂れの家康に、


そうじゃな!わしは幸せものじゃな!


と最高の笑顔で言わせてくれて、


えびすくい総踊りで締めくくってくれた古沢さん、


やはり天才でした。




あと今回確信したことは、


松本潤くんもまた天才だと言うこと。



決して器用な方では無いけれど、


ゾーンに入った時の松本潤の凄さに、


何度も舌を巻きました。



40代に入るタイミングでこの作品に出会えたのは、最高の宝物でしたね。


ファンとしてもすごく嬉しいです。





あともうひとつ。



家康を深く敬愛しつつも、


少し遠巻きに見守る少年時代の家光の描き方が、


すごく好きでした。



若き日の家康と同じく内向的で芸術家肌でありながら、全く異なるオーラを纏った子役でした。



私は家康の子役の和空くんか潤くんが家光をやるのかなと思ったのですが、


この物語的に、はっきりと別人格とわかることに意味があるのだと理解しました。



家康は世継ぎであると認めながら、


特段家光に言葉をかけることもありません。


不思議な距離感で交わる老人と幼子の温かな関係は、


そのまま新時代の訪れを予感させるものであり、


未来への希望と光を感じました。







このドラマの裏テーマとしては、


親が子に及ぼす因果のようなものが、


あったと思います。




今川氏真や武田勝頼は、


偉大な父を乗り越えることに囚われ、


真田信繁や豊臣秀頼は、


親の教えの呪縛から逃れられず、


北川景子さんの二役だった茶々は、


まるで母の想いに同化するように、


妄想を募らせ、復讐の鬼と化し、


それぞれ自滅して行きました。



そう言えば於大さまも、


領主として家族を打ち捨てろと言ったことを悔いていましたよね。


結果として家康は母の言葉を実践することでこの世のすべてを手に入れましたが、


本当に欲しかったものを手にすることはできませんでした。





親から子へ。


どのような思いを託すか。


または託さないか。


これは非常に繊細な問題で、


明確な答えを出すのは難しいかもしれません。



けれどここにこそ、


何故戦が無くならないか


どうすれば戦を無くせるか


のヒントがある


そう言われているような気がしました。




どうする家康、


エンタメとしても大いに楽しめましたが、


一筋縄ではいかない骨太な作品だったと思います。




まだまだ全然語り足りませんが、


一年間追うことが出来て幸せでした。


ひとまず、心よりお礼を申し上げます。



殿、すべての関係者のみなさま、


本当にありがとうございました!