私のステロイドパルス療法の体験談を書く前に、ステロイドについて説明します。

 

 私たちの左右の腎臓の上には、副腎という3〜4cmの小さな臓器があります。表面の皮質と、内部の髄質という部分に分かれています。副腎からは、身体を維持するために重要な働きをしている数種類のホルモンが分泌されています。

 ステロイド薬は副腎皮質で作られる副腎皮質ホルモンの一つ、コルチゾールを元に作られた薬です。

 ステロイド薬には免疫抑制作用や抗炎症作用などがあり、さまざまな病気の治療に使われています。

 ステロイド薬の主な全身投与方法は、薬を内服する経口ステロイド療法と、点滴で投与するステロイドパルス療法があります。

 ステロイド薬は多くの有益な作用を持つ反面、注意すべき副作用がたくさんあり、注意が必要な薬です。

 

<ステロイド薬の注意すべき副作用>

感染症:免疫力が低下するために、細菌・ウイルス・真菌などの感染症にかかりやすくなったり、治りにくくなったりします。投与量が多い間は、感染予防の薬(バクタ配合錠など)を内服することもあります。手洗い・うがい、マスクの着用、人混みを避けるなどして、感染症を予防しましょう。

 

脂質異常症:コレステロールや中性脂肪が高くなることがあります。必要であれば、薬を内服します。

 

糖代謝異常(ステロイド糖尿病):ステロイドによって肝臓からの糖の放出が進んでしまうことや、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が抑えられてしまうことなどによって、血糖が上がります。ステロイドによって食欲が亢進することも高血糖のリスクを高めます。投与量が多いほど血糖が上がるので、特に投与量が多い間は、食事療法による予防が大切です。インスリンや経口血糖降下薬による治療が必要な場合もあります。

 

高血圧:体内に塩分が溜まりやすくなるために起こります。塩分をとりすぎないようにしましょう。

 

精神・神経症状:最も多いのは不眠症です。気分が高揚したり、逆にうつ状態になることもあります。

 

白内障:白内障の進行を早めます。長期に内服する場合には、定期的に眼科の診察を受けましょう。

 

緑内障:眼圧が上昇することがあります。ステロイド薬投与後、数週間以内に起こり、ステロイド薬の減量・中止で改善します。

 

消化性潰瘍:胃粘膜保護作用を持つ物質の減少などにより、潰瘍ができやすくなります。暴飲暴食を避けましょう。胃酸分泌を抑制する薬や胃粘膜を保護する薬を予防的に内服します。

 

浮腫:体内に塩分が溜まりやすくなるために起こります。塩分をとりすぎないようにしましょう。

 

骨粗鬆症:腸管からのカルシウム吸収低下などにより、骨密度が減少し、骨が弱くなり、骨折しやすくなります。長期投与の場合は、予防薬として骨粗鬆症の薬を内服することもあります。

 

副腎不全:長期間ステロイドを服用していると、副腎は萎縮してステロイドを作る力が弱くなってしまいます。この状態でステロイド薬を急にやめてしまうと、本来、副腎から作られるステロイドがないために、発熱、倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下、脱力、意識障害、呼吸困難などの命に関わる症状が起こる可能性があります。危険なので、長期に服用中のステロイドを急にやめることはしないでください。

 

脂肪沈着(中心性肥満、満月様顔貌(ムーンフェイス)):食欲の亢進と脂肪の代謝障害により起こります。顔、首まわり、肩、胴体などの脂肪が多くなり、四肢の脂肪は少なくなります。ステロイド薬の減量により改善します。カロリー制限など食事に注意が必要です。

 

大腿骨頭壊死:大量投与でごく稀に起こることがあります。多くの場合、ステロイド薬投与後、数ヶ月以内に、股関節の痛みで発症します。場合によっては手術が必要になることもあります。MRIで早期に診断すること、できるだけ股関節に体重をかけないようにすることなどが大切です。

 

血栓症:出血を止める働きをする血小板の機能が亢進するため、血管の中で血液が固まってしまう血栓症が起こりやすくなります。予防的に血をサラサラにする薬(抗血小板薬)を内服することがあります。

 

その他、月経異常多毛脱毛痤瘡(にきび)ステロイド筋症(筋力低下・筋萎縮)などが見られることがあります。いずれもステロイド薬の減量により改善します。

 

 コルチゾールが過剰に分泌されるCushing症候群という病気がありますが、ステロイドの副作用は、その病気の症状に似ています。

 

 見た目で分かるステロイドの副作用はこんな感じです。全ての症状が出るわけではないと思いますが、このイラストを見ると、かなーりテンション下がりますよねアセアセ

 

(病気がみえるvol.8  腎・泌尿器より引用)

 

 

(週刊日本医事新報 No.5128   副作用ゼロをめざすステロイド使用時の「7つの習慣」より引用)

 

<ステロイド内服中に注意すること>

*急に内服を中止しないこと

 ステロイドホルモンはプレドニゾロン(PSL)換算で2.5〜5mg程度が生理的に分泌されています。それ以上の量のPSLを長期的に内服した場合、副腎皮質からの生理的なステロイドホルモン分泌が低下します。そのため、急に薬をやめると、体の中のステロイドホルモンが不足し、発熱、倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下、脱力などの症状が見られることがあります(ステロイド離脱症候群)。ステロイド薬をゆっくり減量してから中止するのは、これを避けるためです。自己判断で急に内服を中止しないようにしましょう。また、食欲不振や嘔吐などで服用できないときは、必ず主治医に相談しましょう。

 

*ストレス時には要注意

 手術、抜歯、その他にも体にストレスがかかる時には、ステロイド薬の増量が必要な場合があります。主治医に相談しましょう。

 

*熱が出たときは主治医に連絡しましょう

 ステロイドの作用により、発熱が抑えられます。ステロイド内服中にも関わらず発熱した場合には、重篤な感染症に罹っている可能性がありますので、主治医に相談して指示を仰ぎましょう。

 

参考:東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センターHP

   東邦大学医療センター大橋病院膠原病リウマチ科HP

   C病院腎臓内科からいただいたプリント