ステロイドパルス療法は、短期間に大量のステロイドを点滴で投与する治療法です。いろいろな病気に用いられますが、病気により投与量や投与日数が違います。

 ここではIgA腎症のステロイドパルス療法について説明します。

 

 IgA腎症のステロイドパルス療法は、1週間で1クールです。3日連続でメチルプレドニゾロン500mgの点滴を行った後、4日間プレドニゾロン30mg内服をして、計3クール行います(仙台方式)。

 3クール終了後はプレドニゾロン30mgを1日おきに内服します。

 

 プレドニゾロンの内服を1日おきにするメリットは、毎日内服する場合に比べ、

*視床下部ー下垂体ー副腎皮質系が保たれるため、副腎の機能低下が起こりにくい。

*ステロイドを内服しない日には好中球(白血球の一種で、細菌や真菌に対する防御反応の中心的役割を果たしています)の遊走が問題なく行われるため、感染症の発症率が低い。

*ムーンフェイスが起きにくい。

ことです。

 

 プレドニゾロンは原則として2か月毎に5mgずつ減量していきます。

 (30mg隔日x2か月→25mg隔日x2か月→20mg隔日x2か月→15mg隔日x2か月→10mg隔日x2か月→5mg隔日x2か月→合計1年で終了)

 ステロイドの内服が終了した時点で、糸球体血管炎の指標である尿潜血が陰性になる人は、約50%です。終了時に尿潜血が陽性でも、尿潜血の程度は徐々に軽減していき、治療開始2年後(ステロイド終了1年後)には、約80%の人で尿潜血が陰性になります。

 

 3週連続でパルスを行う仙台方式の他に、2か月毎に3回パルスを行うPozzi式があり、どちらを行うかは医療機関で異なるようです。

 私が通院しているC病院では仙台方式が採用されていました。

 

 口蓋扁桃摘出術が先でも、ステロイドパルスが先でも効果に差はないと言われています。

 パルスを先に行った場合は、6ヶ月以内に扁摘を行うことが原則です。パルスによるアポトーシス(細胞死)によって一旦は消退したリンパ濾胞が、その後の時間経過とともに元に戻ってしまうからです。

 扁摘を先に行った場合は、扁摘とパルスの間は、原則として1週間以上あけます。また、原則1年以内にパルスを行います。堀田修先生の検討では、1年以上あけると寛解率が低下する傾向があったそうです。

 

<副作用>

消化性潰瘍:必要に応じて胃薬(プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカーなど)を投与します。

 

骨粗鬆症:骨粗鬆症の薬(ビタミンD3製剤、ビスフォスフォネート系薬剤など)を併用することがありますが、パルス後の内服が隔日であり、ステロイド投与期間が最長で1年間と比較的短いので、パルス開始前から骨塩量の少ない人と閉経後の女性以外は必ずしも必要ではないとのことです。

 

・肺炎などの重症感染症:2007年の医療機関へのアンケートでは0.12%に見られたそうです。ニューモシスチス肺炎予防のためのST合剤(バクタ、ダイフェンなどの抗菌薬)はシクロホスファミド(免疫抑制剤)を併用しない限り原則的には不要だそうです。

 

大腿骨頭壊死:2007年の医療機関へのアンケートでは0.24%に見られたそうです。いずれも40歳以上でパルス後のプレドニゾロンが隔日投与ではなく、連日投与されていたそうです。

 

ステロイド糖尿病:扁摘パルスを受けた方の20%が入院中にステロイド糖尿病にかかったとの報告があり、特に45歳以上でそのリスクが高かったことが示されています。

 パルス日の食後高血糖は40歳以上では高頻度に生じますが、糖尿病の家族歴があったり、肥満のあるケースでは40歳以下でも注意が必要です。夕食後に高血糖になることが多いです。パルスを午前中に行う場合、昼食もしくは夕食2時間後の血糖値が200mg/do以上の場合は、インスリンや糖尿病の内服薬投与により、食後高血糖を防ぐことが必要です。これにより、膵β細胞(インスリンを分泌しています)の保護と、糖毒性(高血糖がインスリンの働きを悪くし、さらに高血糖になっていること)の解除を図り、本格的な糖尿病の発症を抑制できます。通常は、パルス終了後はインスリン治療は不要となります。パルス終了後も食後高血糖がある場合にはステロイド内服中は経口糖尿病薬を併用します。

 

ステロイドのその他の副作用については、こちらを参考にしてください下矢印

 

 

 

参考図書:『IgA腎症の病態と扁摘パルス療法 第2版 堀田修』

     『腎臓病を治す本 堀田修』

     『週刊日本医事新報 No.5128  副作用ゼロをめざすステロイド使用時の「7つの習慣」』